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2 | マニラ。そして新宿。

前回「マニラは東京というよりシンガポールっぽかった」みたいなことを書いたものの、東京のビル群を思い出していたのも事実です。

横浜から東京に引っ越してきたのが6歳の時。
安全で美しい東京が大好きな私ですが、中でも思い入れある街が新宿です。
特に西新宿が好きで、一人都庁のふもとを目的なく歩くのが、何より落ち着く時間でした。

そう思うようになったきっかけが、中3の12月のこと。

当時小6だった弟が事故に遭い、西新宿にある病院にしばらく入院することになったのです。

コクーンタワーでお見舞い用の本を買い、上品なイルミネーションを横目に、慣れない高層ビルの谷間を縫って病院に辿り着いた夕暮れ時。

その頃私は弟とかなり仲が悪かったのですが、病室でやつれた顔をした彼を見た時に、胸がしめつけられる思いがしたのを覚えています。   

2人で窓から見た景色は、都会の冷たいビルが熱を宿したようで美しく、「弟が退院した後もここに来たいなあ」と思わされたのでした。

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その日の窓外の夕焼け

これがきっかけで西新宿を好きになり、物思いに耽りたい時はこのエリアに来るのが定番になった訳ですが、個人的な思い出の他にも、この場所に安心感を覚える理由がある気がします。

新宿の素敵なところって、その寛容さにあると思うんです。

都庁前、西口エリア、サザンテラス、ルミネ、歌舞伎町……

同じ新宿といえど、少し歩けば雰囲気ががらりと変化して。

ビジネスマンも若者も親子連れも観光客もホームレスもいて、洗練も混沌も許される街。

ありえないほど多くの人でごった返す世界最大のターミナル駅でありながら、みな自らの行先だけ見て歩み、すれ違う、多様で無干渉な街。

どこか交わらない雰囲気があるからこそ、私はこの街の1ピースとして疑いよう無く在るのだと、思える気がするのです。

東京が冷たいと言われてしまう所以である気もしつつ、14歳の私が引け目を感じずに街を歩けた理由なのだとも思います。

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バスタ新宿の景色に別れを告げて1ヶ月。
初めてのマニラで軽い迷子になり、ただただ引け目を感じてさまよった日の回想でした。

#マニラ

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