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2024~2025 3歳クラシック血統分析(第2週)

2024シーズンの新馬戦2週目、そろそろ梅雨の季節に入ります。そうなると当然走破タイムでは馬の能力を把握することが難しくなります。

ただ新馬戦の時期は競走馬自身が未成熟なため、レースに摩擦がなく「ぬるい」展開になることが多いです。そのため(特に良馬場では)実際の能力以上のタイムで走ってしまうことが多くなります。

馬の能力を見抜くには馬場による紛れが多い走破タイムよりも1ハロンタイムです。そしてもちろん血統構成も重要です。

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◆6/8 函館 芝1000m新馬戦

・ヒデノブルースカイ(ナダル×ブロンシェダーム) 評価B+

新種牡馬ナダルの産駒。父は日本でも実績十分のKris S.系にSpecialの名牝系を持つBlameの子。配合にはこの部分を意識するのが一つのポイントとなるだろう。

名繁殖牝馬Specialの子Nureyevからの連続クロスを中心にして仕上げた配合。(Nureyev自身はクロスしていないが、父母のNorthern DancerとSpecialが両方クロスしているため、私は「連続クロスの起点」としてみなしている)

1000mでの勝ち上がりとなったが、祖母がG1馬スリープレスナイトであることの影響だろう。血統構成だけなら十分な内容。

上がり1ハロン:11.4秒
残400~200m:12.4秒
ラップ:34.2-34.8(前傾)

ナダル:今のところ短距離戦に実績が偏るが、先行だけでなく中断から差す競馬もできているように、Kris S.系の闘争心は強く受け継いでいる模様。あとは多頭数での気性のコントロールがどうか。

◆6/8 東京 芝1600m新馬戦
・コートアリシアン(サートゥルナーリア×コートシャルマン) 評価B+

こちらも新種牡馬サートゥルナーリアの産駒。祖父ロードカナロアはそれなりに闘争心はあるが、母父の影響を受けやすいのが特徴。

サートゥルナーリア産駒で今後問題になりそうなのが、サンデーサイレンスやキングカメハメハなど、今後近親クロスがどうしても強くなりそうなこと。この馬もその例に漏れずサンデーサイレンスやMr. Prospector、Nijinskyのクロスが5代内に重なって少々雑。

配合だけなら父母、母内ともに優秀な内容を示しているだけに、近親度が高いのが残念。少頭数戦では鋭い脚を見せるだろうが、上位クラスで人気になると苦しそう。ただし能力は高い。

上がり1ハロン:10.9秒
残400~200m:11.4秒
ラップ:37.1-33.3(超後傾)

サートゥルナーリア:ゴール前でひと頑張りする闘争心は父からきちんと受け継いでいた模様。問題はそれを多頭数戦で発揮できるかにある。徐々に母シーザリオの活力が落ちているのも事実で、エピファネイア産駒ほどの多頭数適性には欠ける可能性。

◆6/8 京都 芝1600m新馬戦

・サニーサルサ(マインドユアビスケッツ×チカアレグレ) 評価C

父マインドユアビスケッツは初年度からBCクラシック2着馬のデルマソトガケを出し、芝でもそこそこ走る馬を出してはいるが、父自身はDeputy Ministerの近親クロスを持つ馬で、茫洋さというかスケール感を産駒に与えるものの、鋭い切れ味などはない。

サニーサルサ自身は芝で勝ち上がったものの、それなりに速いペースを先行して一杯に押し切ったもので、走りの質としてはダート馬に近い。

配合としては父母共に見るべき点はなく、今回は相手関係と展開に恵まれての勝利。芝では今後苦しいだろう。

上がり1ハロン:11.9秒
残400~200m:12.6秒
ラップ:34.5-36.6(超前傾)

