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苦しくなる企業の健康保険組合ふところ事情 #0212/1000

今朝の日本経済新聞に健康保険組合連合会の広告が載っていました。
フジ三太郎の思い詰めたような表情が印象的です。

「現役世代にさらに負担させるような改革は、もうゴメン」。

これがこの広告のコアメッセージだと思います。

では、具体的には何を伝えたいのでしょう?

1.健康保険組合とは?

そもそも、健康保険組合とはなんで、連合会とはどのような集まりでしょうか。

健康保険組合とは、主に大企業を中心に各企業が独自に運営している健康保険法にもとづく組織で、それが連合し、代表して政府と交渉したり、こういった意見広告を出したりするための組織が「連合会」です。

中小企業の健康保険は協会けんぽであることが多いですが、大企業は人数も多いため、人数比較としては協会けんぽ加入者が約4000万人なのに対して、組合健保は約2800万人と、それほどの差はないのが、協会けんぽの「事業年報概要」からわかります。

協会けんぽ「事業年報概要」令和2年

2.健康保険組合の運営はなぜ苦しいのか?

健康保険組合の運営が苦しいのは、加入者への治療のために払うお金がコロナ等で増えているのに加え、高齢者層への「仕送り」が高額だからです。

健保連の公表資料、「健康保険組合の令和3年度決算見込と今後の財政見通しについて」を見てみましょう。

令和3年が8年ぶりに大きく赤字になっているのは、見て明らかです。

健康保険組合連合会は、赤字の理由として、加入者への治療のために払うお金(保険給付費)の増加とともに、高齢者等拠出金が増加していることをあげています。

高齢者等拠出金とは、「後期高齢者医療制度」に出している補助のことです。

日本の健康保険制度は、以下のような構造になっています。

みれば明らかで、75歳以上の全員が加入する「後期高齢者医療制度」は、年齢的に働いている人は少なく、病院にかかる人は多い、という組織になっています。

では、その後期高齢者医療制度で必要とされる治療に必要なお金はどこから出ているかというと、税金と、現役世代からの仕送り、つまり、高齢者等拠出金なのです。

以下の図でわかる通り、税金についだ金額を出しています。

後期高齢者医療制度加入者が支払っている保険料や実際に病院にかかった人が払う窓口負担と比べても、かなりの高い割合です。

この図の「現役世代からの支援金」は、健康保険組合だけではなく、協会けんぽからの拠出金も含みます。

ですが、この、支援金をいくら出すかというのは、以前はその健康保険制度に加入する人数(上にあった表の加入者)の比率で決められていましたが、2017年からは、その加入者の収入の比率で決められています。

つまり、高所得者が多い組合健保のほうが、人数にくらべると、多くの支援金を出しているということです。

これが、「これ以上、現役世代に負担させてはいけない」という広告の裏にある事情です。

3.そのための対策

「これ以上、現役世代に負担させてはいけない」ことへ対策として、この10月からは、75歳以上の方で一定の所得がある人の窓口負担が1割から2割になりました。

今日の健康保険組合連合会の広告は、この制度改正への理解をもとめる目的もあったと思われます。

お金がかかるから病院にいかない、という人を増やしてはいけないが、運営のためには費用負担の話は避けざるを得ません。

この制度改正については、また触れたいと思います。

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