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給与のデジタル払いへの追い風? #0149/1000

PayPayやLINE Payなど資金移動業者が運営するデジタルマネーでの給与支払いは、法律でOKとならないと実現しませんが、現在難航しています。

主な理由のひとつは、資金移動業者(2022年6月30日時点で85社)の給与の取り扱いが安全ではない、という理由です。

全国の労働組合の母体である「連合」は、サイトでこう説明しています。

銀行は大事な資産を預かる機関として、突然倒産したりすることなどが無いよう、資産要件など、厳しい要件が定められていて、それを満たすことを審査して許可されたところだけが営業できるんだ。登録制の資金移動業は、登録要件を満たせば、営業することができるんだよ。

連合ホームページより

また、2021年の調査ですが、実際、労働者(転職希望社321人)へのアンケートでも、好感触を持っている人のほうが少ない結果でした。

このような世の中の流れをうけ、政府は当初成長戦略フォローアップ(令和2年7月17日閣議決定)で「デジタルマネーによる賃金支払い(資金移動業者への支払い)の解禁を2020年できるだけ早期に」と言っていましたが、だいぶトーンダウンしてきていました。

ですがこの5月、労働政策審議会労働条件分科会で議論が再開され、話題を呼びました。

https://www.mhlw.go.jp/content/11201250/000663599.pdf

分科会で使用された公正取引委員会の資料をみると、外部から積極的な意見を集めてじわじわ外堀から埋めようとしているかのような意図が見えるような気がします。

そんな状況の8月、日経朝刊に
「決済アプリ、来年にも銀行送金可能に 事業者の日銀口座が条件」
という記事が掲載されました。

これ自体は、資金移動業者から別の決済アプリや銀行に直接送金ができる、というニュースです。

ポイントは以下の通り。

・資金移動業者であるフィンテック企業は、今後、銀行間の送金システム「全国銀行データ通信システム(全銀システム)」に加盟することで、別の機関への送金が可能になる。
・現在、全銀システムの手数料は公正取引委員会が問題視するほど高く、フィンテック企業が接続するコスト負担が重い。
・全銀協はこの秋にも負担の軽い接続方法APIを新しく導入する予定で、そうすれば手数料は低くなる。
・全銀システムへの接続には、日本銀行に口座を開設することが条件。
よって、一定の担保を差し入れ、健全な財務状況やリスク管理も求められるため、債務不履行を予防できるため信頼性は増す。

その結果、資金移動業者の安全性が増すことで、給与支払いへの道も開かれるかもしれない、というわけです。

そもそも、給与は法律では「直接払い」(本人に直接手渡しする)が原則です。

銀行口座への振込も、本人の同意がなければ法律違反となります。

であれば、従業員が不安であれば、デジタル払いを選ばなければ済むことです。

また、会社側も、デジタル払いが可能になったとしても、運用フローがふたつに分かれるなど運用管理の点でデメリットが多く、採用するとは限りません。

どうするかは個々の組織や個人が選ぶもので、国がぎちぎちに規制するものではないのではないか、と個人的には思います。

国にもう少し緩んでもらい、選択の自由が増えるためにも、なにか問題が起きたとき、自分の選択を棚に上げて、国や自治体を責めるような挙動は、もっと少なくなるべきではないでしょうか。

自分でもくれぐれも気をつけたいと思います。

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