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当たり前は当たり前ではない、残業が拒否できるようになる?~労働基準関係法制研究会 第13回資料

厚生労働省の「労働基準関係法制研究会」では、これまでの慣習に疑問を持たずに受け入れてきた働き方について、新たな視点で見直す議論が行われています。

今回は、2024年9月11日の「労働基準関係法制研究会 第13回資料」から注目すべき議論を取り上げ、これからの働き方についてイメージしてみましょう。

1.残業は選択制にできるか?

現在、労働基準法では労働時間を「1日8時間、週40時間」と定めていますが、実際には多くの企業で「36協定」に基づき残業が行われています。

この協定は、労働組合または労働者の過半数代表者と締結され、残業の法的根拠を与えるものです。

しかし、この仕組みでは、労働組合に加入していない、または過半数に賛同していない労働者の意見が反映されないという問題があります。この点について、研究会では次のような提案がなされています。

「36協定に不同意の労働者には、労働基準法第32条で定められた通常の労働時間(1日8時間、週40時間)の上限を適用し、残業を強制しない仕組みを導入できないか」というものです。

今後、法定労働時間に係る上限規制については、特別条項に係る上限を原則的上限に近付けていくことが必要。・労使協定は法的には免罰効・強行性解除効を持つものであり、時間外労働をさせるには契約上の根拠を要するということになっているが、実際には就業規則で時間外労働をさせられるという規定があればそれが契約内容となる。
労働者個人の希望・意図が反映される余地がほとんどなく、時間外労働をする働き方が正社員としてのデフォルトになっている。働き方のニーズが多様化する中で、労働者個人の希望を反映するため、36協定の適用に不同意の者は、原則である第32条の上限の適用に戻るような仕組みは考えられないか。

これは、過半数が合意すれば全員に適用されるという現行の考え方に疑問を投げかけ、個々の労働者の意志を尊重する方向へと進めようとするものです。

裁量労働制など特殊な働き方には個人の同意が必要であるように、残業も同意制にすべきではないでしょうか?

2.管理監督者は2週間以上の休暇を取れる人?

日本マクドナルド事件をはじめ、「名ばかり管理職」で残業を過剰にさせられるケースは多くあります。

「名ばかり管理職」という言葉に代表されるように、実態として管理職であっても過剰な労働を強いられるケースは少なくありません。

管理監督者は役職名ではなく、実際の業務内容で判断されるべきですが、その「実態」は曖昧なことが多いのです。

今回の研究会では、管理監督者の基準として「特別の長期休暇を取れる人」を一つの条件とする案が出されました。

これにより、現場業務に縛られない、真の意味で管理業務に専念できる人が管理監督者として認められるべきだとする考え方です。

例えば、管理監督者に対して特別の長期休暇を取れるようにするとか、そのような処遇が可能になるくらいの時間的裁量を持っている人を管理監督者として認める要件にする等の方向性もある。管理監督者自身の健康確保やワーク・ライフ・バランスへの懸念だけではなく、現在では若い人が管理職になりたがらないという社会問題もある。管理監督者の規制・中身の見直しは必要。

いわゆる「管理監督者」は、日本マクドナルド事件をはじめ、パート・アルバイトが欠勤してあいた穴を埋めなければいけなかったりすることで、労働時間過多となるのが大きな問題のひとつです。

現場を穴埋めしなければいけないような、そういった自身の勤務時間の裁量がない人が、「管理監督者」だというのは、やはり違和感があります。

ですが、長期休暇、たとえば2週間以上の休暇がとれる人なれば、そういった穴埋め的な仕事をする人ではなく、現場の運用とは離れた、管理を専門にする人だと位置づけることが出来ます。

そこをひとつの「踏み絵」にして、管理監督者性を確認するというやり方は、なかなか理にかなっているのではないでしょうか。

最後に

「労働基準関係法制研究会」は、今後の働き方を政府に提言する場であり、結論を出すものではありません。
しかし、これまでの慣習にとらわれない視点から議論が進められている点に、今後の可能性を感じます。

私たちも、当たり前だと思って意識もしていない働き方を、見直してみませんか?

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