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月報:2023年11月

 阪神が日本一になりとうとう石坂浩二が1年に3回おめでとうコメントを出す男になってしまった11月。母校(甲子園、神宮大会)と贔屓が全部日本一ですよ。グランドスラム。ヘッダーは羽田空港のロコンジェット。


✅今月したこと

・おもバザ&文フリ東京

 3日におもしろ同人誌バザール@ベルサール神保町、11日に文フリ東京@TRCと2週連続即売会に行ってきた。おもバザは初めてだったけど文フリとかで私が好んで見に行くジャンルのオンリーイベントみたいで楽しかった。おもバザで見かけたサークルさんを文フリでも見かけたりした。まだどちらで買った本も半分くらいしか読んでいないので、全部読みたい。感想も書きたい。

おもバザ
文フリ

・生卵が一番おいしいと君が言ったから11月11日は犬神家記念日

 2022年11月11日金曜日、ポップコーンを買って帰ってアマプラでレンタルした犬神家を観た時からすべてが始まった。そして1周年のこのタイミングで公式が1週間限定無料公開を始めてしまい、もう持ってるから別にYouTubeで観なくてもいいのに観た。「初めて観たけど面白い」という感想であふれ返っていたので、やはり視聴のハードルを下げることは大事なんだと思いました。タイタニックも地上波でやった後「タイタニックってこんなに名作だったんだ……」という感想をよく見たので。無料公開は終わったけど私に声をかけてくれればいつでも観せて差し上げますのでよろしくお願いします。もれなく私がついてきます。

クソゲーレビューで挟むな

・アジアプロ野球チャンピオンシップ2023

 藤原くんが選出されたのでチケットを取って行ったらちょっとその日(オーストラリア戦)藤原くんがスタメンでバンバン打ちまくりお立ち台にも立ったので運命だと思った。ルーキーイヤーのキャンプ中、北谷での中日との練習試合を観に行ったらそれまでノーヒットだったのにいきなりプロ初ヒットどころか猛打賞だった時から「私が現地にいると藤原くんは打つ」と信じている。

2018年の高校野球ファンが夢に見た上位打線

 国際試合は初めてで(WBCは全然チケット取れなかった)試合前に国歌が流れたあたりでテンションが高まってきた。国を背負って戦っているんだみんな。一番震えたのは応援。ロッテのジャンプもカープのスクワットも外野スタンドみんながやってて応援ベストヒットメドレーみたいだったし、ライトスタンドもレフトスタンドも応援してるのが普段の試合では絶対見られない光景ですばらしかった。オーストラリアのセンターのファインプレーに客席全体が拍手してたのもよかったし、オーストラリアファンのところから始まったウエーブが客席を2周くらいしてたのもよかったし、帰り際にオーストラリアファンがなぜか警備員さんと2ショット撮ってたのが一番よかった。

 2試合分観られるチケットだったため、4時間のインターバルの後7時から始まった韓国VSチャイニーズ・タイペイも観た。両サイドずっと盛り上がっていてこれもよかった。翌日の決勝のために韓国の戦力分析とかしておけばよかったのに「めっちゃ打つなぁ~」ぐらいの感じで観てしまったが、私が何も考えてなくてもヤング侍は韓国を破って優勝したので偉い。

チャイニーズ・タイペイのホームランパフォーマンスがかわいかった

・千金

 詳しくは↓

📖今月読んだ本

・時間の習俗/松本清張

 久しぶりの清張。やっぱり清張の文体好き。クールで簡潔でしかし決して乾燥してはいない。そしてなんといってもあの「点と線」の三原&鳥飼コンビですよ。熱い。三原警部補のイケメンぶりに磨きがかかっている。飛行機を使った往復のあたりが「点と線」っぽい。容疑者は早々にただ一人だけ立ち現れ、最もアリバイが確かなように見えるそいつがどうやって殺人を犯し得たかという点だけに集中するソリッドさ。フーダニット要素ゼロ。証明にあたり最大の難関として三原警部補の前に立ちはだかるカメラのフィルムトリックはこれでもかというほど引っ張られますが、引っ張りに引っ張ってもまったく鮮やかさを失わない期待通りの真相でした。よっぽど自信があったからあんなに引っ張れたんだろうな。カッコイイ。

