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キングオブ架空警察官・室井慎次の話

[ShortNote:2020.2.11]

 世界一好きな俳優はギバちゃんこと柳葉敏郎さんなのですが、そのきっかけを作ったのは踊る大捜査線の室井さんです。そして警察官が好きになったきっかけも室井さんです。

 警察官といっても、鬼頭刑事のような現場のノンキャリではなく室井さんはキャリア組です。エリート警察官僚です。偉い人が好きなのもやっぱり室井さんがきっかけです。「警察官僚」という響きがいいですね。響きが好きな四字熟語トップ3に入ります。あとは「指名打者」とか「粉飾決算」とかも好きです。性癖通りのキャラクターを出力する装置があったとして、それに私の性癖を全て入力したら室井さんが出力されるのではないかと思うくらいジャストミートです。


推しポイント1:悪役からの味方

 まず、踊る大捜査線シリーズの始まりであるテレビシリーズ(1997年1月-3月)において、室井さんは初め「悪役」として登場します。「悪」とまではいかなくても、間違いなく主人公の青島くんのような所轄の面々とは対立する立場です。ショックで声が出なくなった被害者の娘(後に刑事になる雪乃さん)に対して声が出ないにもかかわらず強引に事情聴取を行うくらい冷たくて血も涙もありません。

 しかしながら運転手を務めた青島くんに対してきちんとお礼を言うなど「この人実はいい人なのでは?」というところを随所に滲ませてきます。そしてその期待は裏切られることなく、だんだん「所轄は本庁のコマ」から「所轄と本庁の風通しをよくして所轄が信じた通りに動けるようにしたい」という方向へシフトしていきます。こういう信念を持ったために苦境に立たされ、査問委員会にかけられ、2回も左遷されるというキャリアとしてはあるまじき問題児へと成長していくわけですが、室井さんのすごいところはいくら危険分子扱いされようとそれはそれとして出世していくところです。左遷された先の広島県警で本部長(県警トップ)まで上りつめて中央に戻ってくるし、上層部にすら言うことを聞かないというだけで葬り去ってしまうのは惜しいと思わせてしまうほど優秀なんですね。実力でねじ伏せるタイプの男です。


推しポイント2:ギャップ

 室井さんといえば不器用で実直で朴訥としていて、立ち回りがうまくなくて……というイメージであり、実際そのようなキャラクターですが、たまにそれだけじゃないところを見せてくれます。

 例えばドラマ第5話で、室井さんは青島くんとすみれさんが本庁の与り知らぬところでおとり捜査を決行しようとしているのを吐かせるために真下くんを尋問します。そもそも真下くんの口があまり堅くないというのもあるんですが、「君たちは一体何をしてるんだ」と問い詰める室井さんの威圧感が半端ではありません。33歳(当時)が出せるレベルではない。それでも頑張る真下くんに室井さんは攻め方を変えて「出世したいか?」と聞きます。ここで吐かなきゃ出世できない(かもしれない)ぞ、という含みがあって恐ろしいです。こういう官僚らしいしたたかさをあの秋田美人な室井さんがチラつかせてくるとたまりません。「流氷の天使」クリオネのエサの食べ方が怖い、みたいな類のギャップです。

 あと「若いのによく働くな、早死にするぞ」とからかってきた老刑事和久さんに「あなたはよく働かなかったんですか」とシニカルに返したり、皮肉も使いこなす頭の回転の速さも感じられます。

 もちろんかわいい方のギャップもきちんと備えています。官僚なのに大衆食堂に割引券をもらうくらい通いつめてたり、官僚なのに「……なんてな」と和久さんのマネをしてみんなを唖然とさせたり、官僚なのに誰もいないと床に寝っ転がったり。ギャップのデパートです。


推しポイントその3:キャラを守り抜くところ

 室井さんのありがたいところは堅物で真面目なキャラクターを15年間守り抜いたところです。とにかく室井さんについては本当はギャグだのコメディだのが大好物なギバちゃんの「我慢」の功績が大きいです。

 初期の頃、ずっと眉間にシワ寄せてなきゃいけないしそのせいで後頭部が痛いし笑えないし当時新婚だったので早く家に帰りたいし(これはたぶん関係ない)で早くも限界に達したギバちゃんが「殉職させてくれ」と直談判するほど追い詰められていたりしたのですが、第1話の放送を観た奥様の「カッコイイ」という一言でそれはあっさり撤回されました。室井さんの命が軽い。
 
 
しかし「殉職させてくれ」ってすごいセリフですね。ここ以外で聞くことない気がする。そんな時期を乗り越えて室井さんはひたすら所轄と本庁の板挟みに耐え、ギバちゃんはひたすら室井さんのキャラを維持することに耐え、双方の魅力に磨きがかかっていくわけです。前も言いましたが、アサリも人もストレスをかけられると美味しくなります。


 そういう感じでキングオブ架空警察官たる室井さんはこれからも室井さんとギバちゃんの織りなす血と汗と涙の結晶として燦然と輝き続けると思います。あと室井さんの衣装は秋田県大仙市刈和野(ギバちゃんの故郷)の「ギバちゃんの部屋」で見られますので、どなた様もぜひお誘い合わせの上行かれてみてはいかがでしょうかという宣伝で締めさせていただきます。

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