見出し画像

藪から棒に文学論 おかしみ論1

塾講師と詩人が話している。どうやら詩論のようだ。

「君は詩を書いていると言っていたね」
「まあ、そうだ。いまはマルセルとブーバーについて書いているよ」
「マサルとバーブー‥ 誰だい」
「何を言っているのやら。どちらも実存主義者さ。いまじゃ、枯れ尾花みないたものかな。わび・さびだね」
「君こそ、何を言っているのやら‥ そういえば、わび・さびといえば、関係しているのかわからないが、先日堀口大学の『月下の一群』を本棚から探し出してね」
「おや、詩でも読もうというのかい。おあいにく様」
「なにが『おあいにく様』なんだい」
「いや、君が詩を読むだなんて、世も末だな」
「失敬だね、君も」
「そうじゃないよ。滅びゆく宿命にある詩を読む人が増えるほど、世界は終末に近づくってことさ」
「『終末』でなく、僕が詩を読んだのは『週末』だよ。詩が滅ぶのかい」
「新川和江がそう言っていたよ、現代詩は読んでもサッパリだ、むしろ素人の詩のほうがいい、こんなんじゃ文学としての詩も滅ぶってね」
「素人のほうがいいって、君にとっては吉報じゃないか」
「失敬なのは君じゃないかい」


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?