あなたは何ができますか?
突然ですが皆さん、グランドへ行く事が恐くなった事ってありますか?
表現や内容が目を背けたくなるものになると思いますが、「これが現実」と受け止めていただきたいです。
もしもの備えに向けて何度も講習会や勉強をしてきましたが、「こんな事教わらなかった」、「こういうところも配慮しなければいけない」など経験しないと分からなかった事を私目線で記事にします。
※あくまで私目線です。「もっとこうなんじゃないか」という意見がありましたら、コメント欄にお願い致します。
ある出来事
私は普段、ユースの練習が終わった後、育成選手達のケアやリハビリをチームのロッカールームで行っています。
今日も最後の選手が来て始めようと思った時に、
「医者はいない?男の子が倒れてる!」
外で待っていたその選手のお母さんがそう叫びました。
すぐにグランドに行くと倒れた男の子を回復体位にし、困惑しているコーチの姿がありました。
顔を見ると目が半開きで一点を見つめたまま動かなく、呼吸もしていませんでした。
救急車とAEDをお願いし、仰向けにし気道を確保すると今まで聞いた事のない呼吸音(死戦期呼吸)ですぐに心肺蘇生を周りにいた人達と行いました。
その場に看護師として働いている人がいたので、救急車が来るまで迅速に対応できたのではないかと思います。
結果的に男の子は無事に助かりました。
一次救命処置を見直そう
心肺蘇生法やそれを行う判断に関しては、日本赤十字社や厚生労働省が推奨しているものです。
特にスポーツ現場や教育現場に携わっている人は定期的に講習を受けているかと思います。
こちらは日本赤十字社のホームページにあったものです。
いざとなると頭が真っ白になってしまうのが当たり前。
印刷してラミレート加工して、救急バッグへ入れておくと安心かと思います。
実際経験して感じた「教科書」との違い
ここを1番共有したいです。
なぜなら、教科書や今まで受講した講習会で教わらなかった事だからです。
あくまで実体験を基になので全てのケースが同じだとは思いませんが、「こういうこともある」と頭に入れていただければと思います。
まず一次救命処置についてです。
先ほども述べたように、知識として理解していてかつ冷静であれば誰もが行えるものだと思います。
が、③の※にある「死戦期呼吸」、これは講習会等で参考される動画のようなものではありませんでした。
実際にはもっと濁音の混ざって背中が浮くような、恐怖を感じるような呼吸でした。
気道確保に関しても、すぐに顎を引いてしまうので、結構力を入れて頭部を固定した印象にあります。
人工呼吸中、傷病者が呼吸を吐くタイミングで痰や鼻水が出て来たのでこまめに拭き取りました。
AEDは写真のものと同じデザインだったと思います。
音声とともに今しなければいけない事の絵のランプが点滅するものでした。
周りの音でAEDの音声が聴き取りにくいですが、ランプが点滅するので視覚でも確認ができます。(日本では音声ガイドとショックボタンが点滅するものだと思います)
電気ショックは実際何人かが驚くほど身体が動きます。
「胸骨圧迫をする人」、「人工呼吸をする人」の他に「AEDを操作する人」の3役に分かれる事が好ましいと思います。
ここのAEDバッグにはAED本体とラミレート加工されたマニュアルが入っていました。
あったらいいのに、と思ったものは
☑︎服を着るためのハサミ
☑︎汗等で皮膚が濡れていた時のためのタオル
☑︎大人用のみでなく子供用パッド
皆さんも一度、近くにあるAEDの中身を確認してみてください。
ここからはスポーツ現場だからこそ必要だと思った事です。
男の子が倒れた当初、グランドは練習中でした。
たくさんの子供達がボールを追いかけている状況です。
現場監督者が支持した事は、「速やかに練習を中止して全員グランドから出る」事です。
練習を見に来ていた人達も含め、全員を施設内から出しました。
次にコーチ達に指示をし、救急車が通るための通路を確保するためグランド内の道具の片付けやグランドの入り口の柵を開ける事、その子の両親を呼ぶ事、状況を説明する事などなど…。
何より「この状況を数十人もの人達が見ていた」事も忘れてはいけません。
最近でもEURO2020でデンマーク代表のエリクセン選手が倒れました。
この時の選手達の行動が称賛されています。
傷病者本人や家族への配慮も忘れてはいけませんし、その後のその場にいたコーチや選手達のメンタルケアも大事だと思います。
目が半開きでぐったりして動かない状況や死戦期呼吸を目の当たりにしてショックを受けない人はいないと思います。
チームとしてその場のコントロールや関係者のケア、周りの目を遮るためのビニールシート等の用具は必要だと思います。
客観的に振り返ってみて
と、ここまで詳細を覚えていたのは、自分でも驚くほど冷静だったからです。
その男の子と初対面だったからこそ冷静だったんだろうなと思います。
機械的に動ける精神状態も必要でしたし、神経を研ぎ澄まして細部まで見ていました。
「そんな事思うなんて…」と思われてしまうと思いますが、「もし責任問題になったらどうしよう」と思った事も事実です。
日本は一次救命に関わった一般人は罰せられたり、今まで訴えられたりというケースはなく、一般人の一次救命処置での責任が問われる事はありません。
最悪のケースになった場合その出来事を一生背負っていく事になる思います。
でもやっぱり目の前で誰かが倒れていたら助けたいと思います。
その誰かと自分を守るためにももう一度知識を頭に入れ直して、周りの人達と共有しましょう。
「他人事ではない」とこの記事を読んだ方々に感じていただければと思います。
時間が経った今想う事
ここまではこの出来事の翌日に書いた事です。
忘れないようにばーーっと書きました。
そして時間がだった今、何よりもグランドへ向かう事が恐いです。
仕事が終わると「何もなくて良かった」と思います。
一生に一度あるかないかの出来事ですが、いつ起こるか分かりません。
「競技スポーツは命を削る」
この言葉通りだと思います。
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