定額減税にむりやり納得してみる〜財源議論なし前借り式
2024年6月からの所得税が一定額まで徴収されなくなる「定額減税」。
いよいよ各税務署で説明会がはじまり、定額減税についての説明文書が各会社に送られるなど、待ったなしの状況になっています。
そろそろ取り掛からないと、と着手される会社も増えてくると思いますが、やればやるほど、「なんだこの面倒くさい仕組みは!!」といら立ってくるのではと思います。
今回の定額減税の仕組みでは、6月以降毎月の給与にかかる所得税を減らしていくのは、あくまで「仮計算」という立て付けです。
なぜ仮なのかというと、最後、年末調整で、それまでの月次でやっていたことをまるっと無視してこれまでの例年通りの年末調整をやり、年末時点の家族の状況で定額減税をやり直すからです。
年末調整が本番なら、年末調整だけでやればいいじゃないか!毎月給与計算で大変な思いしてやる意味あるの?!と思われるのも、もっともなこと。
しかも、年末調整で定額減税した結果、引ききれなかったぶんは市区町村からの給付金になるのです。
それなら、最初から給付金にすればいいじゃないか!
私も心から本当にそうだと思います。
なぜ、年末調整で1回でやるのではだめで、毎月の給与でやらなければいけないのか?
最終的に給付金になる人もいるなら、最初から全員給付金にすればいいのではないか?
そう思いますよね。
私もそうずっと思い続けながら、自社の定額減税システム対応をしていました。
今は、それにはどうしようもない理由があるんだなと思うようになりました。
その理由はふたつあります。
1.物価高のスピードに対抗
ひとつは、国が、一刻も早く国民に現金を渡したいと思っているからです。
定額減税については、国税庁の定額減税特設サイトを見ても制度の具体的な内容がメインになっており、その目的には触れられていませんが、そもそもは物価高対策でした。
物価高が続いているのは誰もが実感しているところですが、2024年(下のグラフの太い線)を見れば明らかです。
値上がり幅は2020年とくらべると6.9%、前年比で2.8%という高い水準です。
1年に約3%値上りしているということは、半年で1.5%。
定額減税を6月に行なわず、12月に行なうとなったら、その間にさらに1.5%物価があがってしまっているということ。
物価高のスピードに追いつかないまでも、なるべく早めにと国が思うのも、理解できないではありません。
2.財源がなくてもすぐできる
2つ目が、定額減税ならば給付金と違い、財源がなくてもすぐできるということ。
給付金にするには、その財源確保が必要です。
コロナ禍のときの給付金は緊急時ということで、新規国債発行を財源として行なわれました。
ですが、物価高やインフレは、コロナ禍のような全世界的な伝染病による緊急事態とは異なります。
また、子育て支援金の財源確保で、健康保険に財源を求め「筋違い」と言われているケースもあります。
お金を用意して配るということは、あらかじめ、何がしかの財源がいるわけです。
ですが、定額減税ではあれば、財源はなしでできます。
もちろん、これは収納されるべき未来の税金を減らすことなので、お金がふってわくわけではありません。
未来が苦しくなるだけです。
ですが、いますぐ行いたい現金給付を、財源なしにやろうと思ったら、このやり方はぴったりなわけです。
その代わり、会社が非常に大変な目には合うわけですが…
3.さいごに
物価高に苦しむ国民を一刻も早く助けるために、財源確保を後回しにできるやりかたで、現金をくばる。
そのためには、定額減税は最善ではないかもしれませんが、やむを得ない選択肢ではあるわけです。
そう思うようになったら、いら立ちが私は少し減って、とにかくきちんと運用しよう、と思えるようになりました。
ですが、注意すべき点もあります。
今回の定額減税で減った税収をカバーするために、国が新規国債の発行だったり、他で増税したりしようとしたら、皆でしっかりチェックしようということです。
何かをするために国債を増やす、と言われれば報道され広く知られるかもしれませんが、「これだけ収支がマイナスだから国債発行します」と言われると、毎年のことなので「またか」と見逃してしまう恐れがあります。
その収支マイナスの原因が、定額減税かもしれなくても、です。
天から降ってくるお金はありません。
私たちがお金をもらえるということは、どこかにしわ寄せがいっているはずです。
もらって喜んで終わり、ではなく、そのしわ寄せをきちんと確認していきましょう。
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