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2024~2025 3歳クラシック血統分析(第4週)

お詫び:先週「A+」評価としたトータルクラリティですが、母の評価格下げに伴い「B+」と訂正させていただきます。

そろそろ梅雨時、馬場状態の悪いレースが増えてきました。こうなってくるとタイムだけで能力を測定することが難しくなるため、レース内容をきちんと吟味することが求められます。

強いレースだと言うためには、勝った馬が「レース中にどれだけの競り合いを制したか」「どれだけ相手を瞬時に突き放したか」が基準となります。単純な走破タイムでも着差でもありません。

タイムが遅くても多頭数でもまれて勝った馬は魅力があるし、どれだけ大差をつけても後ろの馬が勝手に下がっただけでは意味がありません。そのあたりをきちんと見極めましょう。

特に今はJRAの公式サイトで全レース無料でレース映像を見ることができます。つまり「最低でもこれぐらいはやらないとダメだよ」ということ。

パドックや調教などを見なくても、レース映像にはすべてが映っています。まずはそちらを重視しましょう。

◆6/22 函館 芝1200m新馬戦

・カルプスペルシュ(シュヴァルグラン×パロネラ) 評価B+

父シュヴァルグランは同じハーツクライ産駒のスワーヴリチャード成功の陰で今一つ目立たないことになっているが、一にも二にも「産駒に強い精神力を与えない」のが弱点。競って弱く楽をさせても伸びないのではどうしようもない。

ただしこの馬は祖母に名牝モシーンを入れ、字面をしっかりさせたことで優秀な父の母ハルーワスウィートを強調することに成功。Machiavellianの軽さを全面に打ち出しただけあって短距離戦でしっかり勝ち切れたのはラッキーだった。

だが1200m戦にしてはかなりの後傾ラップで、今後同じようなレースに恵まれる可能性は低い。

上がり1ハロン:11.5秒
残400~200m:11.0秒
ラップ:35.9-33.8(超後傾)

シュヴァルグラン:闘争心の高いハーツクライ産駒とは思えないぐらいに精神的に脆い。父の母ハルーワスウィートは確かに名牝だが、近親交配となりやすく産駒のメンタルには悪影響を与える。強い相手には走れず、かと言ってスピードも足りない。

◆6/22 東京 芝1800m新馬戦

・モンドデラモーレ(ワールドエース×ヒカルアモーレ) 評価B+

スローな流れから一気の加速で勝ち切るあたり、いかにもディープインパクト系らしい勝ちっぷり。キズナが代表格だが、邪魔されずにまっすぐ走らせてもらえれば強いのがこの系統の特徴。それゆえに上位クラスでは壁に当たることが多くなる。

アウトクロスでシンプルに仕上げた配合ではあるが、Haloへの血の集中、そこからの連続クロス(Hail to Reason、Turn-toと連続して父系をクロスさせること)ができており、構成としてはかなり強固。ワールドエース産駒にしてはレベルの高い配合で、新馬戦で勝ち切れたのもうなずける。

レベルが上がらずに頭数の少ない時点であれば、東京コースで力を発揮できそうな馬。

上がり1ハロン:11.2秒
残400~200m:11.2秒
ラップ:38.1-33.5(超後傾)

ワールドエース:母がドイツ系の重厚なタイプなのだが、産駒はなぜか体力のない短距離~中距離タイプばかり。メンタルもそれほど強くないので、現状では「シルバーステートの下位互換」という評価になってしまう。広いコースでは悪くないが。

◆6/22 東京 芝1400m新馬戦

・サトノカルナバル(キタサンブラック×リアリサトリス) 評価S

レース映像を見ればわかるが、坂を昇り切った時点で瞬間的にとんでもない脚を使って突き抜ける強い内容。もまれずに走れた、楽に外を通った(なお競馬において外を通るのは決して不利ではない)などとも言えるが、それでも平凡な能力で出来る芸当ではない。

配合はスタミナを感じさせるものではないが、父キタサンブラック内のオトメゴコロ、特にLyphardを生かして母の血の内容を回収していく構造となっており、父の良さを素直に出し切ったもの。母リアリサトリスはMarchettaからMonsoonへつながる昔からの名牝系というだけでなく、Nureyevの母である名牝Specialなどの近交で「繁殖牝馬としては」非常に優れた形態なのも見逃せない。

上がり1ハロンは11.6とタイムを落としたが、明らかに抑えているので気にすることはない。残2ハロンのタイムも実際には10秒台に近いはず。スピードに勝った配合という感で、距離が伸びて良くなるかは微妙。だが来年のNHKマイルを目指す上では現時点で最有力と考えてもいいだろう。

上がり1ハロン:11.6秒
残400~200m:11.1秒
ラップ:37.2-34.0(超後傾)

キタサンブラック:外枠、少頭数、固い馬場と、とにかく「楽なレース展開」にならないとその能力を発揮できないのが最大の欠点。メンタルの弱さはどうしようもないレベル。だが長所を発揮できる場面になれば抜群の能力を見せるのも確か。瞬発力の高さなら現役種牡馬でもトップクラス。だが諸刃の剣。

◆6/22 京都 芝1400m新馬戦

・ラプラーニュ(モーリス×フレジェール) 評価B

モーリス産駒はサンデーサイレンスのクロスがどうしても生じてしまう(例外はジャックドールぐらい)ので、他に不用意なクロスを入れずにシンプルに仕上げていく必要があるのだが、この馬はよりによってLyphardまで早い代に入れてしまった。ジェラルディーナが走ったとはいえ近親度が高すぎで、評価できる配合内容ではない。

