奈江さんの歌を聴いたときのこと


細野晴臣の歌謡曲~20世紀BOX 

DISC1 1971-1979

01. ありがとう / 小坂忠
02. 終りの季節 / 斉藤任弘
03. 仁義なき戦い / かまやつひろし
04. ほうろう / 小坂忠
05. しらけちまうぜ / 小坂忠
06. 見えない世界 / 和田アキ子
07. バイ・バイ・ベイビー / 久保田麻琴
08. ヴィクトリアルの夜 / あがた森魚
09. ラムはお好き? / 吉田美奈子
10. ダンシング / いしだあゆみ
11. 私自身 / いしだあゆみ
12. ムーンライト / いしだあゆみ
13. バイバイジェット / いしだあゆみ
14. 夢色グライダー / やまがたすみこ
15. アイスクリーム・ショップ・ガール / 小坂忠
16. 資生堂「Fressy」 / 細野晴臣/MANA
17. 輝くスターリー・ナイト / 竹内まりや
18. The Last Letter / ブレッド&バター
19. サン・シェイド / クレスト・フォー・シンガーズ
20. 一緒に歩いて!! / 久保田麻琴と夕焼け楽団
21. Neuronian Network / 坂本龍一&カクトウギ・セッション
22. ユー・メイ・ドリーム / SHEENA & THE ROKKETS

DISC2 1979-1982

01. 月の光 / ラジ
02. チャイナ ローズ / 金井夕子
03. Idol Era / サンディー
04. Zoot Kook / サンディー
05. Ah! Soka / スーザン
06. Octopus Tree / ベンチャーズ
07. ハイスクール ララバイ / イモ欽トリオ
08. 走れウサギ / 金井夕子
09. プラトニック学園 / コズミック・インベンション
10. 赤道小町ドキッ / 山下久美子
11. 哲学しよう / 山田邦子
12. しあわせ音頭 / 柏原よしえ
13. TOKYOベイ・ブルース / スターボー
14. 不思議・少女 / 真鍋ちえみ
15. ねらわれた少女 / 真鍋ちえみ
16. ロマンチスト / 真鍋ちえみ
17. 蒼い柿 / 真鍋ちえみ
18. ナイトトレイン・美少女 / 真鍋ちえみ
19. 三国志の歌 / 小池玉緒

DISC3 1982-1984

01. 黄色いカーディガン / 松田聖子
02. ワイ・ワイ・ワイ / シーナ
03. Paradise Beach(ソフィーのテーマ) / 松原みき
04. わがままな片想い / 松田聖子
05. 天国のキッス / 松田聖子
06. ガラスの林檎 / 松田聖子
07. 紐育物語(New York Story) / 森進一
08. ルーム・キー / 森進一
09. ティーンエイジ・イーグルス / イモ欽トリオ
10. 月世界ナイト / スターボー
11. 禁区 / 中森明菜
12. 夢・恋・人 / 藤村美樹
13. 仏蘭西映画 / 藤村美樹
14. 春 mon amour / 藤村美樹
15. アブラカダブラ~天使と魔法 / 藤真利子
16. 危険な眠り / 藤真利子
17. Sticky Music / サンディー&サンセッツ
18. Walk Away / サンディー&サンセッツ
19. 風の谷のナウシカ / 安田成美

DISC4 1984-1986

01.ピンクのモーツァルト / 松田聖子
02.硝子のプリズム / 松田聖子
03.100℃バカンス / 中森明菜
04.銀色のハーモニカ / 安田成美
05.真空キッス / アポジー&ペリジー
06.月世界旅行 / アポジー&ペリジー
07.Sur La Tera / 安野とも子
08.タキシード・ムーンで夕食を / キララとウララ
09.夕べの祈り / 越美晴
10.日本人形 / 研ナオコ
11.昆虫記 / 高橋幸宏
12.銀河鉄道の夜 / 中原香織
13.月下美人/松本伊代
14.恋のファイヤーボーイ/キップ・レノン
15.Siam Paradise / 少女隊
16.紅い花、青い花 / 薬師丸ひろ子
17.透明なチューリップ / 薬師丸ひろ子

DISC5 1986-1994

01.パステルの雨 / 水谷麻里
02.コロ助まちをゆく / 山田恭子
03.キテレツ大百科 / 堀江美都子
04.連れてってファンタジェン / 小泉今日子
05.は・じ・め・て / 小泉今日子
06.サヨナラのあくる日 / つみきみほ
07.Sea Change / 高橋幸宏
08.蘭の園 / 秋山絵美
09.天使のゆびさき / 西村知美
10.木の葉は緑、空は青 / 西村知美
11.Sayonara / 八木さおり
12.心 / 八木さおり
13.日本の人 / HIS
14.ダンディ・ダンディ / ダーク・ダックス
15.青空挽歌 / 裕木奈江
16.いたずらがき / 裕木奈江
17.TENGOKU NO YORU/ミッキー・カーチス
18.住むなら世田谷区 / 小坂一也

DISC6 1994-2008

01.空気みたいに愛してる / 裕木奈江
02.宵待ち雪 / 裕木奈江
03.誰もいないXmas / 神崎ゆう子
04.Indian Heart / SHEENA & THE ROKKETS
05.ミラクルライト / 森高千里
06.Hey! 犬 / 森高千里
07.カリプソの娘 / 森高千里
08.七夕の夜、君に逢いたい / Chappie
09.ままごと / クミコ
10.ほうろう / 小坂忠
11.Hot Or Cold / 小坂忠
12.Oh, my love~ラジオから愛のうた~ / 坂本冬美
13.幸せハッピー / 坂本冬美
14.クッキーソング / クッキーモンスター
15.きみに会いたいな フィリップのテーマ / Tomomi
16.ぼくの気持ち バーディー・オープニング・テーマ / 黒川芽以
17.あいつの口笛 / 忌野清志郎
18.PUZZLE-RIDDLE / Lina Ohta
19.CASSIS ~Haruomi Hosono Special Mix Version~ / SoulJa
20.グッド グッド / 小泉今日子&細野晴臣

