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自分の名前で勝負する
色々物議があった東京オリンピック。
批判されている反面、選手たちの声はパンデミック禍での競技や選手村生活を楽しむ様子がSNSで見られ、「どんな状況・環境でもやるべき事を見失わずに行動する事の大切さ」を伝えてくれました。
これは私たち一般人にとっても言える事だと思います。
「サッカーとは何か」を学んだ2年間
この2年間ラージョ・バジェカーノの下部組織に所属し、本当の意味で「サッカーとはどんなスポーツなのか」、「プロとはどういう事なのか」を学びました。
それを教えてくれたのは、そこで出会った若干12歳のサッカー少年たちです。
目をギラッギラにしサッカーと真剣に向き合う姿は、正真正銘の「プロサッカー選手」でした。
勝ちを求められ、その中で個人の結果が出なければ来シーズンこのチームに残れない。
子供でさえそれを理解し毎日がチャンスと崖っぷちの間の道を通っていて、そんな子供が大人になった時、その国のサッカーが弱いわけがない。
何より彼らは自分の立場を充分理解しています。
彼らの口から「スペイン代表になりたい」と聞いた事がありません。
もちろん理想ではあるでしょう。
でもこの国で代表になると言う事は、子供の時点で限られた人間だけのものになっているのです。
彼らが口にするのは「サッカーでお金を稼げる選手になる事」です。
スペインのサッカー界は特にお金がなく、これで生活している人は本当に1部や2部の選手だけ。
夢がないように聞こえますが、現実を知らずして夢を語る事はできません。
大人(スタッフ)達の戦い
「サッカーとは何か」、ここを理解し戦っているのは選手達だけではありません。
彼らを指導する立場にある私達も同じです。
選手達・チームがどんな成長を遂げるかは私達にかかっています。
正直昨シーズンのチーム環境はいいものではありませんでした。
コロナの影響による経費削減、感染症対策による設備の使用制限、これらは現場に対して大きな打撃になりました。
私の分野で話をすると、まずユース以下の下部組織は医療サービスがカットされ、選手個人が病院へ行くしかありませんでした。
スペインの医療制度の問題ですぐに専門医の診断を受けられない場合も少なくありませんでした。
リハビリに関してもジムや道具が使えず、監督や選手の自腹でチューブやテーピングを買ったり、私の力量と言われたらそれまでですが、体力を維持・向上させる方法が少なく復帰までの期間が長引いたり。
他のカテゴリーからのヘルプの声が続いた事もありました。
環境を言い訳にはしたくありません。
でも、効率良く仕事を進めていくためにはやはり環境の整備は不可欠です。
幸い私が一緒に仕事をしてきたスタッフは皆プロフェッショナルで柔軟な考えがあり、「どれだけ選手のためになる仕事ができるか」を一緒に考えてくれました。
「自分達は誰のために働くのか」
みんな口を揃えて「選手のために」です。
思いがけない話
「一緒に来てくれないか」
ルベンからの突然のスカウトです。
結論から話をすると、ラージョ・バジェカーノを退団し、2021/22シーズンからラージョ・アルコベンダスと言う街クラブへ移籍しました。
同じ「ラージョ」がついたチームですが、全く別のチームです。
このチームの新しいプロジェクトで、「下部組織全てを最高カテゴリーに昇格させプロを育てる」、そんなチームの下部組織のメソット担当になったルベン。
スタッフもほとんどを入れ替え、同じくラージョ・バジェカーノから3カテゴリーのスタッフが移籍しました。
街クラブと思えない規模のプロジェクトで、グランドは3面、ジムやプールも好きな時に使え、ドクターも施設にいます。
私に与えられた役割は、下部組織全体のコンディショニングのresponsable(責任者)です。
何よりルベンからの「自分の信頼できる仲間とチームを創りたい」、この言葉に対して返せる答えは「voy contigo(君と一緒に行くね)」だけです。
資金も含めて環境がよく、結果が出せなければ実力のせい。
だからこそやりがいのある挑戦です。
経歴に囚われない
肩書きだけ見ると、ラージョ・バジェカーノという今シーズン1部に所属したプロの下部組織を辞め、街クラブのチームに移籍するという事はステップダウンに思われがちです。
きっと「そんないい名前を捨てるなんて勿体ない」という意見もあるでしょう。
経歴だけを見るなら。
ルベンは、そして一緒に働いてきたスタッフ、これから新たに仲間に加わったスタッフは、決して私の事を今までの経歴や年齢、国籍や性別で判断しません。
きちんと「私」という人間、そして実力で判断してくれます。
ラージョ・バジェカーノに所属するまでは私も経歴にこだわっていました。
いつか日本で働きたいと思っているので、その時にどれだけ有名な組織に属してるかは一つ人材採用の要素になります。
もちろんラージョ・バジェカーノという名前から頂いた恩恵もあります。
だけど、その名前にしがみついて鼻を高くしたくない。
スペインでの年数も名のある経歴もついたと思う。
今度は私の実力を評価し、理解してくれるところで勝負したい。
何よりこの緊張感が好き。
オフシーズンは午前練と夕方練にカテゴリーが分かれていたり、オフが被らなかったりと毎日ベッドに倒れ込むような生活をしてきました。
それでも体調崩さず過ごせたのは、丈夫に産んでくれた両親と、実家を出るまでお腹いっぱい美味しいご飯を作ってくれてたおばあちゃん、いつも応援してくれる家族のおかげです。
残暑にもコロナにも負けず頑張りましょう。
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