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おしゃれカフェにて

先日入ったカフェは、とてもおしゃれで素敵だった。

大きなショーケースのなかには焼き菓子が宝石のように美しく並び、イートインスペースには窓に面したカウンター席と、どーんと大きなテーブル席がひとつあるのみで、無駄のないスッキリした感じがいかにも都会的で洗練された印象を受けた。

広々としたガラス張りで、なかの壁も打ちっぱなしで、ライトも吊り下げられた裸電球。すこし冷え冷えするような感じもあったけれど、それがよりスタイリッシュさを醸し出しているようにもみえた。

とはいえ、こういうおしゃれな店は、自分の場合、ちょっと落ち着かない気分にもなる。最初、カウンター席に座ってみたのだけれど、スツールが高くて、足の置き場が不安でなんとなくこころもとない。背もたれもないので、なんだかふっと重力にひっぱられて、うしろに倒れそうな錯覚にも陥る。それで落ち着きなく、今度は大テーブル席に移動をした。

ふだん、大テーブル席は苦手でほぼ利用しないのだけれど、その日は幸いにも人が少なく、大テーブルにいるのはマダムらしき女性グループ三人のみ。彼女たちは窓に近い端の席に座っていたので、自分はその反対側の端っこの方に座り、悠々とテーブルを陣取るような構図になった。

けれどやっぱりちょっと、落ち着かない。お店はとても素敵で空気もよくて、目当ての焼き菓子だっておいしくて満足なのだけれど、なんとなくソワソワ。たぶん、これは、自分のしょうもない性分のせいなのだろうと思う。いかにもおしゃれで洗練された店に入ると、無駄に緊張してしまうという自分の不慣れさの発露。ゆえに読書するのにもぼんやりするのにも、いまいち入り込めない。

こういう店は、一人で来るよりも誰かと来る方がリラックスできてよいのかもしれないなあ。あるいは二度目以降は、店の雰囲気にも慣れて、普通でいられるのかもしれないなあ。なんて、そんなことを考えながらカフェオレを飲んでいると、ふと、視線を感じた。

見ると、自分のいる位置からちょうど対角線上、お店の入口付近にチワワが一匹座っていた。客の誰かの飼い犬なのだろうか、毛布を敷いた椅子のうえで大人しくお座りをして、こちらを不安気な眼差しで見つめている。

あら、かわいいワンちゃん、と思って視線を送り返すと、チワワは即座に視線をずらし、べつの方向をまた不安気な様子できょろきょろ見まわしている。そっか、と思う。そっか、きみもちょっと落ち着かないんだね。分かるよ、分かる。今のきみの気持ち。

またしばらくすると、チワワは気遣わしげに私の方を見ていた。どうやら自分が視線を外すと、関心をもってこちらを見つめてくれているようだった(たぶん)。なんだかその様子が労りのようにも思えてしまって、そしたら、ふふふ、と、なんだか可笑しな気持ちになってしまった。

広々とした洗練された空間のなか、ぽつんと居る自分と、ぽつんと居るチワワ。距離はあるけど不思議と心は相通じているようで、そしたら仲間をみつけたおかげか無駄に入っていた肩の力が抜けて、その後くつろいでお茶をすることができた。

お店を出るとき、チワワちゃんに「ありがとう」と心でお礼を言って微笑みかけると、「なになに、なんのことです?」と彼(彼女)は目を丸くしていたけれど、笑。


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