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年末調整のやり直しを税務署から指示された場合②~そもそもどうして「やり直す」でなく「やり直せ」なのか?#0122/1000

税務署からの年末調整のやり直し指示(扶養是正)の2回めです。

そもそも、どうして税務署は「やり直せ」と指示をしてくるのでしょうか?

前回見たとおり、家族が税金の扶養の対象になるか、という判断はかなり複雑です。

家族に「収入」はいくらか確認したり、「同居」とはどういう条件を指すのか確認したり。

うっかりミスもありますが、そもそも当人がよく制度をわかっていないゆえのミス(?)も多くあります。

だったら、「やり直せ」ではなく「誤ってますよ、あなたの税金はこの額です」と計算して教えてくれればいいのではないか、と思う人もいそうです。

なのですが、扶養是正の対象となる所得税に関しては、これはNGなのです。

なぜなら、法律で「申告納税方式」であることが決められているからです。

国税通則法第16条にはこうあります。

第十六条 国税についての納付すべき税額の確定の手続については、次の各号に掲げるいずれかの方式によるものとし、これらの方式の内容は、当該各号に掲げるところによる。
一申告納税方式 納付すべき税額が納税者のする申告により確定することを原則とし、その申告がない場合又はその申告に係る税額の計算が国税に関する法律の規定に従つていなかつた場合その他当該税額が税務署長又は税関長の調査したところと異なる場合に限り、税務署長又は税関長の処分により確定する方式をいう。
 賦課課税方式 納付すべき税額がもつぱら税務署長又は税関長の処分により確定する方式をいう。
 国税(前条第三項各号に掲げるものを除く。)についての納付すべき税額の確定が前項各号に掲げる方式のうちいずれの方式によりされるかは、次に定めるところによる。
一納税義務が成立する場合において、納税者が、国税に関する法律の規定により、納付すべき税額を申告すべきものとされている国税 申告納税方式
 前号に掲げる国税以外の国税 賦課課税方式

第1項には、納める税金をいくらにするかの決め方には2種類あるよ、とあり、2種類、申告納税方式と賦課課税方式が紹介されています。

ですが、第2項では、「納税義務が成立する場合」で、「納税者が、国税に関する法律の規定により、納付すべき税額を申告すべきものとされている国税」は申告納税方式です、と明言されています。

「納付すべき税額を申告すべきもの」が申告納税方式、というのは鶏がさきか卵がさきか?のような感じで頭がぐるぐるしてしまいますね。

ですが、この決まりにより、所得税、法人税、相続税など、現在の国税のほとんどは申告納税方式となっています。

戦前は賦課課税制度が採られていましたが、昭和22年度の税制改正でこう決められたそうです。

これは、自分の所得の状況を最もよく知っている納税者が、自らの責任において申告し納付することから、民主的な制度といえます。
国税庁 点字広報誌「私たちの税金」


『教養としての「税法」入門』にもこうあります。

なぜ原則かというと、戦後の新憲法のもので「自分のことは自分で決める」という民主主義の考え方が推進されたのと、実際にすべてを税務署が行なうのは無理な話だからです。
『教養としての「税法」入門』

こうして「民主主義」が全面に押し出されているものの、実は、個人住民税のほうは賦課課税方式なのです。

『教養としての「税法」入門』には、国税庁職員の定員がピークの平成9年でも6万人弱で、今はそれより減少してきていることも示されています。

全国の市町村は1,724(2022年)。
一市町村の課税課の人数はデータが見つかりませんでしたが、平均して10人ほどいるとしたら、172,400人。

このくらいの体制があれば賦課課税方式でも行えるかもしれませんが、国税庁の規模では難しいでしょう。

なんだ、国税庁の都合か・・・・・・と思ってしまいそうですが、やはり、ある程度のマネーリテラシーは生きていく上で必須です。

税金はたしかにややこしい。

ですが、「申告納税方式」はその税金に向き合うきっかけをくれるという意味で良い制度なのかもしれません。

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