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【議事録】2023年度第2回真山ゼミ 「お金は人を幸せにするか」

今回のゼミのテーマ

今回のゼミでは、「お金は人を幸せにするか」について賛否を明らかにして議論を始め、その後真山先生からコメントをいただき、質疑応答を続けました。以下の事前課題をゼミ生に課し、これを踏まえて議論をしました。

事前課題

「お金は人を幸せにするか」に賛成または反対の意見の根拠を集めてきてください。文章やスライドの形にまとめる必要はありません。ゼミの場で話していただきます。

議論の進め方

テーマの「お金は人を幸せにするか」に対し、はじめに、賛成または反対の立場を明らかにしていただいてから議論を行います。この段階では、中間の意見はなしとします。

一通り参加者から第一段階の意見を聞き終わった後に真山先生からコメントをいただき、その後は中間の意見も含め自由に議論を行いました。

【テーマ】お金は人を幸せにするか

(真山先生のコメント)
そもそも何故「お金は人を幸せにするか?」というテーマになったのか。前回ハゲタカの読書会をやった。50歳以上の人がwell-beingという言葉に今ハマっている。幸せをどう掴むか、という事に悩んでいる。社会的に幸福という言葉がトレンド。

「お金は人を幸せにするか」へのゼミ生の賛否

Aさん:反対。幸せとは自己実現、共同体への帰属によってもたらされる。お金はこの二つを決定づけるものではない。

Bさん:どちらかといえば反対。状況による。お金なんて存在しないところにいけば関係なくなる。お金は動機になる。何かをつくるのはお金じゃないところから出てくるのでは。但し、何かを生産する際にお金が必要となる側面はある(例:文章を書くためにPCが必要)。

Cさん:場合による。お金があることによって豊かになる一方、投資銀行などではお金を稼ぐことに貪欲になり過ぎ。お金の役割は、物の交換、価値の保存、価値の尺度がある。農耕社会では生産効率が悪かった。お金は社会を最適化する道具として幸福の実現には貢献したが……

Dさん:反対。金があれば幸福度が上がるというのは正しい。しかし羨望は幸福を下げる。物質的なものは得られるが、精神的なものは得られない。

Eさん:賛成。お金は手段。他の手段より幸福にさせやすい。持続可能でない目的のために身を亡ぼすのはゴール設定が間違っている。愛も買える。愛がなくてもお金があれば結婚が続く。

Fさん:賛成。お金の役割や精神的な幸福についての高尚な議論があったが、実際のところ人間は単純な生き物で、人間が幸せを感じる対象はある程度限られている。衣食住が満たされている、承認欲求が満たされるなど。人間は本能的なところで「幸せ」を感じるのでは。これはお金によってほとんど解決できる。現在の資本主義の社会構造の中では、お金を沢山稼ぐことによって承認欲求も満たされる筈。

Gさん:賛成。抽象的。お金があればあるほど幸せになるのか、人間のツールとして有益なのか、色々な段階があるが、中流階級としての視点からすると、幸せにすると思う。お金の使い方が大事。物に使えば幸せになれるが、これはいずれ慣れてしまう。しかし、経験(レジャー)に使えば幸せになれると本で読んだ。

Hさん:賛成。お金は最も普遍的かつ効率的な価値の代替手段。個人の幸福度をあげる効率性が最も高い手段。

Iさん:賛成。男性は結婚ができる確率と年収に相関関係がある。自分は好きな人と結婚して家庭を築きたい。お金がないと生活に余裕がなく、自分の好きなこともできない。

Jさん:人が幸せになるためにお金は必要。資本主義の社会なので、基本的なライフラインを保つにもお金が必要。最低限の衣食住が整っていないと余暇にも割けない。

(真山先生のコメント)
自分以外の人が考えていることを聞いて、想像する力を養ってほしい。人の発言,起きていることに対し、そうなら何が起きるか考えてほしい。また、正反対の人の意見を聞き、立場が変わることを想像する練習。聞く力が培われると、質問する力が身についてくる。「質問ある人」と言われて誰も手を上げないのは、何が分からないかが分かっていない可能性が高い。もちろん教える側が下手なわけだが、聞く力を養うことによって質問できるようになる。

