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月報:2023年5月

 藤原恭大の誕生月、5月。ヘッダーは飛び立つハトたち。

✅今月したこと

・さくらももこ展に行った

 最終日前日に行きました。いつもギリギリ。優待券を手に入れたので通常1,400円のところ1,200円で入れました。たかが200円されど200円。

 さくらももこは53歳で亡くなっていますが、とても53年しか生きていないとは思えないくらい実にいろいろな仕事を残しています。マンガ描いてエッセイ書いてアニメの脚本書いて(何かのエッセイの文庫版巻末対談で三谷幸喜さんがびっくりしていたのを思い出す)ラジオでしゃべってコラボウォッチのデザインして息子さんと絵本作って旅行行ってバッジ作ってゲームして。後半は仕事ではない。でも順路の最後にあった「さくらももこの手引き」にあるように、好きなことや楽しいからやってたことを仕事にした人なんだなあと思います。だからこんなに膨大なものを残せたし、短くても濃い人生だった。やっぱり53歳は早すぎると思うし、その倍ぐらいは生きてほしかったけど。

 エッセイがとにかく好きなので、直筆原稿が見られてありがたかった。「奇跡の水虫治療」って原稿用紙12枚しかないのか。それであの濃さ。あと実際に使っていたペンやノートや自宅の作業環境の写真。作家のこういうのが見られるとうれしいよね。


(図録とか。りぼんの当時の付録復刻って言われたらそれは買う。)


・忙しすぎたGW

 何か知らんけど今年のGWは忙しかった。例年と格が違った。帰省するから実家であれもこれもやるぞ!とざっと13kgぐらいの荷物を持ってきたらとんでもないことになってしまった。

 まず、今私は私による私のための石坂金田一の同人誌を作ってやろうと目論んでおり、その原稿を進めた。これが一番ボリュームが多かった。石坂金田一のかわいいシーン全部拾ったり、原作をまとめて映画との違いを洗い出したり。これをずーっとやってた。車の中でも信号待ち中に書いてたし那覇ハーリー(GWのお祭り)に行っても暗くなるまで書いてたしトイレ待ちの列でも書いてたし帰りの空港からの電車の中でも書いてた。これはまあこの甲斐あって2万字くらい進んだのでよしとする。

 その合間を縫ってシルバニア用の袴(石坂金田一エディション)を試作したり(実家にはミシンはあるけど物理的に使えないのでえらく時間がかかった)ショッピングセンターに行ったり(パルコシティもライカムもイオン南風原も行った)していたので、とにかく忙しかった。でも私は休みの日こそ忙しくしていたいタイプなので、これはこれで良いGWだったと言える。前に石坂さんが「休みでもあんまりゴロゴロしない、いつも何かやっちゃう」みたいなことを言っていたが私もそういう傾向がある。いや石坂浩二と一緒にしては畏れ多いのですが……。

🛍今月買った重要なもの

・文フリで買った本

 文学フリマ東京36に行ってきました!買ったのは横溝界隈中心。
行くのは8回目なんですが、身内以外で出店者さんにご挨拶したのも友達と一緒に行ったのもついでに第一・第二展示場両方使われてるのを見るのも初めてで新鮮かつ楽しい文フリでした。


📖今月読んだ本

・悪魔が来りて笛を吹く/横溝正史(再読)

 金田一シリーズで一番好き。理由はドロドロしてるからです。そしてドロドロの元凶ともいえる秌子さんのことも好きです。秌子さんのために「秌」という字を辞書登録するくらい好きです。せっかく登録したんだからもっと使おう。秌子さん最高!秌子さん素敵!

