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お家に帰るとそこにアップルパイがあった


つよいおんなってなんですか。
つよくなるひつよう、ってありますか。



わたしとわたしの前を歩く友達の間を横切ったおとこが通りすがりにそのこのおしりを、さわった。

しれっと。

それはそれは、しれっと。


瞬間的にわたしは彼を見たが、目をやった頃には人混みに消えていて、その代わり目があったのはお尻をさわった彼の連れのようなひとだった。

その彼は、わたしに軽く頭を下げた。へらへらとした、よっぱらいの真っ赤な顔で。わたしは思い切り、睨んだつもりだったがどんな顔を出来ていたのかもう分からない。


くやしかった。やるせなかった。呆れた。腹が立った。よく分からないなみだがでた。かなしかった。

なによりも、彼女にいま触られたよね、と聞くと、あ、わざとだった?慣れてしまってたからなにも思わなかった、とわらったことがかなしかった。


慣れてしまった。か。

こんなことに慣れる必要なんてないのに、慣れてしまった、と女の子はわらうんだ。


お手洗いに向かうと、後ろから彼女がわたしの名前を呼んだ。ふりむくと彼女は、泣いていた。わらいながら、泣いていた。

なんかくやしくて。

とわらいながら、泣きながら、彼女は言った。



酔っ払いで賑わう金曜夜の青山通りをあるきながら、わたしは、どうしたらいい。どうしたら、わらいながら泣く必要がなくなる。慣れる必要がなくなるの。


お家に帰ると、お母さんがいて、ベッドがあって、冷蔵庫にはキラキラと輝くアップルパイがあった。


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