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デート・レイプの実態|「性的同意」とメディアの性情報⑥

顔見知りの相手から、「同意のない性交渉」の被害にあったという女子学生は珍しくない。某高偏差値大学に通う19歳のサユリは、こんな体験を吐露した。

「留学していた時、10歳年上の日本人男性と知り合いました。相手も語学勉強中で、いろいろ遊びに連れて行ってくれるお兄さんみたいな存在でした。

あるとき、『料理をご馳走してあげる』と言われて、彼の家に行ったんです。一緒に映画を見ていたら、だんだん部屋が暗くなってきて。私は初めてで、相手が何を求めているのか、自分に何が起こっているのか、何にもわかりませんでした。

結局私が嫌がって、体もカチカチだったみたいで、相手の体が入ってくることはなかったけれど」

その男性は、避妊具すら着けないままに、サユリの体に接触してきたという。その後、彼を避けるように彼女は日本へ戻った。

「帰国後、生理が少し遅れたんです。もう自分は日本にいて1人で、親にも友達にもこんなこと言えないし、とても心配になりました。

いま付き合っている人にも、この事件は内緒にしています。いまの彼が初めての相手ということになっていて、私が言わなければバレない。彼は、私の体を大切に考えてくれて、ゆっくり付き合ってくれるので良かったです」

同じ大学の女子学生リナは、「映画を見よう」と誘われて男友達の家へ遊びに行ったという。

「2人で横になりながら部屋で映画を見ていたら、私の背後にいた彼の手が段々と体に触れてきたんです。冗談かと思っていたら本気だったらしく、『大丈夫だから』とだけ言って段々とことが進んでいきました。

少し抵抗しましたが聞き入れてもらえず、無駄な抵抗をする理由もないやと思い許しましたが、全然幸せではありませんでした」

顔見知りの相手による同意のない性交渉は、「デート・レイプ」の1つである。今回の取材で、少なくない数の女子学生がデート・レイプの被害にあっている事実を目の当たりにし、背筋が寒くなった。

相手の男性たちは「家に来たんだから彼女もそのつもりだろう」と思ったのだろうが、ここに挙げた女性たちは「料理を作ってあげる」「映画を見よう」といった男性側にとっての「口実」を無邪気に信用して、家を訪れている。

なお、内閣府の調査(2018年)によれば、無理やり性交などをされた被害経験のうち、相手が「全く知らない人」であった割合は女性・男性の被害者ともに約1割に過ぎない。ほとんどの被害は、顔見知りの相手から受けている。

しかも、やや古いが科学警察研究所の強姦に関する調査(2000年)では、発生場所で最も多いのは「自宅」で、3割以上を占める。一般に性被害は、「夜道で見知らぬ人から」というイメージが持たれているが、現実は「家の中で知り合いから」というケースが中心なのだ。

これはすなわち、「家で2人きりになる」という行為に深い意味を持たせない被害者と、勘違いして(もしくは意図的に)強引な性行動に及ぶ加害者との間に、デート・レイプが発生しやすい状況を示しているといえよう。

男性向けメディアが手ほどきする「建前はH目的であることを隠して家へ呼べ」という誘い方を鵜呑みにすると、いざとなった時に悲劇を生む可能性があるのだ。女性が家へ来たからといって必ずしも「暗黙の了解」ではないことを、男性は肝に銘じた方がいい。

(カタカナ名は仮名)


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渡辺真由子 公式note【ネット時代の性教育と人権~メディアの性情報が与える影響と対策~】
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