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この6月・7月から徴収される森林環境税、高すぎるんじゃないか問題 note798日目

今年の個人住民税は、大きな変更点が3つもあるのをご存じですか?

ひとつめは、もっとも知られている定額減税。
ふたつめは、税額通知のデータ化。
そしていちばん耳にしないのが、森林環境税がはじまることです。

森林環境税、はじめて知ったかたもいるかもしれません。

この税については、林野庁のホームページに詳しく載っています。


1.森林環境税とは?だれがいくら納める?

森林環境税の目的は、森林の保護は、地球温暖化の防止や水源を守るなど国民全員にとって重要なことなので、それにかかる費用を皆で負担しようというものです。

この森林環境税の実施が決まったのは、実は5、6年前のこと。

2015年に決まったパリ協定、2018に成立した森林経営管理法を踏まえ、森林保護の財源を安定的に確保するために、2019年に「森林環境税及び森林環境譲与税に関する法律」が成立し、2024年から税金として徴収されることが決まりました。

「皆で負担しよう」という「皆」が誰かというと、所得が低いなどの理由で住民税がかからない人を除く、「皆」です。

2016年の論文では、住民税がかからない、非課税世帯の人数は1,640万人ほどとされています。

子などの扶養されている人が約4,000万人、非課税の人とあわせて5,640万人に対して、住民税を納付する人約6,000万人が、この「皆」になるわけです。

扶養パタン分析による市町村民税非課税世帯率の計算

では、いくら納めるかというと、1000円です。
以下のように、「森林環境税及び森林環境譲与税に関する法律」第5条で定められています。

森林環境税及び森林環境譲与税に関する法律

結果、市区町村に納める内容は、金額最低ラインの「均等割」で、以下の通りになります。

住民税均等割:4,000円
 ※均等割:かなり低所得の人にもかかる、ゴミ出しや警察消防などインフ
  ラを利用するための町内会費のようなもの。
  内訳は、市区町村税3,000円、都道府県民税1,000円
森林環境税:1,000円
合計(年額):5,000円

この「均等割」は、前年の所得(稼いだ金額)が、単身世帯で45万円、扶養家族が1人いて101万円、というかなり低所得の人にかかる金額です。

森林環境税が、いくら「皆」といっても、そこまで低所得の世帯まで均一に1,000円も負担させるべきものだろうか、という疑問が浮かばないでしょうか。

これは、個人的には、行政の不誠実と怠慢なのではないかと思っています。

その理由を、以下に述べます。

2.森林環境税がはじまっても、私たちが払う金額は昨年と同じ?行政が不誠実で怠慢だと思う理由

実は、森林環境税がはじまる前の昨年までも、住民税均等割の人は、5,000円払っていました。

なぜかというと、2014年から2023年までは、東日本大震災の復興支援のために、プラスで1,000円徴収されていたからです。

目黒区のホームページの表をみれば、ひと目でわかります。

目黒区ホームページ
https://www.city.meguro.tokyo.jp/zeimu/kurashi/juuminzei/kaiseiten.html

つまり、私たちは「切れ目なく」同じ金額を徴収されるわけで、特に新しい税を徴収され始めたことに気が付かない人もいるはずです。

このことを、私が不誠実で怠慢だと思う理由は、ふたつです。

ひとつめは、この森林環境税は「国税」だということ。

税金には国が管理する「国税」と、都道府県・市区町村が管理する「地方税」があります。

国税は国税庁、地方税は総務省が基本管轄で、私たちは国税は税務署におさめ、地方税は市区町村におさめます(都道府県には市区町村から流れます)。

それなのに、この森林環境税は国税なのに、市区町村におさめるのです。

この森林環境税は、いったん国に納められたあと、私有林人工林面積などで按分され、それぞれの市区町村にふりわけられます。

いったん国に入るが、最終的には市町村のお財布になるから、市区町村に納付するんだ、というともっともらしく聞こえます。

ですが、東日本大震災の復興支援がそろそろ終わるから、そこに組み込んだら目立ちにくい、と考えた可能性もあります。

あまり世の中で騒がれないことを考えると、頭から否定できない考え方ではないでしょうか。

これが「不誠実」です。

ふたつめは、森林環境税が本当に1,000円もいるの?ということです。

森林環境税は、国民から徴収されるのは今年からですが、市区町村への交付は法律ができた2019年から、別のお財布より行われています。

この記事によれば、その国から配分されたお金を支出したのは7割にもいかず、「4年間の支出額がゼロだった東京の3区は全額を基金に積んでおり、その額は計3億5868万円に上る」という例も紹介されています。

予算の約3割以上が使われず積まれるだけなのに、住民税が均等割のみのような所得の低い世帯からも1,000円徴収する必要があるでしょうか?

そう考えると、森林保護のために必要なお金はいくらなのかをきちんと算出して税金にしたのではなく、新しい税金の存在を目出させないようにするため、東日本大震災の支援の金額に合わせたのではないか、との考えが浮かびます。

そうだとしたら、それは怠慢なのではないでしょうか。

さいごに

一度集められた森林環境税は、私有林人工林面積、林業就業者数、人口で再配分されます。

人口で配分されるため、人口の多い東京23区にも、森林がほとんどないにもかかわらず、かなりの額が配分されています。

やはりそれは違和感があるとなったようで、人口で按分される割合は、始まったことの30%から25%に縮小されるということです。

こういった見直しがきちんと行われつつ、集められた税金が、森林保護のために有効に使われているのか。必要以上の金額をむだに集めていないか。

そのあたりを私たちはきちんと見張っていく必要がありそうです。

この森林環境税は、市区町村に配分されるときには「森林環境税譲与税」と名前が変わり、その使途については、各自治体は公表を義務付けられています。

たとえば、台東区の例はこちら。

「市区町村名」+「森林環境税」で、使途が公表されているページが調べられます。

市民として、しっかり見守っていきましょう。

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