エッセイ『資生堂パーラーの花椿ビスケット』
花椿ビスケットの美しい缶を見ると、胸がときめく。
それは子どもの頃、祖母の鏡台にあった薄紫色の化粧水の瓶を見たときに感じた微かなときめきとどこか似ているような気もする。
なかみはでも、もちろん化粧品ではなく、ビスケットなのだから当然ビスケットが入っているのだけれど、最初、その中身であるビスケットは化粧を施したように飾り付けがしてあったり、色鮮やかだったりと、そんなものを勝手に想像していたのだけれど、知れば中身はとてもシンプルなビスケットただ一種類で、その上品なたたずまいがとても素敵に思えた。
いつか自分もその美しい缶入りのビスケットが欲しいな、と思いながらも、缶そのものを手に入れることのないまま時間は過ぎて(おすそわけで中身だけいただくことはあったけれど)、でも先日、目にした限定色のピンクゴールドの缶に胸がときめき、花椿ビスケット缶をようやくひとつ手に入れた。
さっそくお茶時間に缶を開けてみると、小麦粉と砂糖の甘くて香ばしい匂いがふわっと広がった。きれいな焼き色のビスケットは食べるとザクザクッとした食感の優しい甘さ。昔ながらの素朴なビスケットといった風情もあって、ほっと一息したいときにいただくおやつとして最適そうだ。
というわけで、一日数枚、お茶時間にザクザク音をたてながら紅茶とあわせて花椿ビスケットをいただくのが最近の日々のたのしみになっている。厚さもあるので、一、二枚食べるだけでもかなり満足感があり、シンプルだから飽きもこなそう。そしてビスケットを味わうことに加えて、食べ終えたらこの美しい缶に何を入れようかな、と考えるのもまた、最近のたのしみのひとつになっている。
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銀座本店では花椿マークのチョコレートもありました
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