母もまたロイヤルスキーの3x3などの近親度の高い配合であり、ここは一度クロスを薄めに仕上げないとならない。モーリスを付けるのはマイナス。

上がり1ハロン:11.2秒
残400~200m:11.5秒
ラップ:37.2-33.9(超後傾)

モーリス:オーストラリアでの成功を考えれば日本での実績がやや物足りないが、使える脚の長さが短いので長い直線を差し切る芸当ができない上に、ごちゃついた競馬を苦手にするのが原因。意外にスムーズに脚を使えるので「前にいる馬が少ないときに」軽く抜け出すのは得意。爆発力には欠ける。

◆6/23 函館 芝1200m新馬戦

・ヤンキーバローズ(エピファネイア×キャンディバローズ) 評価B+

超少頭数ともいえる5頭立てでは実力をうんぬんするのは難しいが、直線が短い函館のコーナー途中から一気に脚を使ってまくる内容だったのは悪くない。距離延長で良化する可能性を見せたのは大きい。

エピファネイア産駒の例に漏れずサンデーサイレンスのクロスが生じているが、4代内には余計なクロスを入れていないので近親交配のリスクは逃れている。父の母シーザリオを生かし、母同様にHaloに血を集める内容はレベルが高いとも言える。

上がり1ハロン:12.0秒
残400~200m:11.5秒
ラップ:35.1-34.7(フラット)

エピファネイア:持続する末脚がないために上がりタイムでは他の種牡馬よりも見劣りするが、一瞬で爆発的な脚を使えること、もまれる展開でも脚を使えるメンタルの強さがあるため多頭数の格上げ戦に強い。そのため格下では取りこぼすし、勝ち上がり戦自体は平凡なこともある。

◆6/23 東京 芝1600m新馬戦

・ジョリーレーヌ(モーリス×レッドレグナント) 評価A

少し湿った馬場を超スローペースで進み、レースは坂を昇り切った以降だけの実質400m戦。それを考えれば一瞬の爆発力で突き抜けた内容は魅力的だろう。上がり1ハロンもこの馬場で11秒を切るのは優秀、少なくとも馬個体としての能力は高そうだ。

南部杯を制したゴールドティアラの牝系で、本馬、母ともに牝系の血を十分に生かした内容は好感が持てるし、字面以上に距離は持ちそう。モーリス産駒にしては珍しくサンデーサイレンスをクロスさせていないのも面白く、配合が安直で中身に欠ける馬が多い父だが、この馬はちゃんと考えて配合したことがわかる。

上がりタイムと配合内容から評価はA。ただしモーリス産駒、格上げ戦で良くなることはない。

上がり1ハロン:10.9秒
残400~200m:11.4秒
ラップ:39.6-33.9(超後傾)

モーリス:前述

◆6/23 京都 芝1800m新馬戦

・エリキング(キズナ×ヤングスター) 評価A

10頭立てだったが2頭が消えて少頭数戦。こうなると強いのがキズナ産駒。前半はほとんど13秒台のラップとなる超スローの流れだが、そこから加速しながらのロングスパート合戦となり、この父ならではの長くいい脚を使える特性が生きた。

母がSadler's Wellsとデインヒルの組み合わせという「ヨーロピアンNorthern Dancer近交馬」で、イメージとしてはジャスティンミラノに近い。ただしSadler's Wellsに全体の血を集中させる配合形態なので、スパっと切れるという感じはない。

ヨーロッパの芝中距離戦線で強そうな配合で、日本ではジリ脚として出てくるだろう。もちろん上位でも通用するだけの配合内容だが、突き抜ける脚のなさが後々ネックになりそう。

上がり1ハロン:11.3秒
残400~200m:11.5秒
ラップ:38.9-34.3(超後傾)

キズナ:多頭数での安定感は抜群だが、上位クラスでは前の馬を抜こうとしない気性の弱さがネック。直線で邪魔をされなければ凄い差し脚を見せることもあるが、あくまで下級条件限定と言える。クラシック路線で勝つためには前が崩れる展開が必須。

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今週から2歳未勝利戦も開始されましたが、その中から1レースだけ取り上げます。

◆6/22 京都 芝1600m未勝利戦

・ショウナンザナドゥ(キズナ×ミスエーニョ) 評価B+

前走はダノンフェアレディとの「ぬるい争い」から僅かに遅れての2着。タイムは非常に速かったが、競り合いがまったくなくレース内容としては低いものだった。

今回はさすがに相手が弱すぎで、マイペースで楽に走って気が付けば後ろが誰もいなかったという感じ。やはり一度も競り合いがないので芝レースでは今後期待できない。とはいえ基礎能力だけは高いので、ある程度はやれる。ただしある程度。

配合内容はダノンフェアレディよりも上。今年の有力キズナ産駒に散見されたStorm Cat強調型で、アメリカ系の血を多く持った母も父にスピードを強化する上では面白い。ただし今回のラップが起伏のない平板なものだったことから考え、ダートのほうが本当の実力を発揮できるかもしれない。ダート戦に出てきたら要注目。

上がり1ハロン:11.9秒
残400~200m:11.4秒
ラップ:35.0-35.1(フラット)

キズナ:前述

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「競馬最強の法則」にて血統理論記事を短期連載しておりました。血統の世界は日々世代を変えてゆくものだけに、常に新しい視点で旧来のやり方にとらわれない発想をお伝えしたいと思います。