病院へ行けないカズコさんの理由③

カズコさんは、結果として病院へ行く事が出来ました。では、何故、一年も病院へ行けなかったんでしょう。

ヘルパー事務所の方たちは、カズコさんに関わる様になって一年半。彼女の事を本当の意味で知ろうとしていたのでしょうか。一年半も有れば、信頼関係を築く時間は、たっぷりあったと思うのです。

その答えは、カズコさん本人が教えてくれています。

週1しか会わない私でさえ、聞く事が出来たのに、一年半関わっているケアマネさんやヘルパーさんが、聞けなかった事は無いと思うのです。

聞こうとしなかったんじゃないのでしょうか。

一人で出来る。忘れてしまっていってるのは薄々感じている。だから火を使わない様にしている。あそこのバァさん火の不始末で死んだとか言われたくない。出来る事は、やっていかないと頭がボケてくる。自分で出来る事は自分で、やっていたい。娘には迷惑を掛けたくない。

大学を出て、働いて働いて娘を薬剤師にした。(彼女自身も聡明で博識な方)

お孫さんの事など、自分の今の気持ちや、こう生きていたい。など、御本人が話してくれている。

薬を飲み忘れる事は幾度となく有るけれど、それって重要かな?訪看さんとか来ているし、ご近所付き合いも有って、顔を出さないと近所の方が心配して来訪してくれるそうな。それはカズコさんの財産で、気に掛けてくれる人達が、カズコさんの環境に有る。そのうえで、彼女の自尊心を守る。

それでも今回の定期的な受診の様な必要性がある時は、逆に彼女の自尊心をくすぐる。出来ると思ってるから話をしますね、とか。ボケたフリしないで、とも言ってたかな(笑)私的には、どっちでも良いんだけどね。ボケてようがボケてまいが。

生きている存在自体が、情報の宝庫なので、いくらでも本人を見れば本人と話せば、人生の履歴を知る事が出来る。

その役割が介護の専門職の仕事だと思うんだけど。

認知が入ってる所と入ってない所が有るんですよね。

この言葉を専門職が言ってる事が、プロ意識の無さというか、自分は人を見る事が出来ない無知な専門職です、と言っている様に聞こえた。認知症の事、理解しているのかな。

相手にしているのは、生きている人間だ。

それ以上でもそれ以下でも無い。

ボケて忘れてしまったら、人間として扱わないのか?自分が、されたらどう思う?

そんな事、教科書に書いてないから勉強しないのかな。

私の仕事は、認知症の症状のある、ばばちゃん達の側に居させて貰う事。話を聞かせて貰う事。お互い困っている事を助け合って過ごさせて貰う事。それだけ。

まだまだ、ばばちゃん達との面白いやり取りを、事例を含めて紹介していきます。


mayu