群馬県六合村の花農家さんたちに会いにいきました

画像1

(撮影:玉利康延

華道家として活動を開始する前、こんなことできたら、あんなことできたら、といろいろ妄想していました。実際に始めてみて、とりあえずやってみたらどんどんできたこともあれば、そんな簡単じゃないことがわかり「いつかやりたいな」という棚に載せたものもあります。

後者の一つに、がんばっている花の生産者さんと直接つながり、その方の物語を聞いた上で、その方が作る花でいけばなをする、というアイディアがありました。花はそれだけでもちろん美しいけれど、その美しさを創り出すために努力されている生産者さんの想いを感じることができれば、花を生かす、という行為も、もっと濃いものになるのではないかと。

しかし、生産者→JA→卸→仲卸→小売→消費者(含む私)とバリューチェーンが長く、どうやってつながればいいのか、検討がつきませんでした。花は、だいたいある地域のある季節でのみ生産され、それも天候によって変動し、配達にも手間がかかるので、需給調整、ロジスティクス、多種を集めるなどの機能を持つ市場が必須。つまりバリューチェーンは必要な構造です。

そもそもどういう生産者さんがユニークなのかもわからないし、私のような活動に乗ってくれるかもわからない。

昔なら、日本全国いろいろ回って、みたいなこともできたかもしれないけれど、今は小さな子どももいて、家を何日もあけるというのは、どうも気が乗らない。

ということでぼうやりと放置していたこのアイディアが、ご縁のおかげで、実現しそうになっています。

先ほどのバリューチェーンに戻ると、毎月のレッスンや時折のワークショップで使う花はすべて、10本単位からなら誰でも買えるオンラインショップ「はなどんや」を運営する仲卸さんから買っています。ここの社長の松村さんは、ITバブルを大学時代に経験している同世代だったり、業態は違えど問題意識や想いが一緒だったり、ということで、すっかり意気投合して仲良くなりました。

はなどんやのサイトには、生産者の名前がしっかり書いてあったり、時には特定の生産者の特集があったり、と、生産者さんとちゃんと関係を構築しているんだろうな、と思っていました。想像通り、しっかりつながっていらっしゃいました。

「生産者さんとつながったいけばなをしてみたい」という願いを松村さんに話してみたら、自然の野原に咲いているような、繊細で多種の草花をつくる生産者さんが集まる群馬県六合村に連れて行ってくださいました。

お父さんが定年退職後に花農家を始め、お母さん、娘さん二人も手伝って、終止にぎやかな、女性パワー溢れる田村さん。いろんな種類の花が咲き乱れ、畑と野生の境界があいまい。「あれ、この花なんだろう?売れるかしら?」とのりも最高。

サラリーマンから花農家になり10年前に六合村にやってきた海保さんの畑は、美しく整然としていて、神聖さが漂い、思わずため息がでるほど。まるで天国のようでした。

そして、海保さんのところで修行してから独立した、若い波平さん。電球の光を使って、花の咲く時期をずらし、他の農家さんが終わった後に花を出す、という工夫をされています。

どの農家さんもとてもオープンで、どんなふうに自分たちのお花が使われるか、興味津々。いけばなのワークショップのアイディアにもとても前向きになってくださいました。そして「好きなだけ持って行って!」という感じで、持ちきれないほどのお花をくださいました。

こんなふうに野の花がいけばなになる、ということをちゃんとお見せしたく、11つもの作品を家で作り、写真を撮りました。しっかりと園芸されたお花をいけるのも楽しいですが、たくさんの種類の野の花をいけるのは、格別の楽しさがありました。しかも、「これは、田村さんが山に入ってとってくれた花だ」「海保さんちの天空のような檜扇」とすべての花の後ろに生産者さんの顔が浮かぶ状態でいけるのは、想像を超えた素敵な体験でした。

画像2

もうすぐ花の生産のシーズンが終わるので、来年の夏あたり、六合村に行って花農家さんとお話ししながら、市場に出せないような花を使っていけばなをする、という企画を実施したいと思っています。

農家さんたちにとってたいした売り上げにつながるわけではないけれど。でもきっと、この先には何かがある、という予感があります。少しずつ、一歩ずつ。

画像1





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?