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骨折入院⑪ 扇風機とおなら

「お盆過ぎたらもう秋」例年ならそのような会話が交わされる8月23日に、私は入院した。ところが今年は暑さ記録を次々に塗り替える、猛暑の夏だった。連日35℃前後が続き、冷房が効いているはずの院内にも大型扇風機が登場。

大型扇風機は廊下に数カ所設置され、ブンブン回っていた。その扇風機がどれほどの冷却効果があったのかはわからないが、寝ているだけの患者はとにかく、働く人達にとってはなくてはならないものだったと思う。

扇風機の効果は病室内には及ばない。病室は4人部屋で、入口から左右に2人ぶんのスペースが並び、それぞれカーテンで仕切られている。正面は腰高の窓が幅いっぱいに広がっている。したがって、窓際に2人、廊下側に2人の配置になる。

窓際は、日当たりが良くて明るいのが長所だが、暑くなるのが困りもの。廊下側は暗くて風通しが悪いのが難点である。

扇風機の効果はもう一つあって、多少の物音はモーター音がかき消してくれることだ。たとえば、これが一番ありがたかったのだが、「おなら」である。足を怪我しているので、好きな時間に気軽にトイレに行きにくい。ベッドでおならが許されるならとてもありがたいのだ。

臭いはカーテンで仕切られた自分のスペース内で収まるかと思われるが、音だけは隠しようがない。これが、扇風機の回っている時間ならば、なんの遠慮もなくできる。

音をかき消してくれる効果は、スマホの音声や体温計のピピっという音もかき消してくれる。病室ではイヤホンで音声を聞くことになっているが、イヤホンを持っていない私は、ときどきスマホを耳に近づけて音声を聞いていた。体温計はクラスターが発生してから、昼となく夜となく自発的に使用している。人に効かれて困る音ではないが、「あ、また気にしているな」と思われるのは何となく気が引ける。

雑音をかき消してくれる大型扇風機はありがたかったのだが、九月半ばにしてようやく北海道にも秋が訪れた。大型扇風機は停止している日が増え、ついに片づけられてしまった。そうなって初めて、プライベートな音声を消してくれる、扇風機のありがたさに気づいた。

そして、大型扇風機の功罪にはもう一つ重要なファクトがあった。もし、廊下で大型扇風機を回していなければ、クラスターは起こらなかったのではないかというものだ。

そうだと思う。それなら、クラスターの遠因はこの夏の猛暑ということになる。

コロナのクラスターはどうにか収束していくようである。

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