『いちばんすきな花』に見る、それぞれの生きづらさ

10月期ドラマ『いちばんすきな花』をご存知だろうか。
多部未華子、松下洸平を始めとした実力派人気俳優たちが織りなす、「ふたり」になれない人たちの物語だ。

脚本、生方美久。
昨年『silent』で一気に注目を集めた脚本家だ。
私が愛する脚本家坂元裕二を同様に尊敬しているとのことで、彼女の作る物語は非常に心に突き刺さる。

坂元裕二と生方美久の脚本に共通して感じる特徴は、言葉遊びの巧さと感情の表現の繊細さ。あとは台詞の間の取り方だろうか。
現代を舞台にし、時に社会を映し出す鏡のようなオリジナル脚本を書く貴重な脚本家だ。

まぁこれは私の個人的な独断と偏見と好みによる評価なので、話を戻す。

詳しいあらすじや物語は公式を参照してほしいのだが…

昔から2人組を作るのが苦手だった人
昔から2人組にさせてもらえなかった人
昔から1対1で人と向き合う事に怖さを感じている人
昔から1対1で向き合ってくれる人がいなかった人

子どもの頃から人間関係がうまくできなかったひとりたちが出会い、よにんになる。そこからそれぞれが自分自身と向き合っていく物語と言っていいだろう。

2人というのは難しい。あらゆる人数の中で2人というのは特殊で、2人である人たちは理由や意味が必要になる。
2人は1人より残酷。2人は1人いなくなった途端、独りになる。
元々1人だった時より、確実に孤独な独りになる。
2人は強いに決まっている。
1人の人間は、2人の人間がいないと生まれない。
逆に3人以上の複数人というのはひとりの集合体でしかない。個々の価値は間違いなく、2人の時が一番強い。

ドラマ いちばんすきな花

1話のこのモノローグで、ガツンと心を掴まれた。
登場人物はそれぞれ違うタイプの人間関係構築の難しさを抱えて生きているのだが、それをこんなにも的確に言語化して、台詞にして、ドラマになっている令和、すげー!と思った。
ちなみに私は2人組を作るのが苦手だった人だ。好きな人同士で2人組になってください、と言われたときの焦燥感と絶望感を知っている。

3話にて、よにんでいる椿の家の居心地の良さを「部室みたい」と表現した夜々。
各登場人物それぞれにわかる!と共感できる部分があるのだが、私は今回特に「部室みたいな場所」というものが羨ましく感じてしょうがなかった。

誰かいればラッキーだし、誰もいなくてもそれはそれでよし。
私にも「部室」がある時代があった。あの居心地の良さを、私はいまだに忘れられない。居場所だった。
でもそれは期間限定で、卒業したらそこは私たちの席ではなくなった。

大人になっても友達ができる、部室みたいな場所がある、今はそれがすごく羨ましいけど、きっと物語が進むにつれてそれらも変わっていくはず。
世間では、ふたりで生きていくこと、つまり結婚しパートナーと生きていくことが幸せの代表格とされている。
それでも、この物語はふたりにならなくても生きていける、ひとりとひとりのままでも生きていける、そんな道を描いてくれるのではないかと、淡い希望を抱きながら見ている。

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