CX-60 PHEVのパワートレーン制御

上記の件です。多くのyoutuberたちがここ1週間で、多くの試乗動画を上げていますが、勘違いが多発しているので、わかる範囲内で解説いたします。

CX-60 PHEVのパワートレーンについて

 まず、縦置き4気筒の2.5リッター自然吸気エンジンがありその後にクラッチ①、モーター、クラッチ②、8速ATが並んでいます。エンジンもモーターもだいたい180馬力くらいですが、システム最大出力はバッテリー出力に依存しますので、約320-330馬力程度になっています。バッテリーの性能は50Ahの355Vなので、だいたい17.8kWhになっています(電流A×電圧V=電力Wなので、電流量50Ah×355V=17750Wh=17.75kWh)。
 AWDなので、常時4輪駆動ですが、後輪駆動ベースなので、前輪への駆動力配分は最大で50:50になります。燃費を維持するためにトラクションのよいドライ路面では、90%以上の駆動力を後輪に配分していますが、前後輪の回転数をわずかにずらすことで常に引きずり抵抗を生み出してフロントプロペラシャフトに駆動力をかけています。これは、必要時に即前輪へのトラクションをかけるためにクラッチをギリギリミートするかしないか、の状態を維持するために必要な制御です(賢いね)。だから、マツダのAWDは常時4輪駆動です。

マツダのCX-60 PHEVの方向性

 一般的にPHEVというと燃費を期待することが多いと思いますが、昨今のトレンドは、PHEVの巨大なバッテリー出力を生かした運動性能を各社がアピールしています。マツダのPHEVは特にその傾向が強く、モーターの存在意義は過給器の代わり、と言った印象です。制御の方向が走行性能に向いていて、燃費・電費性能はそこまで重要視されていない印象を受けます。ですから、熟成の域に達したトヨタのハイブリッドシステムをベースにしたRAV4 PHEVやハリアーPHEVに比較すると燃費性能はかなり悪いです。
 では、マツダも燃費・電費性能に全振りすればトヨタ並の燃費・電費が得られるかというとそれは難しいでしょう。トヨタが長い年月で培ったインバーター技術、モーター技術、回生協調ブレーキ制御などは、相当なものがあるといって良いでしょう。でなけばヤリスのあの目ン玉飛び出るような実用燃費は実現できません。

走行モードについて

ここからが本題です。
・EVモード
・ノーマルモード
・スポーツモード
の3モードありますが、実はどのモードでもエンジンが始動するという罠です。

EVモード

・バッテリーがある程度(細かい制御は不明だが、5%程度か?)あるとセレクトできる。
・基本的にバッテリー駆動するが、深く踏み込むとドライバーの要求加速度に応答できないためエンジンが始動する
・この際、エンジン、モーター間にあるクラッチ①を滑らせながらつなぐことでエンジンを始動させる(セルモーターはなるべく使わない)
・パドルシフトダウンを行うと、エンジンを始動させ即座に最大加速度が出せるようにギアダウンした位置で待機する仕様(多くのユーザーが求めるのは回生力UPによるブレーキングだと思うが、なぜこういう仕様にしたのかは理解しかねる)

NORMALモード

・ノーマルモードといいつつも、一般的なPHEVのハイブリッドモードとは制御がだいぶ違う
・バッテリーがあると、どんどん使ってなるべくエンジンを始動しない
・そのため、どんどん充電残量が減る
・充電残量がほとんどなくなってからがストロングハイブリッドモード
・どうやら充電残量を維持したままストロングハイブリッドとして走行する制御はなさそう(この仕様も理解しかねる)

SPORTSモード

・エンジンは切れずに、やや高めの回転数を維持
・パドルシフトダウンして床まで踏めば最大加速できる(CX-60シリーズで最強の加速)

注意点

 上記のようにEVモードでバッテリーがあってもエンジンが始動したり、NORMALモードでもどんどん充電残量が減るという、変わった仕様が多くのYoutuberたちを混乱させていると思われる。
 他にも注意が必要な点を以下にあげる。
・始動時EV優先設定をONにしないと、車両システム始動時にエンジンがかかる?(おそらく現在冬季で外気温が低いため余計かかりやすい)
・その後EVモードに設定してもエンジンは停止しないが、EVモードで"走行を開始"するとエンジンは停止する

・フル液晶メーターの表示に整合性が無く、初見殺し
EVモードを選択するとEV走行インジケータが消える(マツダの言い分を聞きたいが、おそらく「EVモードだからEVで走ってるわけで、EVインジケータださなくてよいだろ」といったところか)
・EVモードからNORMALモードに変更し、その際バッテリー駆動のままだとEVインジケータが光るため「EVモードではEVじゃないのに、NORMALモードでEVになる!?!?」という初見では理解不能な状態に陥る
・対策→エネルギーフローを出しておくのが一番わかり易いかと思います

検証やもう少し調べないとわからないこと

EV時の暖房の熱源が不明

 一般的にEVではPTCヒータや、ヒートポンプが採用されている。PHEVも同様で、EV走行時に暖をとるためであるが、CX-60はPTCなのかヒートポンプなのか不明である。エンジン排熱も当然利用しているはずだが、EVモードではいつまでも暖機はされませんので。

チャージモード

 チャージモードの性能がいまいち不明。マツダのHPのFAQには50km/hの定速走行時に1分で1%充電とある。海外のyoutubeで、1.47Lの燃料で4.88kWh分充電できた、という動画をみたので、ざっくり5L程度で満充電と考えると、10-12km/L程度の感覚なのだとおもうが、海外だと平均車速に違いがあるので、日本国内で再検証が必要だと思わます。

電費

 最近は寒さが厳しく、試乗車は短時間走行も多いので、電費が悪そうですね。いろいろな動画を見ても200wh/km以上の電力消費がありそうで、冬季だと1kWhで4-5程度しか走れない印象です。夏は、大幅に改善する可能性もあるので、夏の電費がきになります。

マツダに改善して欲しいこと

・パドルシフトは回生力のUP/DOWNに変更すべき(MX-30ではできていたこと、出来ないとは言わせない)
・SPORTSモードのときだけはパドルシフトダウンで、エンジン回転数上げていいと思います

・NORMALモードは充電量を維持しながらハイブリッドモードで走る仕様にしてください
・いまのNORMALモードはEVモードとほとんど違いがない、強いて違いを言えば踏み込んだ際にエンジンが始動するタイミングがEVモードよりだいぶ早い
・到着先で充電残量を残しておきたい場合などに大変不便(チャージモードで目標充電残量に到達したら、そのまま充電残量を維持するようにストロングハイブリッドになってくれるのかな?不明なので、届いたら検証します)



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