字書きの挑戦状
ならざきむつろさんの「ものかきさんにちょうせんじょう」という企画があります。駄文書きの名にかけて、早速私も書いてみました。
『リケジョの夏(?)休み』
「教授、有った、有りましたよ!」
割烹着の袖で汗を拭った女性研究員は、隣で手に持った試験管をつまらなさそうに覗き込んでいたはずの教授に、思い切って声をかけた。
「何が有ったって? どれどれ――」
教授が女性研究員の前にある顕微鏡を覗き込むと、微細ガラス管の向こうで小型の幹細胞が蠢いている。
「お、刺激惹起性多能性獲得細胞だな」
「刺激ジャッキ! ――ってなあに?」
不思議そうに教授の顔を見つめる女性研究員を、彼は笑った。
「学会に出すとすれば、STAP細胞、かな」
「STAP細胞?! うそ?! やった!」
女性研究員の笑顔に、教授は眉を顰めながら肩をすくめた。彼女のノートには「やった(はぁと)」と書き込まれる。
「おいおい、まだ喜ぶなよ」
「私、ネイチャーに発表してくる!」
女性研究員がそう言って研究室から駆け去っていくのを見送った教授は、改めて手元の試験管を見つめる。
試験管に入っていたのは、何か別の細胞のようだった。
「さて、どうしたものか――これ、実はES細胞なんだよな」
教授は一人呟くと、首に巻いたタオルで額の汗を拭った。
「競馬最強の法則」にて血統理論記事を短期連載しておりました。血統の世界は日々世代を変えてゆくものだけに、常に新しい視点で旧来のやり方にとらわれない発想をお伝えしたいと思います。