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祭りのじかん

人はなんて祭りが好きなんだ 

地元に帰っていた私は、祭りが開かれている場所の少し離れたところから行き交う人を見ていた

この風景も来週には終わってしまうだろう 行き交う人の声や夜店の思い出は今しか味わえない

----------------------------------------------------私は祭りが嫌いではない だが好きという程でもない だが暇だったのでふらっと夕方に覗いて見た

山吹色の浴衣を着こなす10代の若者 子連れの親子 老夫婦二人で踊りを眺めているほのぼのとした空間 

お母さん、飴買ってよ!

手を引っ張りながら少し離れたところまで聞こえるほどの声でおねだりする女の子 店主だって苦笑いしている

懐かしい 私にもそんな頃があったなぁ

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思い出

浴衣こそ着せて貰えなかったけど いや違うな 面倒くさくて 早く祭りに行きたくて 小走りで行った気がする

綿菓子が欲しくて 100円のやつを買ってもらった 歩きながら食べていると りんご飴屋台があった 

綺麗だったなぁ 赤いりんごが アメの力を借りてつやつやと輝く 

デパートジュエリー店を傍から覗いていた時のような興奮を覚えた 

絶対欲しい父親にお願いした

りんご飴を手にする 暫く眺めていた

なんでも楽しかった イカ焼きの匂いやたこ焼きの匂いだけでも全身がワクワクしていた 

あー異世界に来た!って大袈裟なことを思うほどにね

ヨーヨー釣り 金魚すくい くじ引き スーパーボールすくい 

全部楽しそうで 当時は結局全部回ったように思う

あの頃は全身で祭りの楽しさを感じていた 小さなことでも感動できた 今とは全然違う

でも今と全く変わらない感覚がある それは

『この賑やかさがとても儚くて 淋しい』

賑やかな淋しさ

祭りは限られた時期の限られた数日しか開催されないそのために多くの人が 普段はしない格好をしたり 家族団欒を楽しんだり 異空間を楽しむためにきている

みんな祭りを全力で楽しんでいるからか 賑やかである 笑顔ばかりである 

みんながこの日を全力で楽しむ理由は簡単だ

また日常が始まるからだ 今の空間が跡形もなく消えるから でもきっと来週には忘れてしまうだろう

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夜が近づく 星が疎らに現れる どこからか声が聞こえた

「あ〜もう終わりかぁ そろそろ帰るか」

「今日は楽しかったなぁ」

次は来れるかどうかもわからない  そんな寂しさがふと垣間見得る

あの人はまた来るんだろうか 

またいつか出逢えるかもしれない人 その日限りですれ違う人  ひとつの場所にいたみんなが色んな方向に散っていく 

私はあの人混みには紛れたくない 大勢で鬱陶しいから??

ううん まだ終わりだと思いたくない 人がいなくなる時まで祭り気分でいたい 

その頃の私はまだそんな思いがあったようだ

静けさを取り戻すまで待っておこう

流れゆく賑やかな淋しさの中 祭りが終わる


私は 小さい頃 祭りが終わったあと必ず 何も無いその場所に 1人で足を運んだ  儚さを感じるために行くのだ

屋台が無くなり、人が居なくなり、誰も通らないその場所をみて 一言呟く

『祭りってこんなに寂しかったのか』

やっぱり人は夢を見ることが好きだなぁ 

今は殆ど祭りに行かなくなった だが通りかかると

あの頃の淋しさは今もしっかり思い出す 

‘今のこの一瞬を楽しめるからいいのだ ’

そういう考え方の人は幸せだろう 私みたいにヒネクレタ物の見方をしなくていいから羨ましい

私にもその感覚を分けて欲しい もっと単純に祭りを楽しむ感性がいつどこで失われたのか 自分でも不思議で堪らない







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