・教科書には載らないインターネットの歴史教科書/ばるぼら

 インターネット老人会を達かに超えてインターネット考古学会。たった30年ちょっとで考古学を思わせるほど深く展開したインターネットがすごい。インターネットの「私語り」の歴史に則って私語りすると私がインターネットを本格的に見始めたのはこの本が出た後の2008年頃で、2ちゃんの2000年頃の怖いCMスレばかり見ていたため、ここに載ってたサイト「ちゆ12歳」くらいしか知らなかった。ついでに「割れ」の語源を知ることができた。絶妙にいちいち語源を調べようという気にならないワード。この本が出た頃(2005年)から現在までのインターネットの発展も同じくらいの分量の本にできそうなので続き出してほしい。インタビューの中などにちょくちょく今の潮流を言い当てているものがあったので答え合わせ的な意味でも。

・敗社復活/川端秀一

 生花小売りで成長を続けていた企業「ハナ・プレンティ」の社長だった著者が会社の始まりから異変、そして倒産に至るまでの過程とすべてを失い死を考えるほど絶望していたどん底期とそこから花業界で再び会社(ローズネット)を興し復活の途上にある希望に満ちた現在までを語ったしくじり先生のような教訓とメッセージを伝えてくれる本……と言えば美しいけど、問題はこの本が出た後にそのローズネットも倒産していることです。この本が出版されたのが2010年2月、ローズネットが経営破綻したのが2010年11月。アマゾンレビューでも指摘されてたけど本出した時点でもう危なかったのではないか?出版してる(しかも自費出版)場合だったのか?

 それはさておき中身ですが、背任行為を働いた元高校時代の親友の専務に始まり父のように慕っていたのに会社が危なくなるとまるでヤ○ザのような行いに走った先輩、虚言癖がひどく自分を逆恨みしていろいろ嫌がらせしてきた父親まで自分を追いつめてきた人たちへの恨み言が4割くらいあります。一部仮名らしいけど関係者が読んだらすぐわかりそう。中でも倒産後に幼い息子を連れて出ていった二番目の妻(創業メンバーでもあった)には出産直後で孤独にさせてしまったせいもあると理解を示していて恨み言は口にしていないものの、あとがきで現在の妻と最初の妻(父に暴行されたことがきっかけで実家に帰った)には言及しているのに彼女のことは何も言っていないところに暗いものを感じてしまった。

 加えて途中に挿入された半生パートでは壮絶な生い立ちが語られ、(私は一体何を読まされているんだ……?)となりました。まあ……うん……ここに書かれてることが全部真実だったら大変な人生ですね。

・なぜ倒産 平成倒産史編/編・日経トップリーダー(再読)

 で、上のローズネットの倒産が取り上げられているのがこの本です。最悪の続編だ。上の本では一度目のハナ・プレンティ倒産は側近の裏切りのせいだったように書かれていますが、第三者の冷静な視点からそもそものビジネスモデルが成立していなかったと厳しく指摘されています。なんだか叙述トリックのミステリの解決篇を読んでるみたい。信頼できない語り手の記述の裏にあるものを暴いていくような。

ところが現実は違っていた。「産直もパケット流通も、店頭からの回収・加工も十分にできていなかった。約390カ所の花産地に契約農家があるとうたっていたが、どんな契約なのか曖昧で、結局、市場を通して仕入れる必要があった。ロス率もひどい時には50%を超えていた。その結果、多くは赤字店だった」。佐川氏は認めたがらないが、ハナ・プレンティが破綻した直後、元社員はそう証言している。

p221~222(文中では仮名になっている)

 さらに「敗社復活」するはずだったローズネットでも社長は同じ轍を踏んでしまいました。元社員の証言だという「しかし、集めたカネを元手に地道に会社の基礎固めをするかといえば、芸能人の結婚式に花を提供して名前を売るとか、雑誌に露出するとか目立とうとすることばかりで、本気で事業を成功させる気があるとは思えなかった」が印象的。ハナ・プレンティから何を学んだんだと言われても仕方がない。
 ちなみにこの川端社長、現在は徳島で「鳴門屋」というたこ焼き屋の社長をしてるそうです。さすがに花はもういいわってことなんでしょうか。三度目の正直目指してほしい。

・怪獣男爵/橫溝正史

 not金田一物の中でも人気を誇る一作。死刑になった希代の大犯罪者の脳をゴリラに移植して甦らせたというぶっとんだ設定が目を惹く。体がゴリラになっても爵位は継承されるんですね。トリックがどうとかストーリーテリングがどうとかいうより、小山田博士と少年たちの冒険やゴリラ男爵の悪辣さやその倒され方を楽しむ作品。そしてラストは思いっきり引きが入っている。

