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2024~2025 3歳クラシック血統分析(第9週) 2024/07/27~07/28

(有料noteですが、無料で最後まで読めます。内容が気に入った、応援したいという方のみご購入下さい)

新潟開催が開幕しました。

例によって超高速コースなのは今年も変わらないので、くれぐれも走破タイムだけを見て「この馬は強い」と勘違いしないようにお願いします。走破タイムは馬の能力を表す指標にはなりますが、問題は「その能力を今後とも発揮できるか」です。

気性面に問題がある種牡馬の産駒であれば格下相手じゃないとその能力は発揮できません。血統構成が劣った馬も同じです。特に新潟デビュー馬は「タイムの速さで強さをごまかしてくる」ので要注意です。

ただし新潟デビューでも、リバティアイランドのように本当に速くて本当に強い馬もいます。どこで区別するかは「どれだけ後続を突き放せたか」「どれだけ瞬時に突き放せたか」にあります。そこに着目すると本当の強さが見えるはずです。

◆7/27 札幌 芝1500m新馬戦

・アルテヴェローチェ(モーリス×クルミネイト) 評価B+

札幌の短い直線で加速していったラップ、上がり2ハロンのタイムは洋芝を考えれば上々。早速「重賞候補」との声も上がっているが、先週勝ち上がったキングスコールと比較するとやや物足りないタイムでもあり、やや過大評価に思える。

ただし2着のヒシアマンと並ぶようにして4コーナー出口から後続を突き放した内容は優秀。父の産駒にありがちな「硬い馬場でダラダラと伸びて勝つ」ではなかったので、その基準では良い内容だったかもしれない。そこは評価。

だが血統内容はさほど評価できない。モーリス×ディープインパクトはそれ単体では良いクロスができず、サンデーサイレンスの近親クロスだけで無理やり早熟性を出すぐらいしかできない。近親交配の弊害こそ出ないだろうが、勝負は早いうちにしておくべき。

上がり1ハロン:11.5秒
残400~200m:11.6秒
ラップ:36.8-34.7(後傾)

モーリス:オーストラリアでの成功を考えれば日本での実績がやや物足りないが、使える脚の長さが短いので長い直線を差し切る芸当ができない上に、ごちゃついた競馬を苦手にするのが原因。意外にスムーズに脚を使えるので「前にいる馬が少ないときに」軽く抜け出すのは得意。爆発力には欠ける。

◆7/27 新潟 芝1400m新馬戦

・ジャスパーディビネ(Frosted×Reload) 評価B+

上がり2ハロン目のタイムは割と良いのだが、前後半がフラットに流れる極めて楽なレースだったことは間違いない。すんなりと前に行けたことが勝因で、今後に期待を持たせるような内容ではなかった。

ただし血統内容は面白い。祖父Pulpit内のPreachに全血クロス(後続の馬が全てクロスする状態)を作り出し、そこを主導とした内容。母もMr. Prospector主導なので傾向がぴったり合っている。1400m戦、または走りの質からしてダート戦に転向すればそれなりにやれるだろう。

上がり1ハロン:12.2秒
残400~200m:11.2秒
ラップ:35.0-35.2(フラット)

Frosted:アメリカで有力なTapit系だが、日本ではやたらと芝をこなす印象。ただし強い闘争心で前に行ってそのまま粘るスタイルで距離延長を不得手とするので、どちらかと言えば走りはダート質。硬すぎる馬場じゃなければ芝は本来厳しい。

◆7/27 新潟 ダ1200m新馬戦

・エコロアゼル(Shancelot×Cicada's Song) 評価B

ダート短距離戦と言うことで特に将来性をうんぬんするレースではない。ラップも基本的には前傾だが、後半はまったりと流れて苦しい要素は皆無。

曾祖母Tango for Tipsに血を集めた母馬の血統構成は優秀だが、本馬は特に見るところはない。

上がり1ハロン:12.6秒
残400~200m:12.4秒
ラップ:35.0-37.7(前傾)

Shancelotd:シャンハイボビーの産駒。マンダリンヒーローが海外レースでもいいところを見せたが、その後に成長する要素が見られない。おそらく早熟タイプのスプリンター血統だろう。初期の闘争心頼りで多頭数適性も微妙。

◆7/27 新潟 芝1800m未勝利戦

・エンブロイダリー(アドマイヤマーズ×ロッテンマイヤー) 評価A

ビワハイジの牝系にアドマイヤマーズを交配し、サンデーサイレンスを強く打ち出した形態。ただし父がHaloの近親クロスを使っていたので、下手にサンデーサイレンスをクロスさせるのは近親交配の弊害を出しりかねない。この馬はギリギリ弊害は免れている感。

デビュー戦がS評価のミリオンローズの2着で、その時点で能力に問題はない。今回も少頭数で負ける要素が皆無だったこともあり、圧勝は当然。

文句をつけるとすれば、抜け出すときの脚がやや遅い感じがあったこと(タイムは悪くないが)。鋭い爆発力を期待できる馬ではないので、上位ではジリ脚になるかも。レコードタイムなのは前半のペースがかなり速かったからであり、馬場のアシストがあったと見ておくべきだろう。

上がり1ハロン:11.7秒
残400~200m:11.0秒
ラップ:35.6-34.3(後傾)

アドマイヤマーズ:闘争心が豊富だったダイワメジャーの系統だが、近親度が非常に高い馬でどこまでそのメンタルが保持できているかが最大の鍵。おそらくは楽な相手に強いタイプになりそうで、格上げ戦では苦しむことになりそう。

