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2024~2025 3歳クラシック血統分析(第3週)

(有料noteですが、無料で最後まで読めます。内容が気に入った、応援したいという方のみご購入下さい)

6月開催も半ばを過ぎ、最初ほど速い走破タイムも出にくくなってきました。タイムは開催前半で早く、後半で遅くなるのは当然ですが、この後大きなレースがないので無理に路盤を直すこともなく、タイムの回復は見込めないでしょう。

有力馬関係者の心理として「とにかく早くデビューさせて勝ち上がり、クラシックに向けて十分な余裕を取りたい」と考えるのは当然で、最初の週に「これは」と見込んだ馬を仕上げてくるものです。

競馬初心者が「このタイムは速い! 強い!」と思わず声を出してしまうようなレースが6月前半に続くのはこのからくりにあります。決して馬の能力だけで速いタイムは出せません。

「有力馬のデビューと馬場状態の良いタイミングが偶然重なっただけ」

速い走破タイムの裏には必ず馬場状態ありです。そこをまず覚えましょう。


◆6/15 函館 芝1200m新馬戦

・ヴーレヴー(サトノクラウン×アルギュロス) 評価C

ダービー馬タスティエーラを出したサトノクラウンの産駒。父は2022年秋シーズンに次々と産駒が勝ち上が、そのままダービー馬まで出したものの、2024年クラシックではほとんどその名を聞くことなく終わり。

それなりに体力(ガソリン搭載量)がありそうな走りを見せるものの、もまれる展開になると今一つ脚を使えないという、キズナ産駒からスピードを落としたような産駒ばかりを出すのが原因で、今後ともタスティエーラを超える馬を出すのは難しいと思われる。

祖母がシルバーステートを出したシルヴァースカヤで、母の血統はそれなりに筋が通ってスピードもありそうなのだが、父母間の配合に特に妙味がないのが実情。この後は苦戦するか。

上がり1ハロン:11.5秒
残400~200m:11.7秒
ラップ:34.1-35.1(前傾)

サトノクラウン:東京コースをやたらと得意とするように「広くて邪魔をされないコースで」「忙しくないまったりとした展開で」走らせればそれなりにやれるのだが、要するにメンタルの強さがない。思ったよりは多頭数もこなすが、突き抜けるものがないのが弱点。

◆6/15 函館 ダ1000m新馬戦

・リリーフィールド(モズアスコット×ハイリリー) 評価B

安田記念とフェブラリーSの両方を制した父モズアスコットだが、日本ではややスピードとメンタル面で苦戦するFrankelにヘネシーの血を入れることで一本調子のスピードと多頭数向けの闘争心を付与した巧みな配合だった。

初めての勝ち上がりはダート戦となったが、逃げて圧勝した内容は見事と言えるものの、この走りだけではまだ父のなんたるかを語るのは難しそう。ダート1000m戦で逃げてもまれない展開になれば闘争心は問われないからだ。

配合は母のシンプルさを生かしたものだが、父母間では特に見るべき要素はないと言える。別の配合を見たい。

上がり1ハロン:11.9秒
残400~200m:12.0秒
ラップ:35.0-35.7(前傾)

モズアスコット:Frankelのイメージとして鋭い脚を使うマイラーというのがあるだろうが、Galileo系の本質であるスケール感(体力)で走る馬ということは変わらない。モズアスコット自身はほぼヘネシー系と考えてよく、気性の強さは備えているだろう。

◆6/15 東京 芝1600m新馬戦

・ショウナンマクベス(リオンディーズ×ウインフロレゾン) 評価A

テーオーロイヤルが天皇賞春を制し、ステイヤー種牡馬とも取られかねない実績を残したリオンディーズだが、他の産駒を見る限りは基本はマイルがベストと考えて良さそう。

この馬は大荒れとなったレースを逃げ切って勝つという、一見弱い馬にありがちな勝ち方を見せたので最初は特に評価しなかったが、後半がそれなりに速い(開催が進んだので優秀とも言える)ラップの中、後ろから抜きにかかる馬を次々と競り潰した内容は魅力的で、人気よりは強いと言える。