・これは経費で落ちません!10/青木祐子

 ついに森若さんと山田太陽が……!新幹線乗り場でのシーンは叫びそうになりました。シンデレラ・エクスプレスじゃん。未だに付き合っていることを隠し通している2人ですが、結婚するとなればいよいよネタバラシしないわけにはいかなくなるだろうし、元トナカイ化粧品組の不協和音も気になるし、ますます11巻が楽しみ。

・事故物件、いかがですか?東京ロンダリング/原田ひ香

 続編の方から読んでしまうというたまによくやるやつをやってしまった(初めてやったのは「ホルモー六景」、「鴨川ホルモー」の続編)。「東京ロンダリング」という本がこの前にあって、それと話がつながってるらしい。でもそんなにわかりにくいところはなかったのでセーフ。内容の方ですが、事故物件に一定期間住んで告知義務をなくす架空の仕事「ロンダリング」を行う人たちのお話。人が死んだ部屋に住むという一見暗そうな仕事なのに事情も考えもロンダリングをやめる経緯もさまざまで、明るくてどことなく希望が感じられた。NHKの夜10時の枠とかでドラマ化されそう。

・悪魔の降誕祭/横溝正史(再読)

 また再読。「悪魔の降誕祭」は犯人の属性がとても好きです。どうでもいいけど12月の話なので今の時期に読むと暑い。「女怪」は悲しめばいいのかニヤニヤすればいいのかわからない。悲しむべきなんでしょうけど傷ついている男の人は美しいので……。あと、金田一さんが愛した女性二大巨頭が「獄門島」の鬼頭早苗さんとこの「女怪」の虹子さんですが、正直早苗さんの方はいつ好きになったのかよくわからなかった。早苗さんに抱いていたのは色恋的なものじゃなくて同情だったんじゃないかと思う。その点虹子さんに抱いているものはどう見てもラブです。片思いです。ラブストーリーとして考えると「女怪」の方に軍配が上がります。金田一耕助にキャラ萌えしている人間にとってはたまらん一編。

・イタリア史10講/北村暁夫

 そういえばイタリアの歴史ってよく知らないな~と思ったので。最後の方で触れられている通り、イタリア史はメディチ家とかルネサンスとかあのあたりばかりが有名で近現代のイタリアはあまり触れられない気がする。世界史でよく取り上げられるのはファシスト政権期ぐらいか。

・図説 モノから学ぶナチ・ドイツ事典/ロジャー・ムーアハウス

 ハーケンクロイツの旗からヒトラーの恋人エヴァ・ブラウンの口紅ケースまで。モノのビジュアルとともに見ると当時の生活や社会の空気がよりリアルに感じられる。話変わるけどムッソリーニは「わが闘争」最後まで読めなかったのか。私は読んだけど。最後まで読まない方が正しいという考えもある。

・和装のヴィクトリア文学 尾崎紅葉の『不言不語』とその原作/堀啓子

 「不言不語」は本当に面白いので紅葉の中でも金色夜叉と多情多恨に次いで好きなんですけど、その「不言不語」は19世紀のイギリスのとある女流作家の小説の翻案なのではないかという説を提唱している本です。底本はシャーロット・M・ブレム(別名バーサ・M・クレーなど)の「Between Two Sins(二つの罪の間)」。バーサーM・クレーといえば金色夜叉の底本「女より弱き者」の作者でもあります。紅葉はこの人好きだな。当時でこそ大衆に人気があって作品が日本の作家の目に止まるくらいには知られた作品だったとしても現代では忘れ去られた作家・作品(翻案した尾崎紅葉の名や作品が今でも広く知られているのとは対照的に)だけど、あの尾崎紅葉に「これは」と思わせるなにかがあったんでしょう。

 この「原作」も訳されてフルで収録されているので読めるんですけど、ベースが一緒で途中から全然違う展開になる。例えるなら「病院坂の首縊りの家」の原作と映画ぐらい違った「金色夜叉」と「女より弱き者」とは異なり、展開もラストも美しい奥様の「秘密」もほぼ同じです。同じなんですが、もちろん微妙に差異はあってその差異こそが紅葉が独自に実現したかった物語としての狙いになっています。「原作」が主人公・ケイトが「語っている」物語なのに対して「不言不語」が主人公・環が「記している」物語であるというのが最大のポイント。奥様の「秘密」が姿を変えてやってきたかのような環の境遇、奥様と環の相克が環と読者との間で再生産されるという指摘が面白かった。

