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紫色のランドセル

もう何年も前の話だけれど、知り合いからLINEがきて、8万円を振り込んだことがある。
ずっと長い間、たしか卒業以来会っていない、小中学校の同級生からの連絡だった。
だけど、それは詐欺だった。
LINEの乗っ取りというのがあるらしくて、そんなのは常識なのかもしれないけれど、20代前半の人生経験が浅いわたしは騙されてしまった。
ほんとうに振り込むか?とは少し悩んだけれど、詐欺かも、本人ではないかも、とは思わなかったんだよね。

ゲームに課金するのにコンビニでカードを買わなくちゃいけないんだけど、今手が離せなくて大切なタイミングだから、コンビニで8万円分のカードを買って番号を送ってほしい、あとからお金は返す、というような話だった。
その同級生は、ゲームがだいすきで、まゆこ、とひらがなで呼ぶのも同じで、ちょっとした文章の書き方もとても似ていた。
最初はもちろん渋ったんだけれど、「私を信じてくれないの?こんなことにお金を使うなんてくだらないと思っているの?」というようなことを言われて、今の彼女の状況ももうずっと会っていなくてわからなかったわたしは、コンビニでカードを買って、番号を送った。
送った瞬間、トークルームがなくなった。
そのときに、ああ詐欺か、と気づいた。
最悪……とはもちろん思ったけれど、彼女がなんらかの理由で8万円が必要であんなふうに突然連絡を寄越して頼むようなことになっていなくてよかった。

大きなお金だけれど、8万円で巷でこんな詐欺が行われているということを勉強できてよかった、と思うしかないよね、とほほ。
みなさんも気をつけてくださいね。

ラインが来てからカードを買って番号を送るまで、30分もかからなかったはず。
なぜあのとき、わたしはあんなに迷いなくコンビニに向かったのだろう、きっと、あのころのわたしがあのころの彼女に8万円を送らなくてはいけないんじゃないか、と思ったから。

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ひそひそ話

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