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働くお悩み、制度スタートから相談件数2.5倍〜じわり増える自己都合退職の相談と退職代行

「令和5年度個別労働紛争解決制度の施行状況」が厚生労働省から公表されました。

「個別労働関係紛争解決制度」とは、2001年10月にはじまった制度で、労働者と会社の間のトラブルを、裁判までにはせず、第三者を介在させてスピーディーに、かつ費用をかけず(利用は原則無料)に解決することを目的としたものです。

資料はこちらです。

https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/001275308.pdf

まずは、ここ10年の動きから。

相談件数は121万件ほど。
ここ10年は、だいたい100万件を超える相談が寄せられています。

これを制度のはじまったころから見ると、2008年あたりからぐっと増えていることがわかります。

2008年といえば、リーマンショック。
突然解雇されたり、減給されたりなどの労働相談が多かったことが反映しています。

ですが、相談件数の伸びに対して、実際に解決にむけての助言・指導を都道府県労働局に申し出をした件数は、増えてはいますが相談に対しての割合は低いことがわかります。

また、紛争当事者の間を調整して解決へ導く労働問題の専門家による「あっせん」を申請した件数は、逆に減ってきています。

相談されるわりに、その先の解決に進んでいるものが少ないというのが現状のようです。

たしかに相談があったとしても、労働者と労働者の間の紛争や、他の法律において紛争解決援助制度が設けられている紛争、労働組合と事業主との間で問題として取り上げられており、両者の間で自主的な解決を図るべく話し合いが進められている紛争などは、労働局の助言・指導の対象外になるため、その先に進められる件数が絞られるのはやむを得ない面もあります。

また、相談内容については、「いじめ・嫌がらせ」がここ10年でトップとなり続けています。

この相談内容についても制度ができたころから見てみましょう。

「いじめ・嫌がらせ」は、今でこそ主流を占めていますが、2002年から2009年ごろまでは、「解雇」がもっとも多かったことがわかります。

今では「解雇」は3番目ほどの多さとなっています。

注目すべき相談内容は、今年も、「いじめ・嫌がらせ」に続いて多い、「自己都合退職」です。

「自己都合退職」は、当初は少ない割合でしたが、2010年ごろから、解雇と入れ替わるように増えてきています。

では、「自己都合退職」のお悩み相談とは、具体的にどういうものがあるのでしょうか?

今年2024年度と、昨年2023年度の事例を見てみましょう。

どちらも、退職する意思を伝えたにもかかわらず、退職届を受け取ってもらえなかったり、有給休暇が取得できなかったりしているものです。

2024年事例
2023年事例

ここで思い浮かぶのが、「退職代行」というサービスです。

たとえば、「退職代行モームリ」。

この「退職代行」の件数増加を見ると、辞める、という意思を伝えたにもかかわらず、こんなふうにもめることになるのであれば、最初からお金で解決したい!と思う人が増えているのかもしれません。

なかには、こうした「個別労働紛争解決制度」という公的サービスがあるということを知らずに、こうした民間のサービスを利用している人もいることでしょう。

ですが、個別労働紛争解決制度という漢字がいっぱいのわかりにくい制度より、「モームリ」のほうがすっと共感できるのも事実。

できればもっと知られるようにして、うまく活用されるようにしていきたいものです。

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