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MaZとファミコンウォーズ


はじめに

 2000年の少し前辺りから本格的に今でいう任天堂クラスタ民になった不肖MaZですが、最推しのタイトルを尋ねられると二つ返事でファミコンウォーズ(以下ウォーズ)と答えます。

 私がこのシリーズに初めて触れたのは2004年のゲームボーイウォーズアドバンス1+2なのですが、この作品の片方はゲームボーイアドバンス発売初年の2001年の時点ですでに同年10月の発売が予定されていました。この頃は『そんなのもあるのか』程度の関心しかなかったのですが、9月の同時多発テロ事件に伴う延期からの日本語版発売中止(※1)、その後の続編も日本語版が未発売という状態が続き、2004年11月にカップリング発売される事となり(※2)、改めて雑誌の記事を見て興味が湧いて購入、ものの見事にハマりました。

※1…北米は9月10日、欧州は三ヶ月の延期で2002年1月11日発売
※2…2004年12月にニンテンドーDS発売、翌年にウォーズDSが出る事が決まっていたため、滑り込ませたとの説

 2001年以降、タクティクスオウガやバハムートラグーンなどのシミュレーションRPGに触れていた事もあって、ストラテジーゲームに対する敷居が自分の中でだいぶ低くなっていたのが大きかったのだと思います。その後、ウォーズがきっかけで現代戦やミリタリー方面にも道が開けたので、本当に人間どうなるか分からないものです。

戦を楽しむということ

 ウォーズシリーズは根底にあるコンセプトが『将棋やチェスのような感覚で楽しめる戦略シミュレーション』であり、現代兵器を出来るだけ簡略化、記号化して複雑さを排除したゲームデザインになっています。
 例えば戦車なら、高性能だが高価な『戦車A』と安価だが値段相応な『戦車B』だったり、攻守に優れるが高価で足の遅い『重戦車』と安価で快速だが重戦車には敵わない『軽戦車』のように、細かいステータスや型式を排し、かつ各々の役割を分担するための区分けがなされています。『終始これ作っとけば安牌』『まず使われない産廃』ユニットを極力出さないように工夫され、ゲーム性を高めています。
 将棋でもチェスでも、駒によって動ける範囲が異なる事で役割に差が出るように、ウォーズでもユニットの役割をはっきりさせている所に面白さがあります。
 ゲームの基本的な流れである『生産・占領・戦闘』と、それを支える『直接攻撃・間接攻撃・輸送・補給』の概念は初代にして概ね完成され、回を重ねるごとにに分かりやすさと遊びやすさを増しているのが特徴です。

 現代戦を題材にしているゲームという点では、万人受けする内容ではありませんが、能力の異なる駒を駆使して敵との戦いに勝利するという根本的なゲームデザインは、まさしく囲碁や将棋、チェスのような『戦をベースにした遊び』だと思っています。
 世界情勢が不穏な昨今、そのライトなビジュアルからどのような評価を受けるか分からない所もあり、事実として発売延期に見舞われる事も多々ありますが、私としては現実は現実、フィクションはフィクションとして割り切る事が大事なのではと考えております。

 余談ですが、ウォーズシリーズはGBA作品での海外展開を行ってから、アメリカを中心にスペイン等ヨーロッパでもある程度の人気があり、2005年にはゲームキューブでスピンオフの突撃!!ファミコンウォーズが発売されています。
 こちらはイギリスで開発された作品という事もあって、独特のユーモアを交えたセリフ回しやストーリー、戦略ウォーアクションという特殊なジャンルが『癖のある面白さ』を醸し出していて、実にウォーズ的です。

失われた光(発売日)

 2000年代当時の任天堂セカンドパーティー、インテリジェントシステムズ開発のゲームは、日本国内向けにファイアーエムブレム(以下FE)、海外向けにAdvance Wars(ウォーズシリーズの海外版タイトル)という風潮が見え、その流れでシリーズが作られていたのですが、諸々あってFEが海外でも十分に売れるタイトルに成長した辺りで、日本国内で弱いウォーズが不利になってしまいました。同じ開発元だったら、ひとつのシリーズで全世界に売れる方がいいのは仕方ないんですけどね。

 そんなこんなで日本国内ウォーズシリーズ最大級の悲劇が起きます。
2007年秋の情報公開で、ファミコンウォーズDS2(仮)が発表されました。今までと作風をガラッと変えた事もあるのでしょうが、2007年度冬に海外先行発売が決定、2008年1月21日に北米、同25日に欧州、2月21日に豪州で発売されました(※3)。

