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卒業論文編 〜サッカーの試合におけるハーフタイムの体冷却方法の違いが 後半の間欠性持久力に及ぼす影響について〜

初めての有料記事

今回の記事・卒業論文編と、この次に投稿する卒論まとめ編を有料記事として投稿します。

以前Twitterにあげたこの投稿。

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ありがたい事に、たくさんのリツイートといいねをいただきました。

そして興味を持っていただきました。

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なぜ有料なのかというと、「きちんと受け取っていただける方に情報を届けたい」と思ったからです。

学生時代に書いた卒業論文ですが、たくさんの方々のご協力の上で成り立ったものです。

それを簡単にばら撒きたくない、そんな思いからです。

ご理解いただければ幸いです。


※個人情報を守るために、場所や被験者等の名前を変えています。

I.緒言及び研究目的

 サッカーは前半45分・後半45分の計90分間、絶え間なく低~高強度の様々な運動を繰り返す競技である。競技力の高い選手の試合中の心拍数は毎分150~170拍で、180拍以上になることもあり、平均運動強度は75~80% 1)と言われ、常に高いパフォーマンス能力が必要とされる。
 2014FIFAワールドカップブラジル大会以降、日本サッカー協会はA代表監督にヴァヒド・ハリルホジッチ氏を任命し、次期ロシア大会に向けて強化を行っている。その中で注目されているのは、攻撃面での縦への素早い突破(スプリント)数の向上が必要であると明言していることである。この影響を受け、Jリーグでは特にフォワード陣のスプリント数の増加が見られている。
 運動を行う際、体内の複数の筋肉で筋収縮は活発になる。筋収縮にはATP(アデノシン三リン酸)の分解による化学的エネルギーが必要であり、ATPが分解される際には高エネ ルギーを利用し筋収縮が行われる。このエネルギー供給回路はATP-PCr系と言われている。 エネルギー供給回路は大きく分けてATP-PCr系の他に、ATPより回復が遅いが長い時間(45秒程)運動が行えるグリコーゲンを利用した乳酸系(解糖系)、さらに長時間(1分30秒以上)の運動が行える有酸素系の3つに分類される。その中でもATP-PCr系は最も早くATPを供給できるメカニズムであり、スプリントを行う際には、爆発的な筋力発揮が必要とされるためATP-PCr系が選択的に使われるとされている。ATPは30秒で約70%、3~5分でほぼ完全に回復すると言われているが、サッカー解体新書 1)によると、実際に筋収縮などの細胞に使われるエネルギーは40%程で、残りのエネルギーは熱として放出されている。これにより、ATPの急激な減少は体温を上昇させ、この体温上昇とそれに伴う発汗による水分量の減少が全身性疲労の原因となると考えられている。そのため、スプリントを多く行う現在の日本サッカーは、前半に蓄積された疲労が後半時にも残り、パフォーマンス低下がより現れやすくなっていると言える。前半に蓄積された疲労を15分間のハーフタイムで効率よく取り除くことは後半のパフォーマンスに大きな関係性があると考えられる。
 ハーフタイムの疲労回復には、マッサージやストレッチングなどが様々な方法があげられる。その中でもアイシングが疲労回復に好影響を与える先行研究はいくつか報告されている。室岡ら 2)は疲労回復効果をストレッチングと比較した研究を行い、アイシングによる筋疲労の回復効果があるという報告を行っている。また森川ら 3)は運動間に行う体冷却時間の研究を行い、10分間のアイシングによりパフォーマンスが向上したという見解を示している。さらに新田ら 4)の筋疲労に対する冷却効果の研究などにおいても、効果があることが報告されている。また、サッカーのハーフタイムに関連した研究では安松ら 5)の下腿冷却が後半のパフォーマンスを向上させたという効果や、後藤ら 6)の脇の下・股関節の 冷却が血中乳酸値の低下に効果があることが報告されている。一方で、局所冷却と全身冷却を同時間冷却した場合、パフォーマンスに及ぼす影響について比較検討した研究は行われていない。本研究では実際にスポーツ現場で利用できるアイスパックという簡易な方法 で全身冷却と下腿冷却を実施し、さらにコントロールとして何も行わない安静時を加えて、 パフォーマンスに及ぼす影響について比較し検証を行うこととした。パフォーマンス評価として、サッカーで必要とされているスプリント数を測定し、体冷却方法の違いがスプリント能力にどのような影響を及ぼすか明らかにすることを本研究の目的とする。

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