・孤島の鬼/江戸川乱步

 こちらも単体ファンブックがある(という噂だけ聞いた)くらい人気の高い作品。なんとなく人気がある理由はわかる気がしますが、私は蔵の中から出されたことのない結合双生児の手記が出てきたあたりで一気に引きこまれました。訛りなどは直しているという但し書きつきとはいえ、隠されていて教育を受けたことがない子が懸命に乏しい知識をもとに学力より発達した心の機微を描き出そうとしている様子がリアルな文章だった。あとTRICKの霊能力者バトルロイヤルを思い出しました。ついでになぜか勝手に秀ちゃんは男だと思っていたので女だとわかって勝手にびっくリした。勝手に叙述トリックを見出すな。しかし秀ちゃんと吉ちゃんが異性の双子だという点はまあヒントといえばヒントかもしれないので重要。

・なぜ倒産 令和・粉飾編 破綻18社に学ぶ失敗の法則/編・日経トップリーダー

 続編が出てたの知らなかった。白鳥エステあるかな~とちょっと期待したけど載ってなかった。社長が算数さえできていれば(そして自分のことを天才だと思っていなければ)あんなことにはならないから参考にならないか……。知ってる会社といえばサン宝石。懐かしい!カタログ見るの大好きだった!東京に旅行に行くたび原宿のファンシーポケット行ってたな。ちょうど私の中のサンホピークあたりの頃にほっぺちゃんが出始めて、私は買わなかったけどどんどんほっぺちゃんコーナーが拡大していくのを見て人気あるんだなあと思ってた。経営的にはそのほっぺちゃんがトラップになってしまったのか。確かに女子小中学生向けでECサイトはターゲットに合ってないよなあ。

・阪神タイガース1985-2003/中川右介

 阪神38年ぶりの日本一記念ということで。まず表紙にも引用されているこの一文がすごい。

阪神ファンは「暗黒の中世もルネサンスによって終わった」という世界史の知識を頼りに、「阪神暗黒時代もいつかは終わる」と、その時を待ち続けた。それは、奇跡を信仰する信徒の気分に似ていた。

p.10

 これが仮にロッテとかだったら「いや大袈裟すぎ(笑)」になるかもしれないけど、阪神だと不思議と納得できてしまう。そう思わせるほど歴史があり、人々の生活に根づき、一つの文化を形成した球団だということなんでしょう。

 1985年の日本一の翌年からの長い暗黒時代を見ていると、組織のガバナンスのところに問題の根っこがあったように思う。複数ある指示ライン、派開の思惑、ノムさんにも指摘された戦略の感じられないドラフト、これらは阪神が長い歴史を誇るからこそ生まれた問題なのだろうが、そういう点で老舗企業が苦境に陥るパターンのようにも見える。スポーツの本というよりビジネス書。読んでる時の気分が「なぜ倒産」と似ていた。倒産してないけど。そういえば1985年に監督は土台作りシーズンのつもりだったのに打線がなんか知らんけどバカスカ打ちまくって日本一になってしまい、戦力が変わっていくと1985年のような戦い方ができず沈んでいくあたりは「なぜ倒産」でもあった幸運なヒット商品が落とし穴になるパターンに近い。

 それにしても石坂さんはこんなキツい時代もずっと見続けてきたのかと思うと泣けてきた。偉すぎる。

・おほ英会話/メディアビーコン、おほしんたろう

 おほさんの1コママンガと英会話フレーズを組み合わせた学習本。汎用的なフレーズが収録されているので使えるし頭に入ってきやすい。例文がオチになっているのが最高。「自己紹介させてください」「何人家族ですか?」「最悪の気分です」あたりが好き。

・ヘンな矢印標識 君たちはどう進むか/山﨑賀功

 矢印標識こと「指定方向外通行禁止」の複雑なパターン、いわゆる異形矢印を集めている。私は異形でもなんでもない「右左折禁止」が一番好きですが、ぐにゃぐにゃも好きです。急旋回やモンスターみたいなタイプが好き。しかし事故を起こさず円滑に通行させるために標識や時間指定を組み合わせて複雑に発達しているのがすごい。こういうの誰が考えてるんだろう。標識を設置して交通をコントロールするシミュレーションゲームがあったら楽しそう。あと「0-24時」の標識ってたまに見るけどなんであるんだろう。指定なしとか終日とかだと問題あるのかな。

🎵今月の一曲

♪今夜はHearty Party/竹内まりや


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