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ジャンダルム(西穂高〜奥穂高)縦走

ジャンダルムへの想い

9月14日(火)〜15日(水)に北アルプスに行ってきました。コースはずっと行きたかったジャンダルムを含む西穂高岳〜奥穂高岳の縦走路。一般登山道最難関と言われ、岩稜続きの厳しいコースですが地図にはルートが掲載されており、なんとなくコースタイムも記載されているコースです。

ずっと行きたかったのに、なぜ行かなかったのかというと、それは怖かったから。多くの事故が起こっており、亡くなった方も少なくありません。「一般登山道最難関」と言われるため、一部では登山者の「憧れ」とか「夢」とか「挑戦」の場所として捉えられているのですが、写真や映像で見る限り簡単に足を踏み入れては行けない場所という意識がありました。

今まで槍ヶ岳や剱岳には登ったことがあり梯子や鎖場の経験もあります。また、一般登山道ではないバリエーションルートを、パートナーとロープを結びながら登ったこともあります。岩場のフリークライミングも沢登りの経験もあります。でも、ジャンダルムはなぜか特別でした。

登山計画と実際の登山

そんな場所だったのですが、今年はついに行くことにしました。山の経験値や体力が見合うと感じたことと、天気予報が最高だったからです。登山計画は以下の通りです。

登山計画
9月14日(月)
新宿7:15発→上高地12:02着(バス:毎日アルペン号)
上高地12:30→西穂山荘15:10
9月15日(月)
西穂山荘→奥穂高岳→岳沢小屋(泊?)→上高地
※15日は体調と時間を見ながら、岳沢に泊まるか、バスに間に合うようであればそのまま下山するか決めることとし、16日(水)は予備日に設定していました。

登山計画をする際に、自分自身の体力がどのくらいかを知っておくことが大事です。例えば、無理せずに歩いた場合、コースタイムの何倍で歩けるか?ということです。(※自身の体力を知る方法は以下のページに詳しく記載しています。)

私の場合は、普段から、テント泊装備だとコースタイムの0.7倍で計画をしています。そしてその体力が維持できるようにトレーニングもしています。結果、実際の行程は以下の通りでした。

登山の実際
9月14日(月)
上高地12:15→西穂山荘14:18
9月15日(火)
西穂山荘4:40→西穂高岳6:20→ジャンダルム9:30→奥穂高岳10:30→岳沢小屋13:35→河童橋15:21

登山装備

コロナ禍であり山小屋宿泊の場合は予約が必須であることから行程の変更が自由に行えなかったため、今回はテント泊の装備で行動しました。西穂山荘のテント場は予約が必要でしたが、岳沢小屋は予約が必要なかったのです。装備表は以下になりますが、衣類や靴も合わせると初日の装備重量は15kgでした。初日も2日目も水は2.5ℓ持っていました。

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登山中のペースと記録

登山中はSUNNTO3で心拍数やペースなどを記録していました。体力は自身でも「このペースは無理してない?」「ちゃんと呼吸してる?」「エネルギーも水分もしっかり摂ってる?」と判断をしていましたが、心拍数の変化からもペースや脱水の判断はできます。今回はしっかりと記録を取ることも目的の一つでした。

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登山中の様子と気持ち

初日は自分の体力や体調とコースタイムとの関連を確認しながら、初めてのルートを歩きました。地図で見た等高線通りの急登続き。そりゃそうだ、一気に西穂山荘まで標高を上げるのだから。時折見える稜線にうっとり。

西穂山荘へは予定よりも早く到着。テント場の受付を済ませ、風向きを考えながらテントを設置。平日だけあって、テントは9張りくらいしかありませんでした。ほとんどがソロの方ばかり。ひっそりとしたテント場、小屋に泊まっている方も少なかったようで、静かでした。

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ガスの合間から見える焼岳と夕日を1人で眺めながら持ってきたビールを飲み、ラーメンを作って食べました。うーん、静か。ソロの方と話したところ、私と同じく奥穂高岳を目指すとのこと。その方は4時出発とお聞きしました。私はできるだけ暗い中での行動時間を短縮したかったので4時半かなとお伝えして9時には就寝。

3時起床、お湯を沸かしてアルファ米にわかめスープの素を入れて、出来上がりを待っている間にコーヒーを飲みながらテント内の片付け。食事も終わり、テントも撤収して4:40に出発。

風も弱い中、西穂高岳に向かいました。ここのコースは冬の北アルプスデビューによく使われるところ。でも撤退している人が多いのも事実。風があったら冬は厳しいな、遮るものがないしな〜と思いながら歩きました。途中、前穂高方面から日がのぼり、あまりの美しさに何度も写真を撮りました。西穂高岳でゆっくり朝ごはん休憩。

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西穂高からジャンダルムまでは神経を研ぎ澄ませ、落石を起こさないよう、足を滑らせないよう、ルートを見失わないよう、必死でした。実際にはルートを2回ほど見失い、前後左右を行ったり来たりしながら確認する場面がありました。誤った判断をすると、簡単に滑落してしまうところもあるため慎重に歩きました。

平日だったのですれ違う人もまばらで、前後に人が全く見えない状況でしたが、間ノ岳あたりからは奥穂高岳方面から来る方の姿もチラッと見えるようになりました。なんだかホッとしました。

ジャンダルムをのぼり、最後の馬の背を超えて奥穂高岳に着いた時はとてもホッとしました。ゴールではないのだけど。

下山の判断

予定では13:00までに奥穂高岳についていたら、その日のうちに上高地まで下山するつもりだったので、予定通り上高地まで一気に下山することにしました。時間に余裕もあったので、奥穂でのんびりと30分ほど休憩。ようやくザックを下ろして座って休憩を取りました。

ギザギザがカッコいい前穂北尾根を見ながら、「前穂に登るのは北尾根からでいいや」と前穂の登り返しは諦めながら吊尾根と重太郎新道を下山しました。この日は快晴、天気が良すぎるくらいの天気で重太郎新道の下山がとても暑かったです。

岳沢小屋にて残りの水分量を確認したのちに下山。下から知り合いの山岳ガイドに会いました。夢のジャンダルムを歩きたいという、ご高齢のお客様と一緒でした。夢を語るお客様とそっと寄り添っているガイドの様子がとても素敵でした。

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無事に下山

吊尾根、重太郎新道ではたくさんの方にお会いして、その都度お話をしながら下山しました。私自身、人と話すことが好きなんだろうな、と改めて思いました。バスの時間を改めて確認しながらスタスタと下山。観光客で賑わう河童橋が見えた時、なんとも言えない気持ちでした。

お風呂にも入らず、着替えもせず、オレンジジュースを買って一気に飲み干してバスに乗車。それから長い自宅までの移動でしたが、無事に自宅まで帰りつき、元気に迎えてくれる家族の顔を見てお風呂に入ってやっと落ち着くことができました。

まとめてみた
・「計画」に対して「実際の行動時間や体力」などを常に客観的に判断しながら行動することの重要性
・予備日があることでの気持ちのゆとりの重要性
・日頃から装備重量と着用する靴などの装備に慣れておくこと

*この記録を公開すること自体、悩みました。簡単に歩ける縦走路ではないし、憧れや夢や挑戦という気持ちだけで踏み入れていい場所でもないと思ったからです。長時間行動できる体力、岩稜帯を安全に歩ける技術、何かあった時に対応できる準備や装備と技術、全てが試される場所だと感じました。不安があって、それでも歩きたい場合は安全に案内のできる山岳ガイドさんにお願いするのをお勧めします。


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