エッセイ『資生堂パーラーの花椿ビスケット』
花椿ビスケットの美しい缶を見ると、胸がときめく。
それは子どもの頃、祖母の鏡台にあった薄紫色の化粧水の瓶を見たときに感じた微かなときめきと、どこか似ているような気がする。
なかみはでも、もちろん化粧品ではなく、ビスケットなのだから当然ビスケットが入っているのだけれど、最初、その中身であるビスケットは化粧を施したように飾り付けがしてあったり、色鮮やかだったりと、そんなものを勝手に想像していたのだけれど、知れば中身はとてもシンプルなビスケットただ一種類で、その上品なたたず