◆7/28 札幌 芝1800m新馬戦

・ファイアンクランツ(ドゥラメンテ×カラフルブラッサム) 評価B+

驚異的な上がり1ハロンタイム。大雨が降って馬場が渋っていた日曜の札幌で11.1が出るとは思わなかった。新潟ならおそらく10.8ぐらいのタイムが出ているだろう。

この時点で能力の高さは疑う余地がないし、抜け出すときの加速も良かった。2着のロパシック以外はついてこられなかったのも納得。

だがこの馬の血統構成については「やりすぎ」の一言。アドマイヤグルーヴとハーツクライはいずれもサンデーサイレンス×トニービンの配合で相性はいいのだが、さすがにこれを2x2(便宜的にこう表記します)で組み合わせるのはまだ時期尚早。近親交配馬ならではの爆発的な能力をうまく受けてくれたが、それは長く続かない。3歳春までが勝負。

上がり1ハロン:11.1秒
残400~200m:11.8秒
ラップ:37.9-34.8(超後傾)

ドゥラメンテ:多頭数でもまれる展開に強く、一瞬見せる爆発的な脚もトップクラスという現代の最強種牡馬。闘争心とはまさにこの馬の産駒のためにある言葉。ただし弱点といえば長く脚を使わされる展開で、相手が弱くストレスが少ないレースになると他馬の後塵を拝することがある。だが本番では逆転する。

◆7/28 新潟 芝1800m新馬戦

・ディアナザール(ロードカナロア×ドナウブルー) 評価A+

新潟競馬場は直線が長くスパート開始地点が早いため、上がり1ハロンよりも2ハロン目を参照した方がいい。ちなみにリバティアイランドはここで10.2というとんでもないタイムを出している。

そう考えるとこの馬の11.2はやや平凡には見えるが、抜け出すときの一瞬の脚が魅力的で、馬場に助けられてタイムが出した馬よりも強く思えた。前日のエンブロイダリーよりかなり遅いタイムに思えるだろうが、前半のペースが全く違うので参考にならない。むしろこの馬の方が爆発力の分だけ強い内容。

血統はジェンティルドンナの近親、まったく問題はない。父母の組み合わせはやや闘争心に欠けるところがあるのでクラシック路線では厳しくなるだろうが、トライアルまでは十分に戦えるだけのものを持っている。上位でもそれなりにやれる。

上がり1ハロン:11.5秒
残400~200m:11.2秒
ラップ:37.4-33.9(超後傾)

ロードカナロア:距離を問わず強い馬を出している優秀な種牡馬だが、母父の影響をかなり受けるタイプ。闘争心はそれなりにあるし多頭数適性もあるのでG1路線でも通用するが、ドゥラメンテやエピファネイアと比較するとやや本番に弱い感じがある。ただしそれはトップクラスでの話。

◆7/28 新潟 芝1600m新馬戦

・プロクレイア(エピファネイア×プロクリス) 評価S

ごちゃついた展開の中を折り合いをつけ、最後は明らかに勝った雰囲気の馬を見事に差し切った強い内容。さすがはエピファネイア産駒という内容だった。

馬の強さを語るならば競り合っての強さを見るべきで、少頭数の楽なレースを馬場に助けられてレコードタイムを出したところで価値はない。

優秀な牝系を持ち、配合内容は自身、母ともに曾祖母のフサイチエアデールに血を集めた好内容。こうした配合からはスタミナのある馬が出るので、これは間違いなく上位で通用する馬だと言っていいだろう。距離が伸びても十分に戦えるはず。

上がり1ハロン:11.7秒
残400~200m:11.1秒
ラップ:37.0-33.8(超後傾)

エピファネイア:持続する末脚がないために上がりタイムでは他の種牡馬よりも見劣りするが、一瞬で爆発的な脚を使えること、もまれる展開でも脚を使えるメンタルの強さがあるため多頭数の格上げ戦に強い。そのため格下では取りこぼすし、勝ち上がり戦自体は平凡なこともある。

◆7/28 新潟 芝1400m未勝利戦

・アーリントンロウ(タワーオブロンドン×ユメノトキメキ) 評価B+

1400m戦にしては乱高下するラップで、途中でぐっと落ち込んでからの瞬発力勝負になった。そういうレースで勝てたことは父タワーオブロンドンが単調なスプリンターではないことの証明だろう。ただしレコードの出る1400mで強いということは、厳しい流れになった時に脆くなるということ。今後も少頭数のまったりした流れや開幕週を狙っていくべきだろう。レコードはそれほど強さの証明にならないタイプ。

血統構成は母ユメノトキメキの血が父との相性がよく、特定の強調点を持たないもののバランスの良い組み合わせとなっている。悪い配合ではないがやや茫洋とした感じなのも事実だが。

上がり1ハロン:12.0秒
残400~200m:11.2秒
ラップ:34.0-35.2(前傾)

タワーオブロンドン:短距離を中心に走る馬を出しているが、アメリカ系の単調なスプリンターではなく、むしろヨーロピアンな「スローからの伸び脚」を見せるタイプのスプリンター。よって開幕週の硬い芝や1400m戦などのゆったりした展開も合う。逆に言えば厳しく流れるスプリント向きではないか。

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「競馬最強の法則」にて血統理論記事を短期連載しておりました。血統の世界は日々世代を変えてゆくものだけに、常に新しい視点で旧来のやり方にとらわれない発想をお伝えしたいと思います。