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夢でみた場所

毎日、夢をみる。子供のころからいろんな夢をみている。意味不明なものや記憶の整理的な夢もあれば(ほとんどはこれ)、過去(あるいは過去世なのだろうか)に経験したことの夢もあるし、ごくまれに予知夢のようなものをみることもある。そしてそれらに加えて、自分がまだ知らない場所(実在する場所)を夢のなかでみたこともある。

たとえば、すこしまえにみた夢だと、母と一緒に出掛けている夢。そのなかでわたしと母はどこかの地方の山道(でも道は舗装されている)を歩いている。ふたりで他愛ない会話をしながらどこかを目指しているのだが、そのなかでとある地名の名前がはっきり出てくる(でもわたしはその名前の場所を知らない)。そしてその足で駅につくと、母が駅員さんなのか案内所の人なのか、よく分からないけれどもそんな人に切符のことを尋ねていて、そのなかで「わたし、昔、ここに一度遊びに来たことあるのよ」なんてことを話している。

―という、なんの意味もないような夢なのだが、起きたあともその地名がはっきりと耳に残った。それで母に聞いてみると、自分が無知だっただけで実際にその名前の場所があるのだという。しかも若いころに母は一度そこへ行ったことがあるのだという。その夢すごいわねと母に言われ、へー、すごいな、と自分でも思った。ということは、いずれそこへ母と一緒に旅行するのかもしれないし、後付けになるけれどもそうなれば正夢にもなるな、なんてふうにも思う。こんな具合に、自分がまだ知らない場所の夢を数える程度だがみたことがある(知らない地名が出てきたのはこれが初めてで、ほかは景色の記憶が残って、あとで「あ、ここかもしれない」と一致する感じ)。

なので、たまに印象的な場所が夢に出てくると、ここ、本当は世界のどこかに実在するのかな、と思うことがある。でも、たぶん、ない。夢はやっぱり、そのほとんどがただの夢だから。

でもひとつ、いまだに夢でみて以来ずっと惹かれている場所がある。
それは大きな公園のそばにある小さなカフェの夢―。

そのカフェは、明るい緑あふれる大きな公園の前にあって(通りを挟んで前にある)、青というか紺色というのか、そういう色の壁をしている。入口は細長い扉で(真ん中にガラスが入っている)、入ってすぐ右手には本棚があり(小さな本屋併設なのかもしれない)、ガラス窓で仕切られた左手にはこぢんまりしたカフェスペースがある。座席数は五、六席くらい。公園のみずみずしい緑を窓越しに眺めることができて、ああ、入ってみたいなと夢のなかで思ったのだった。けれど入らないまま、目が覚めてしまった。

そのときの夢を今でも感覚ごと覚えていて、五月くらいの爽やかな空気で、すごく心地よかった。全体的に穏やかで明るい感じ。

あれは日本の公園に似ているような気がしたけれど、日本ではないような気もして、ロンドンに近いような気もした。それかまだ自分の知らないヨーロッパのどこかかもしれないし、やっぱり日本なのかもしれない。
 
いずれにせよ、夢でみたそのカフェに、いつか出会えたらおもしろいなあと思う。


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