マインドユアビスケッツ:Deputy Minister系らしく明確なスピードがなく、すっと先行した時に「気が付けば粘っている」という走りを見せるのが特徴。闘争心は基本的にない。多頭数のレースを苦にすることはないが、後ろから他の馬を抜くことはない。

◆6/9 函館 芝1200m新馬戦

・エメラヴィ(オルフェーヴル×ショウナンワヒネ) 評価B

オルフェーヴル産駒は様々な馬がいてポイントが絞りにくいが、共通するのはステイゴールド譲りの闘争心の高さ。ダートや短距離でもそれなりに走る産駒を出し、しかも逃げ一辺倒ではなく直線で差す競馬ができるのが特徴。

ただしこの馬の配合においてはオルフェーヴルを生かした点が特に見られないのが残念。シンプルにNashuaを中心に構成した母の血を生かしたスピード馬で、これはこれでオルフェーヴル産駒らしい馬といえるだろう。

1200m戦だが後傾ラップで勝っているように、時計がかかるレースの方が向いている。開催後半のスプリント戦向きだろう。

上がり1ハロン:11.5秒
残400~200m:11.8秒
ラップ:35.0-34.7(フラット)

オルフェーヴル:闘争心の高さは現役種牡馬の中でもトップクラスで、前が崩れるレースに持ち込むか、人気のないレースで飛ばしていったときに粘りを見せるのが特徴。ただしコントロールが難しいので安定した走りができない。

◆6/9 東京 芝1800m新馬戦

・クロワデュノール(キタサンブラック×ライジングクロス) 評価B+

勝ちタイムが1分46秒7というのは大変に優秀だが、今の東京の馬場はかなり固めで、前半から飛ばしてもそこまでラップが落ちない。逆に言えば「特に鋭い脚を見せないまま押し切った」とも言える内容。上がり1ハロンは際立ったものでもない。

この馬の血統の長所は、父内ウインドインハーヘアの生かし方。特に母系のHighlightを実質的にクロス(すべての馬がクロス状態)させていることで特に強く打ち出している。シンプルな形態とはいえそれなりの質とは言えるだろう。

ただ母の血が薄味で、それ以上の何かがある配合ではない。

キタサンブラック産駒は芝での突出したスピードは持っているが、あくまでも誰にも邪魔されない展開でしか発揮されないのが難点。今回も厳しいレースを戦っていないので、上位クラスでの不安は残っている。

上がり1ハロン:11.1秒
残400~200m:11.5秒
ラップ:36.5-33.8(後傾)

キタサンブラック:外枠、少頭数、固い馬場と、とにかく「楽なレース展開」にならないとその能力を発揮できないのが最大の欠点。メンタルの弱さはどうしようもないレベル。だが長所を発揮できる場面になれば抜群の能力を見せるのも確か。諸刃の剣。

◆6/9 京都 芝1200m新馬戦

・ポートデラメール(ナダル×ジュベルアリ) 評価A

血統構成で言えば、第2週で最も優秀だったのがこの馬。

母ジュベルアリはアルアインやシャフリヤールのきょうだいにあたる馬で、Haloへの血の集中をシンプルかつ効果的に行った非常に優秀な配合馬。

だがこの馬自身はHaloの血をあまり生かさず、逆に母の中で眠っていたPulpitを存分に生かした構成に仕上げた。やや強めのクロスなのでスピードが勝った感があるが、下手するとスピード不足に陥る(アルアイン産駒が実際にそう)血統を見事に換骨奪胎したテクニカルな配合と言えるだろう。

短距離での勝利だが最後まで長く脚を使う内容は優秀で、もう少し長い距離でも面白いかもしれない。

上がり1ハロン:11.3秒
残400~200m:11.3秒
ラップ:37.5-33.8(超後傾)

ナダル:前述

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「競馬最強の法則」にて血統理論記事を短期連載しておりました。血統の世界は日々世代を変えてゆくものだけに、常に新しい視点で旧来のやり方にとらわれない発想をお伝えしたいと思います。