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6月の記録

新しい環境にもだいぶ慣れてきて、良くも悪くも気を張らなくなった6月。プライベートで抱えていたモヤモヤも、コントロールできる部分についてはなんとかなる気がしてきて、割と前向き。

あとは先月のnoteで宣言した通り、ちゃんと物件探しをしたし、引越し先も決まった。なんやかんやで、かなり早く過ぎていった1ヶ月だった。


映画

怪物

とっっっっても良かった。凄まじかった。6月の中で最も鮮烈な2時間だったかも。その証拠に6月の観たもの・読んだものは是枝作品ばかりになった。
是枝監督の考え方の根底には、「複雑なものを単純化せずそのまま届けたい」という思いがあるらしく、それをひしひしと感じた。子どもたちの、ピュアさと葛藤をどちらも湛えた目が印象的すぎる。
どんな人の言葉も、何かしらのバイアスや加害性を孕んでいるんだな。誰もが自分の主観で真実を恣意的に切り取ってしまう中で、坂本龍一さんの音楽だけが、子どもたちをまっすぐ見守り包んでいるように聴こえた。余白が多く、余韻も長く続く、そんな映画だった。

そして父になる

怪物の後、まんまと是枝監督ブームが来た(万引き家族しか観たことなかった)。これもとっても良い映画だった。福山雅治の不器用な姿から、タイトルの意味が深く沁みてくる。どんな親だって最初は誰かの子どもで、親としてのあり方を後から会得していくものなんだな。「単純化しない」「登場人物をジャッジしない」姿勢がここでも強く感じられた。

海街diary

是枝作品。既存の何かで定義できないつながり、憎たらしくても放っておけない存在、血縁でなくとも愛おしい誰か。考えさせられた。みんなそれぞれ欠けたところもあるけど、補い合いながら、海と木々に抱かれ暮らしている様が美しすぎた。
そして、移ろいゆく人生、時にままならない人生を、みんな何かしらの覚悟を持って乗りこなそうとしている。そんな姿がカッコよかった。

誰も知らない

是枝作品。実際の事件を元にした、ネグレクトされる子どもたちを描く映画。どう考えても母親は加害者なんだけど、この映画もやはり、それを裁くという感じじゃなくて。ひたすら子どもの目線に寄り添って、事実を淡々と描いている感じ。それにしてもひたすら辛かった……

南極料理人

6月に観た唯一の非・是枝作品。笑えてほっこりして、時々うるっとくる素敵な映画だった。主人公のシェフ、西村さんが作るご飯はどれもとっても美味しそうなのに、みんな「美味しい」も「ありがとう」も全然言わなくて、なんなら扱いはぞんざいなくらい。でもそのくらい、食って日常に当たり前にある幸せなんだろうな。
余談:大阪に向かう明け方の夜行バスで観たので、そういう思い出も含めて好きな映画になった。

ナナメの夕暮れ

再読。自意識過剰&過度に繊細なオードリー若林による、ナナメに構えたエッセイ集。社会人として新しい環境に置かれ、自意識が肥大化し、色んなセンサーが過敏になっていた私は、処方薬のように手に取った。即効性があった。
「誰かに「お茶いる?」と聞かれ、「いるかいらないか」ではなくて「どちらで回答すべきか」悩んでしまう」事象に心当たりがある人ならみんな刺さると思う。

流浪の月

先月読んだ「汝、星のごとく」がとても良かったので、同じく凪良ゆうさんの本屋大賞受賞作であるこちらも。
「誘拐される女児とその犯人の間に生まれた絆」という設定は突飛(突飛と枠にはめるのは暴力的かもしれないけど)なのに、人物描写がリアルで「あり得るかも」と思えてしまう。「恋愛とは異なる絆で繋がり、支え合う男女」というモチーフは、「汝、星のごとく」でも覚えがあるな。個人的に、子ども時代の家族との描写がキラキラしていて大好き。

ある男

「愛した夫が、実は全くの別人だった」という、気にならずにいられない設定。平野さんの小説は「マチネの終わりに」しか読んだことがないけど、やはり文章から思慮深さがほとばしっているのを感じる。
「大切な誰かをその人たらしめるものは何なのか」というテーマは、「そして父になる」にも通じているような。ただ個人的な反省として、展開が気になりすぎて爆速で読み終えてしまい、世界観に浸る時間を欠いてしまった。もう一回ゆっくり再読したい……

歩くような速さで

是枝監督のエッセイ。キャリアのスタートはテレビでのドキュメンタリー制作だったそう。だからこそあの「裁かない」映画のスタイルなんだな。また、映画を「表現」ではなく「コミュニケーション」のように捉えているという話にも納得。
個人の考えや思いが色濃く反映されたエッセイとしても、撮影や出演者の様子を描いた裏話集としてもとっても面白かった。

ドラマ・アニメ

大豆田とわ子と三人の元夫

二度目の視聴。「怪物」の後、坂元裕二作品も見たくなり、一気に駆け抜けてしまった。とわ子たちが等身大で悩み、葛藤する姿が愛おしい。大好きすぎる人間讃歌ドラマ。

スキップとローファー

ほっこりしたい気分で、なんとなく一気見。主人公みつみの素朴さに癒やされ、ポジティブさに元気をもらえる、とっても素敵なアニメだった。高校生活の描き方が超リアルで(「定期テストの範囲が発表される時期はみんな先生の発言に注目するよね」とか)、瑞々しく眩しくエモい……

展示

デザインに恋したアート♡アートに嫉妬したデザイン

東京以外の美術館で、唯一ファンだと断言できるのが大阪中之島美術館。開館1周年展がどうしても観たくて、夜行バスに乗り込み、会期終了直前に滑り込んできた。
「デザインとアートの境界は?」というテーマからまず面白いし、展示のスタイルについても、ゲストがその場で意見を投票する参加型という斬新さ。作品と、作者と、そして自分と対話する不思議な空間だった。目に飛び込んでくる色と質感が常に目まぐるしく変わって、ワクワクしたなあ。

佐伯祐三 ― 自画像としての風景

こちらも中之島美術館の開館1周年展。大阪・東京・パリの3都市で暮らした佐伯祐三の、街ごとの作品の移り変わりが楽しめる展示だった。
正直、「単一の画家」×「ひたすら街の景色」で絵面に大きな変化がなく(アート・デザインと比較すればそりゃそう)、途中からちょっとだけ飽きてしまったのが本音。それでも、筆致や色使いの力強さには圧倒されたし、当時の彼の眼差しを想像するのは楽しかった。あと、東京のなんてことない町並み(下落合とか)が西洋画風に描かれているのはなんだか新鮮だった。(西洋画、の定義はよく分からないけど)


思えば6月は毎週末ビッグイベントを入れていた。ディズニーに行ったり、大阪日帰り旅をしたり、ハーフマラソンを走ったり。リモートワークの運動不足を誤魔化すかのように、週末の歩数だけとんでもないことになっていた。

ただちょっと体力を使いすぎて、月末には盛大に体調を崩し、それが今日時点まで続いているという。調子に乗りすぎた。7月はとうとう配属先のプロジェクトが変わるので、気持ちも時間の使い方も改めないとだ。

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