「男子たちよ。アジア杯決勝の観戦に女子を誘わない手はないぞ」

『モテるスポーツ』の正体

僕が小学生の頃、1冊の恐ろしい勧誘誌が送られてきていた。進研ゼミが何故か住所を特定して送ってくる、あの「リア充漫画」である。

若い子は知らないかもしれない。
「進研ゼミを始めたらテストは毎回高得点!
    部活もレギュラーで活躍!
     女子からの注目も独占!
    めっちゃモテるようになった!!」
…という夢のようなストーリーが描かれていた。
僕は、この漫画を読んでは「進研ゼミさえやればモテる」という 生温い妄想を抱き、親に申し込み用紙を破り捨てられる学生時代を過ごした。 

その漫画に出てくる部活が、
決まってサッカー部だった。 

1990年代、あの頃はまだ野球が主流だったにもかかわらず、主人公は「サッカー部の補欠」というマイナーな設定だったのである。
そう、あの頃は何故か「サッカーはモテる競技」という妙なアイデアがあったのだ。
 「坊主にする必要のない部活」というのが当時は珍しく、漫画として描きやすかったのかもしれない。 

 だがどうだ。

 今やサッカーがモテるという発想こそ、
生温い妄想ではないか。
「サッカーやってる輩はチャラチャラしてる」
 「サポーターって怖い」
「なんかちょっとオタク感あるよね」
僕が最近受けた女子からの評価だ。

今回のアジアカップ2019における日本代表の躍進に対する世間の反応は、それを如実に表している。 渋谷のスクランブル交差点は青色の無いただの人混み。 無味乾燥なYahoo!トピックスのタイトルに、人は目を滑らせている。

悲しいけれど、当然の話だ。
直観的に物事を話したい若者たちにとって、
サッカーとは理解に苦しむ退屈なスポーツだ。

45分ぶっ通しで放映される試合は、時折盛り上がるが基本何が起きているか分からない。 おまけに今回の日本代表は、玄人好みな守備がしっかりしたチーム。 派手さが皆無の手堅い試合を続けてきた。

だが、スポーツに人が求めるものは、
間違いなく「チャンバラ」なのだ。
殺陣の激しい動きで見せ、
斬られる側も斬る側もとにかく派手。
これぞ客を沸かせるエンターテイメント。

なのに、サッカーファンときたらどうだ。

チャンバラで使う刀の話をはじめてしまう。
 刀職人が懸命に熱せられた鉄を打ち続ける45分の映像を見続けるなど、もはや性癖に近い。
そう、サッカーはメジャースポーツにして、マイナーな楽しみ方が一般的なのだ。如何にマイノリティーな見方ができるかを競うスポーツと化してしまったのだ。

もう、サッカーはモテないスポーツなのか。 

いいや、断じてそんなはずはない。
サッカーとは、物語と哲学を語り、自分の「いま」を載せて語るためには絶好のコンテンツなのだ。女子から嫌われるはずの「自分語り」を挟み込め、 相手の趣向までをも聞き出すことができる。

「攻撃と守備、どっちが好き?」
この質問には「せめる方とせめられる方どっちが好き?」 という意味を込めることができる。
その他にも、一緒にサッカーを見る女子に関する マーケティング調査の方法はたくさんある。
男前の選手に反応する女子は外見重視。屈強なセンターバックに反応する女子は筋肉好き。監督好きな女子は包容力を求めている。分析によっては、一緒に見ている女子のタイプまで理解できてしまうのだ。

サッカーは、想像以上にライトコンテンツだ。
簡単にハマれ、簡単に楽しめる。
深さなど気にするな。
ニワカという奴は捨て置け。
日本代表がいい例だ。
彼らの一戦は、あくまでコンテンツである。
だから、もっと気軽に見に行って欲しい。
データの誘い文句として、これほど誘い易いモノはないだろう。

「日本代表戦、一緒に見ない?」

こんなに後ろめたさなく、エロさを含まない
デートの誘い文句が他にあるだろうか!?

本当にあなたが知りたいのは、彼女の内面だ。
彼女が自分のことをどう思っているかだ。

生放送の時だけは、
サッカーはただのコンテンツだ。

その場で実況解説できる人間など、
一握りの選ばれた人間にしかできない。
語る必要などないのだ。素直に楽しめばよい。
サッカーは奥深いエンタメ。
そのストーリーを語るには過ぎる。

だからこそ、ライトに騒ごう。

サッカーを語りすぎるなかれ。

サッカーもコミュニケーションも、まずは守備。会話の守備とは聞き役になること。 彼女が話す言葉を上手く受け止め、きれいなカウンターを決めるのだ。 一発芸やモノマネといったセットプレーも挟みながら、相手のゴールへと迫るのだ。

君のゴールはすぐ目の前だ。
決定力は君次第!
(進研ゼミに書いてあった決めゼリフ)

さて。
ここまで読んで本気にしてしまったあなた。
見込みがあります。

今夜11時、まもなく。
日本代表がアジアカップの決勝に挑みます。
相手はカタールです。
今の日本代表は、サッカーが好きじゃない人たちにも胸を張っておススメできる 超絶ドラマチック&ストロングチームなのです。

今すぐに女子を誘ってください。
強い気持ちでLINEを送ってみるのです。
まだ家に帰っていなければ「まぁいっか」と誘いに乗ってくれる女子がきっといるはずです。
さらに、今日の試合観戦デートには、あなたがゴールする絶好のチャンスがある。金曜日の夜11時にキックオフされる試合。分かりますか?
そう、終電がなくなるのです。 あなたのデートという名の試合は、4時間ほどのアディショナルタイムを得ることになるのです。

思う存分サッカーを使ってやってください。

そして、出来る事なら
日本代表をちょっとだけ応援してください。
今日、テレビの前にいられない
僕からのお願いです。

今夜、23:00キックオフです。
相手はカタール。

語ーるには十分な相手というところで
お時間です。

おあとがよろしいようで。

マツメイラス松田

よろしければ、是非この見習い解説者をサポートくださいませ。