細野さん歌謡曲BOXですが、前半3枚で止めたのは、
個人的に楽しみにしていた作品がDisc5-6に入っていて、
それらは腰を据えてじっくり聴きたかったからでもあり。
そう、以前にひろニクルさんに情報をいただいていた、
裕木奈江作品でございます。このBOXには、4曲収録。

「青空挽歌」
「いたずらがき」
「空気みたいに愛してる」
「宵待ち雪」

とはいえ、まずは気になる作品だけを特別扱いせずに、
他の作品と公平に聴こうと思ってたんですよ。
せっかくのBOX、並び順も大事にしたいじゃないですか。
ただ、GW中にじっくり聴く態勢を取れなかったので、
先にリッピングだけしちゃったんです。
そうすると、すごく簡単にできちゃうんですよね。
アーティスト指定というものが・・・。
アーティストリストの「裕木奈江」という4文字。
負けた、この誘惑には負けました。

さて、今回の収録曲のうち、私がトータルで一番好きなのは、
「いたずらがき」です。1曲リピートで何度も聴きました。
次に好きなのはサウンドと世界観が好きな「宵待ち雪」。
また、歌と曲と歌詞が好きなのは「青空挽歌」だけど、
一番”らしい”のは「空気みたいに愛してる」かな。
少々あざとい歌詞に大村さんのコンサバなアレンジ、
奈江節も強めでシングル用といった趣で・・・
実はブックレットで松本隆さんが語っているのですが、
「あざといくらいのほうが売れる」らしいんですね。
さすがに中毒性があって頭でグルグルします。
でも「いたずらがき」と「宵待ち雪」が特に好きなのは、
殆ど一人芝居として成立しそうな曲だからかもしれません。
考えてみたら私は女優歌手の歌がやたら好きだもんなー。
オペラだって演技しながら歌うわけだしね。

例のバッシングについても、少し感じたことがありました。
私はどちらかというと「女性はみんな演技する」派です。
もちろん男女ともに多かれ少なかれ演技はするのだけど、
女性の方が他者の視線に敏感だという意味で・・・。
ただ、女性の演技は媚とは限らず、好きな洋服を着るのと同じで、
どの程度飾るか、どんな風に飾るか等のパラメータの組み合わせで、
単に自己実現の要素の1つにキャラクター造形があるだけなので、
お互いにそれを個性や美学として楽しめばいいと思ってます。
むしろ彼女は、人の心を掴む独特の魅力を持っている上に、
多くの女性が持っている同調気質をあまり持ってなかった事で、
警戒されたという方が正しいんじゃないでしょうか。
周囲と無難にやりすごす事に価値を感じていない様子は、
特に日本においては脅威に感じられたりするものなので。

それと・・・ここからはまた非常に私臭くなるんですが、
「少女の情念」みたいなものって、あると思うんです。
未完で無自覚ゆえに情念と呼ぶには語弊があるけど、
あえて名前をつけるなら情念しか浮かばなくて・・・
断片的で詩的でサラサラしてて、自由で広がりがあって、
無垢も寂寞も残酷も全て飲み込むファンタジーの世界は、
時には大人の女の情念よりも危険な魔力があるけれど、
いずれ成長して社会性と折り合いを付けていくなかで、
そんな世界は否応無く押し殺されていくものです。
ところが、いまだ持て余している少女の情念の残り香が、
奈江さんには漂っているように見えました。
周囲の為に、自分の為に、自分たちが捨ててしまった物を、
他の誰かが持ち続けているのは狡いとか勝手だとか思う人や、
持ち続けている物とその勇気を妬ましく感じる人にとって、
彼女の存在は時として、苛立ちの対象になったかもしれません。

私だって、たまたま好感や仲間意識に結びついただけで、
彼女の存在に目を引かれた事には変わりないのです。
あの懐かしい世界を大切に磨りガラスの箱に退避させ、
絶妙なタイミングで溢れ出させる感性の揺らぎの緊張に、
大きな魅力を感じ、また羨ましくも感じていたんだと、
彼女の歌を聴きながら思い出したのでした。

細野さんはブックレットで、奈江さんへの作品提供について、
「はっぴいえんど的な気持ちにさせられるシンガーだった」
と語っていて、二人のレコーディング写真も載っています。
宮沢賢治トリビュートの「星めぐりの歌」が気に入っていたので、
最初からイメージがあったとのこと。
また、松本隆さんも「隠れた名作になった」と語っています。
私も、GW明けからずーっとハマりっぱなしです。
今からでも、この布陣で作られた曲を歌ってくれると嬉しいな。



※追記

奈江さんの歌を初めて聴いたのは、
ドラマ「ウーマンドリーム」の「見上げてごらん夜の星を」でした。
偶然見た「北の国から」で注目していた女優さんの初主演ドラマ。
歌にも心を動かされて…。
「拗ねてごめん」の歌番組出演も見ていました。
ただ、ちゃんと聴いたのはこの時が初めてでした。
今でもこの4曲はよく聴いています。