note

これほど素直な"大貫妙子"を初めて聴きました。
93年の「Shooting Star in the Blue Sky」以来、
2002年の本作までご無沙汰していた私です。

コバタケさんと組んでいた頃の作品はポップだったけど、
何か振り切れないもの、煮え切らないものも感じ、
私の求める"大貫妙子"の核が分からなくなってしまい、
音楽を聴かない時期も重なって、ご無沙汰となりました。
彼女の関心もフランス離れしているとどこかで読んだけど、
あの核はフランスでもヨーロピアンでもなかったみたいです。
今回のアルバムでつくづくそう思いました。

飾らない内面を表す素直な歌詞に少々驚いたけど、
それでも決して相手に襲いかかるようなマネをしない、
シンプルで少ない言葉の美学は貫かれています。
言葉以上に音が、素直さを感じさせるのかもしれません。
山弦の佐橋さん、小倉さんによるナチュラルな音に、
細野さん、小原礼さん、林立夫さんという同世代の仲間。
音と詞の関わりも親密に感じます。
今まで「ミュージシャン」という感覚だったのですが、
そういえばシンガーソングライターだったんだなーと・・・。
何かを乗り越えて楽になったような、自由な空気と呼吸。
80年代の少し突き放したような硬さのある歌に比べ、
ほんのりじんわりと歌心が前に出てきていて、
それが今の味わい深い歌へ繋がっているのかと思うと、
ちょっとウルっときました。

でも、どこか照れているようにも感じるのです。
いや、聴き手側の問題かもしれないな・・・。
それは長い間、あえて本音を言わない関係だった人が
訥々と本音を漏らしてくれた時に漂う空気みたいで、
くすぐったくて、でも嬉しくて、ゆるやかな時間でした。