アウグスティヌスの正義説

アウグスティヌスの自己実現的正義論。
アウグスティヌスは中山元『正義論の名著』を通してしか知らないので、後にじっくりと読むとするが、中山によれば、アウグスティヌスはこんなことを言う。

正義とは魂と身体がそれぞれの務めを果たすことであり、人間自身のうちに、自然本性のある正しい秩序が生じて、魂は神に、身体は魂に服属し、かくして身体も魂も神に服属することが正しさであり、正義なのだ。魂は神に仕える時に身体を正しく支配し、魂それ自身において主なる神に従う理性は、欲望およびその他の悪しき部分を正しく支配するのだ。

私見によれば、聖書には神への愛と隣人愛とが説かれている。それぞれ愛と正義に相当する。神への愛とは、何よりも神を愛することであり、社会に神の意にそぐわない不正義があれば、自分が迫害されようともその不正義を非難することであり、そうすることによって神への愛を実現することだ。これは正義だ。

そして正義とは、神に魂が従うことであり、身体は魂に従うことであり、要は魂も身体もどちらも神に服することなのだ。そして魂と身体とがどちらも神に従うことによって、魂は真に理性的となり、身体も不摂生から守られて壮健となる。人間は神の賜物として、生まれながらに理性的にもなることができれば壮健になることもできる能力を持っている。これを神への愛を通して実現するのだ。

つまり、神から与えられた素質を神への愛を通して実現するのであり、これも一種の自己実現となる。そして自己実現をすることによって、人は理性的になり健康的にもなり、そうすればこそ忍耐強く迫害にも負けずに、社会悪を糾弾することができるのだ。

アウグスティヌスの正義は、神に魂が従い魂に肉体が従うことであり、魂と肉体とが神に服することだ。それは神から賦与された素質を実現することであり、それを神へと返すことだ。だから、アウグスティヌスの正義は対称的自己実現の正義となる。

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