配合も母父フジキセキの持つサンデーサイレンス×Le Fabuleuxを両方クロスさせた上に、フジキセキの牝系にあるMilan Millも押さえる非常に凝ったクロスの持ち主。少し近親度の高い配合だけにマイラーとなるだろうが、父を生かすという意味では悪くない。

上がり1ハロン:11.3秒
残400~200m:11.5秒
ラップ:36.8-34.2(後傾)

リオンディーズ:キングカメハメハ系らしく旺盛な闘争心を持つが、兄エピファネイアと比べれば少し気性のコントロールが難しいのがネック。そのため中山マイルなど外回しが利くコースで良さを見せるのが特徴。広いコースで鋭く差すのが得意。

◆6/15 東京 ダ1400m新馬戦

・クレーキング(ナダル×クインアマランサス) 評価A+

新種牡馬ナダル産駒がまたしても勝ち上がり。非常に良いスタートを切ることができたが、この要因となっているのがナダル自身の血統構造による配合のしやすさ。

母父にアメリカの主流血統であるPulpitを持っているが、現代の繁殖牝馬だとサンデーサイレンス系との交配、またダートでの資金回収を意識してA.P.Indy系の血が多く導入されているため、Pulpit部分にピンポイントにターゲットを絞り込んだ配合が作りやすい。

祖母ヒカルアマランサスは重賞勝ち馬だが、祖母が持つアメリカ系の血を父内と強く反応させてレベルの高い血統構成を作り出していることが分かる。当然ながら牝系も良い。

距離が伸びて良いという感じではないが、潰しあいになった時には強さを発揮するので上位でもやれるだろう。デビュー戦も闘争心むき出しで相手を潰す良い走りだった。

上がり1ハロン:12.5秒
残400~200m:12.7秒
ラップ:36.4-37.4(前傾)

ナダル:闘争心の高さは今までの産駒も見せていたが、それを多頭数でもまれる展開でコントロールするだけのメンタルも持ち合わせている模様。間違いなく2024年度でもトップクラスの新種牡馬だろう。

◆6/15 京都 ダ1200m新馬戦

・ハッピーマン(ダノンレジェンド×ベルミュール) 評価B+

ダノンレジェンド産駒は完全にダートに偏った戦績ながら、地方で確実に勝ち星を増やした後に中央でも上位で通用する馬を出せるようになった。中距離の重賞を勝てるのは立派の一言。

Holy Bullの父系ということで日本ではあまり馴染みがないが、この手の「日本で実績がない」馬の特徴は、速いペースを先行して体力で押し切る走りを見せることにある。消耗戦で「前がばてるのを待つ」のが真骨頂。逆に言えばそういう走りをするだけに芝はまったく合わない。

配合としてはダノンレジェンドの母系の流れ、つまりメジャーなアメリカ系血統をシンプルに生かしたもので、やはり完全ダート向きの馬と考えていいだろう。

良い差し切りを見せたが本質はあくまで先行粘りタイプなので、今後ともそういう走りをするならそれなりにやれるはず。軽い馬場は合う。

上がり1ハロン:12.5秒
残400~200m:12.4秒
ラップ:36.6-36.8(フラット)

ダノンレジェンド:異系の父らしく勝負弱い感じが漂うので、上位戦線に入ると単純なスピードで押し切れる産駒以外は苦しくなる。人気のない混戦での一発を狙うのがベストの種牡馬。下級条件では安定する。

◆6/16 函館 芝1200m新馬戦

・ニシノラヴァンダ(サトノアラジン×プルージャ) 評価B+

サトノアラジン産駒はオセアニアで大成功を収めつつある。

タヤスツヨシやモーリスもそうだったが、日本よりもオーストラリアで良績を残す種牡馬の共通点は「多頭数のごちゃついた競馬がダメ」「切れる脚がない」のが特徴。直線が短いコースや短距離で強引にレースをさせないとダメ。日本のクラシックへの適性はない。