※3…ここで思い出そうと過去に頒布した同人誌の原稿データを読み直したら、とんでもないミス表記を発見したのはここだけの話。

 で、日本での発売はどうなったかというと……
今冬(2007年度冬季)→2008年→未定→発売中止(2010年7月)
もしかしたら2008年と未定の間に2009年が挟まっていたかもしれませんが、とにかく発売中止になってしまったのです。その後、2013年秋に当時のオンライン会員システム、クラブニンテンドーにてプラチナ会員特典としてニンテンドー3DS用DSiウェアとして配信、翌年春に800ポイント(※4)での交換という形で配信されました。

※4…概ね、ソフト一本購入で30ポイント、ハード一機で80ポイント、オプションで20ポイント前後が溜まる。ちなみにプラチナ会員昇格は400ポイント

 ちなみに800ポイント交換は、数えて上から四番目の高さであり、バーチャルコンソールタイトルが60~200ポイントだった事を考えると、異常としか思えないポイント数でした。
 さらに、WiiとDSのWi-Fiコネクションやクラブニンテンドーそのものが2015年で終了するためか、DS2のゲーム内にあったWi-Fiに纏わるコンテンツが全て削除されているというダウングレード移植版。加えて、海外版DS2の内部データに日本語版のテキストや画像が全て内包されており、改造ツールを使えば完全な日本語版が遊べるというお粗末ぶり。当時かなりキレました。

呪われたタイトル?

 2015年にWiiUのバーチャルコンソール向けにファミコンウォーズDSが配信される、2019年にSwitchオンラインのファミコンソフトにて初代ファミコンウォーズが追加されるなど、細々とした追加はあるのですが、完全新作の流れは10年以上もありませんでした。
 そんな中、2021年6月のニンテンドーダイレクトにて、実質的なゲームボーイウォーズアドバンス1+2、海外ではAdvance Wars1と2のリメイクにあたる、Advance Wars 1+2: Re-Boot Campの情報が公開されました。
そんなのあったっけ? と思った日本の方々、あなたは正しい

 このリメイク、日本語版ダイレクトでは一切の存在が伏せられており、海外版ダイレクトでしか発信されませんでした。初報の時点でおま国です。一応、日本のゲーム情報ブログサイトが反応し、記事にしてくれたので完全に秘匿という流れには至りませんでしたが、当然のように日本語未対応、発売無しという事に。
 しかも、2021年10月に開発の遅れによる発売延期の情報が出るまで四ヶ月間、何の情報もありませんでした(※5)、ユーザーなめてんのか

※5…同時期のダイレクトで初報が出たメトロイドドレッド、おすそわけるメイドインワリオは同年秋に発売されている

 そして、ここからが本当の地獄とばかりに、発売日が凄い事になります。
2021年12月3日→2022年春→2022年4月8日→未定→2023年4月21日発売
順番に初報、発売延期告知、2022年2月ニンテンドーダイレクト、2022年3月8日23時(日本時間)緊急告知、2023年2月ニンテンドーダイレクトという流れです。

 お察しの通り、2022年2月24日から今なお続く、ウクライナ侵攻の影響をモロに受けました。それから一年間、音沙汰無しがずっと続き、翌年に発売という運びです。
 思えば、リメイク元のAdvance Warsは同時多発テロの影響で欧州版が延期、リメイクのRe-Boot Campはウクライナ侵攻で延期と、世界情勢に悩まされる事があまりに多く、一部では呪われてるんじゃないかとまで(※6)。

※6…同時多発テロの時はメタルギアソリッドやエースコンバット等も影響を受けたので、一応おあいこである。

これからも気を付けること

 色々と書きましたが、私がウォーズシリーズを推している事は変わらず、そのゲームの持っている性質ゆえに商業的な展開の難しさがある事も分かっています。そんな中、常々気を付けている事があります。

 それは、現実の情勢に触れる時の引き合いに出さない事です。

 X(twitter)にて、Advance Wars1+2:Re-Boot Campの発売延期の直接の原因とされる、ウクライナ侵攻による戦況について触れたポストで時折、ファミコンウォーズに絡めた内容を見掛ける事が少なからずありました。
 戦術、戦略面での話題に際し、かなりの回数ウォーズシリーズの名前を見る事があり、その度に思い返しています。現実で起きている戦争にこのゲームの内容を重ねる事は、ウォーズのコンセプトの否定に繋がるのではと思い、私自身はXはじめあらゆるコミュニティで、現実の情勢には触れないように心掛けています。
 そして、ファミコンウォーズシリーズがゲームとして楽しく遊べる事が、最も大切なのではないかと思っています。

 長くなりましたが、今後ともMaZのノートではウォーズシリーズについて紹介、啓蒙、二次創作の記事を書かせて頂く事になると思われます。その際は、生温かい目で見るなり、お付き合いいただければ幸いです。

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