伊達 万雪

跡地

伊達 万雪

跡地

最近の記事

「ふつうの女の子にもどります」と言いベジタリアンになったアイドル #短歌

    • うずまいて喉にはりつくハイライト女のくせにとせめられている #短歌

      • 廊下

        進路資料室に続く廊下だった。部屋に入らなくても、古い赤本の擦れた匂いがした。 夏休みによく通る廊下だった。いつもより灰白い校舎で、鞄のチャームがジャラジャラ鳴っていた。 いつもひとけのない廊下だった。ぽつぽつ人とすれ違うことはあっても、立ち止まる人はいなかった。 いつも薄暗い廊下だった。電気が点いていたためしはなく、冬の夕方には外の街灯だけが光っていた。 * ひんやりとざらついた、アイボリーの壁の質感が、突然、あの廊下に重なった。撤収も済んだ、小さな就活イベントの終わ

        • ミント・ジュレップ

          聞き返すのはどうにもきまりが悪くて、じゃあ、それを下さい、とすまして言ってやった。カウンターチェアの細い足置きに丸めたつま先の力をそっと抜く。 「かしこまりました」 こんな大学生の背伸びなんてわざわざ見抜くまでもないだろうに、表情一つ変えず恭しく頷くバーテンはやはりプロだ。滑るように背中を向けるのにつられて、私も真横のC君の方を見た。 C君は特に緊張する様子もなく、所狭しと並んだ酒瓶を眺めている。カウンター上だけでもゆうに百本はあるだろうウイスキーの瓶は確かに綺麗だ。瓶によ

        「ふつうの女の子にもどります」と言いベジタリアンになったアイドル #短歌