とはいえこの馬の血統構成は良い。父の母マジックストームと母父Sidney's CandyがいずれもStorm Cat×Fappianoの配合で、ここを強く打ち出すことで短距離やダートにシフトしてはいるものの、はっきりした特徴を出すことに成功している。

少頭数向けの父サトノアラジンなのがネックだが、今回のように少頭数で先行する競馬なら良さを発揮できるはず。ポイントは頭数。

上がり1ハロン:11.6秒
残400~200m:11.9秒
ラップ:34.1-35.2(前傾)

サトノアラジン:ディープインパクト×Storm Catの配合は産駒にはあまり強い気性を伝えられないようで、どれだけ体力を伝えられるかで種牡馬としてのポテンシャルが決まる。残念ながらキズナやエイシンヒカリより体力がないタイプで、少頭数の短距離が限界になるタイプ。

◆6/16 東京 芝1400m新馬戦

・プリティディーヴァ(Kingman×Assurance) 評価A

Kingman産駒も今季2頭目の新馬戦勝ち上がり。シュネルマイスターが成功しているように日本でもマイル戦を中心に確固たる地位を築きつつあるのは間違いないが、鋭い切れ味には欠けるのがネック。

マイラーでも前半の速い前傾ラップを得意とする馬もいれば、この馬のように前半が速いとダメな後傾ラップ向きの馬もいる。中には前半が速くて後半も速い方がいいフラットラップ向きもいる。この馬は後傾ラップ向き。

血統は非常に良い。曾祖母Plaintiffにすべての血を集めるシンプルな構成が光り、母自身の血統構成も極めて優秀なものである。やはり鋭い切れ味を与えることはないが、父の産駒にしてはある程度距離延長もこなせそうな配合となっている。

上がり1ハロン:11.4秒
残400~200m:11.7秒
ラップ:35.7-34.5(後傾)

Kingman:切れるというよりふわっとしたスピードのあるInvincible Spirit系で、1200mだと短く1600mだと少し長いという中途半端な走りに陥るきらいがある。軽い馬場で広いコースであれば能力を全開できるが、走れるコースが決まってる感がある。

◆6/16 京都 芝1600m新馬戦

・トータルクラリティ(バゴ×ビットレート) 評価B+

お詫び:当初の判定ではA+としていましたが、母ビットレートの評価を見直したところ、強いアピール箇所が不足することが判明したために評価を割り引きます。

どうしても近親交配が強くなりがちなバゴ産駒においては余計なクロスが少ないシンプルな形態で、父の母Moonlight Boxに血を集中する良い形をとった。母系の内容が父の血統と相性が良く、そこを引き出しているのも好感が持てる。父母間の配合だけならば申し分なし。

京都の硬い馬場のせいではあろうが上がり1ハロンが11秒を切ったのは大変素晴らしい。レース内容は前に行った馬同士で決まって摩擦が少なかったのがネックになるが、それでも肉体的ポテンシャルが高くなければ出せるタイムではない。

母ビットレートは優秀な牝系ではあるが、自身の構成がやや劣るため評価も割引とした(24/6/23追記)。

上がり1ハロン:11.4秒
残400~200m:10.9秒
ラップ:37.6-33.9(超後傾)

バゴ:Blushing Groom系にしては旺盛な闘争心は影を潜め、むしろMachiavellianのまったりとした走りがメインとなった。逆に言えばだからこそクラシック路線でもそれなりに走るのだが。

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「競馬最強の法則」にて血統理論記事を短期連載しておりました。血統の世界は日々世代を変えてゆくものだけに、常に新しい視点で旧来のやり方にとらわれない発想をお伝えしたいと思います。