 さらにケイトとウリックの恋愛が大きなウエイトを占めていた「原作」に対し、「不言不語」はよりミステリーの匂いがします。そこについても当時新潮流だった探偵小説を紅葉が紅葉なりに咀嚼した結果だと言われていて、最近横溝正史のせいで探偵小説づいている私は興奮しました。奥様の「秘密」もその動機もなんとなく横溝っぽいような気がする。

・そういうふうにできている/さくらももこ(再読)

 さくらももこ展に行ったらこれを読み返したくなった。妊娠・出産エッセイ。ホルモンバランスのせいで情緒不安定になって些細なことで泣き出し「夫は秋元康の面白い話と結婚すれば良かったのではないか」と思うくだりが好き。

 でも一番ぐっとくるのはここ。本当にそうだよなあと思う。

もし、世紀末の今、人類に未来がないとしたら、子供達がこの期に及んでまだ地球に降りてくるであろうか。神がいるとしたら、そんな最悪な世の中にこんなに愛らしいものをよこすはずがない、そう思える程、子供は勇気を与えてくれる。(p.194)

 それにしてもつわりや便秘やなかなか赤ちゃんが下りてこないことや勇気を振り絞って山口百恵に電話をかけるなどのことを乗り越えて生まれた子が立派に大人になり、今や母親の展覧会の冒頭で挨拶を述べるようになったのかと思うと勝手に感慨深くなってしまう。こうやってバトンは未来へつながれていく。やっぱり「そういうふうにできている」んだな。命って。

・壽屋コピーライター 開高 健/坪松博之

 サントリーの広告が大好きなので、サントリーのコピーライターとしての開高健のことならそれはもうそれなりに知っているのですが、それ以外の開高健のことをさっぱり知りませんでした。小説家であることすら知らなかった。コピーとノンフィクションのイメージしかなかった。会社と広告の関係性、経営者と広告チームの関係性という意味でサントリーほど理想的な会社は他にないのではないでしょうか。私の10年来の愛読書「時代を映したキャッチフレーズ事典」でもサントリーの収録数がダントツで多いのも頷ける。もはやお酒と並んで広告もサントリーの主力商品のひとつといっても過言ではない。

 そして開高健自身のコピーライター以外の面もよくわかった。山口瞳もそうですが、作家とコピーライターは一見相反する仕事(自分の書きたいものを書く作家と予め決められたテーマで書くコピーライター)のように見えて実は密接に結び付いているんですね。

・文化としてのテレビ・コマーシャル/山田奨治(編)

 テレビCMが好き。レコーダーのCMカット機能を開発した人を憎むくらい好き。あれと伸縮する犬のリードは人類が発明したものの中でも最悪レベルに分類されると思ってます。そんなことはいいとして、CMは戦後日本のその時々の流行だけでなく人々の価値観まで反映している立派な時代の代弁者であります。いや、これを読んでいると時代の空気をCMが代弁しているのではなく、CMが時代の空気を作っている面もあるのではないかとさえ思います。だからCMは文化です。文化なので保存していかなければならないわけです。CMカットとかしている場合ではないのであります。

 細かいところで言うと、モノクロ時代では表現しづらかった「自然」の風景の描写がカラーになってできるようになり、公害が問題になってきた時代にも合わせて環境広告が増えるようになったり、外国への憧れから「日本人としてのアイデンティティ」「日本ならではの美」を提示するような方向へシフトしていったり(ディスカバー・ジャパンとか)。日本だけでなくドイツや韓国など海外のCMについても触れられていて興味深かったです。


🎵今月の一曲

♪If I Can’t Have You/Shawn Mendes

 5/6に23歳になった藤原恭大の偶数打席の登場曲。打席によって登場曲を変えるというプロ野球選手っぽいことをするようになった。


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