常識を疑ってほしい。今回のテーマで言えば、「お金」に関するみんなの認識はほとんど一致しているが、「幸せ」に関する定義が違う。お金という手段によって得られる「幸せ」が何なのか、というところの定義が人によって違う。そこの定義から始めなくてはならない。
奨学金をもらって自分で学費を稼いでいる人にとっては「お金」=幸せ。お金とは「時間を稼ぐ」ということ。いまだに女性は大学に行かなくていい、という家は多い。お金の量を比べるのか、幸せとは何か、お金とは何かなど定義する必要があった。出されたテーマを自分なりに理解する前に、「これって罠(?)じゃないの」と考える。

お金の定義、幸せの定義「お金のために生きられるかどうか」。学生の今は生活に困らないという前提、卒業しこれから稼がなければならなくなる事を想像する「就職してお金を稼ぐか」「好きなことをやって稼げる職につけるか」という議論をしてみるか。就活する段になって向き合わなければいけない問題。小説家は最もお金から遠い職業。お金を稼いでやりたいことをするので間違ってない。東大生は結果的には高収入の職に就きたい。

Q. お金のために生きられるかどうか(お金を気にせずやりたいことを貫けるか?)

Dさん:将来的にNPOやNGOを立ち上げたい。そのためにはお金が必要。若いうちにお金を稼いでおかないといけないのでは。しかし、仕事の中でも、お金のために働くことは嫌で、公共的なことに関わりたい。

Bさん:お金が必要ならば、自分が働いて稼ぐ以外にも投資などで原資を得る方法はあるのでは。

Dさん:実際にどんな活動をしたいのかが明確には決まっていない。それを考える時間を確保するために決定を先送りしつつ、その時間でお金を稼いだら、何をやりたいかが固まった時に行動に移しやすいのでは。

Fさん:極論を言ってしまえば、研究さえできれば良い。生きていれば研究できる。(草を食べてでも)生きるだけのお金があればあとは不要。やりたくないことに時間を割きたくない。時間に価値を見出している。研究以外にもっとお金が稼げる仕事はいくらでもあると思うが、私はそうしたいとは思わない。

Dさん:お金があることで精神的な余裕が得られるかどうかが議論の核では。NPOをやるにしてもお金がないと精神的には余裕がない。社会的な豊かさも影響しているのでは。労働力との交換。

Eさん:「程度の差」認識の差がある。お金を稼ぐことによって変わるのか。衣食住と図書館を利用したい、ヒモになりたい。←これは逆にお金を気にしているのでは?

Fさん:音楽は一番お金が遠い。必要最低限があれば満足。やりたくないことに時間をかけたくない。余裕があれば社会に奉仕したい。もともと理系で、合理的すぎるのがつまらないと感じた。音楽、芸術は答えがない、役に立たないと言われているが、そこに社会をどう関連させるか。

Iさん:家庭教師は全く面白くないが、お金がもらえるからやっている。仕事以外で幸せになれればよい。

Eさん:一定の生活を望めるのがそもそも幸福。学振が取れなくても生活できるから言える、音楽もそう。未来を想像できず、やりたいことに飛びつくのはどうなのか。コスパが良い幸福はいくらでもある。そこそこ稼げて、楽しいものがあるはず。

Jさん:なんで自分はこれに時間を使っているのだろう、と思うことはある。お金のためだけに働くことはできない。

(真山先生のコメント)
一定の生活が保証されれば良いと言うが、そこにそもそもいくらかかっているのか。自分のやりたいことにお金がかかる。科研費の問題もある、研究で一番大変なのがお金を集めること。予算をとることが必要だが、これは稼ぐのが上手い方が良い。自分の目標がある人は、多少やりたくない仕事でもやれる。問題なのは、夢の方。
小説家になってものを訴えようと思った。貯金もなく、記者を辞める前に新書を大量に買って、バイトを始めつつ投稿も始めた。アルバイトだけではカツカツだった。フリーライターになった時には丁度バブルがはじけて大変だった。新聞記者のときの取材は驚きがあって良かったが、フリーライターで書く原稿は面白みがない。そこから割り切るようになったが、なんでも仕事を引き受けた。周りからやめたらと何度も言われたが、小説家になろうと思っていたので続けた。

お金は生きるために必要。結婚にも必要。よくあるのは一方が夢を追い、もう一方がお金を稼ぐというスタイルだが、これは夢を追っている方がいずれ稼がなければ終わる。普通の生活をするのはなかなか難しい。
夢と嫌な仕事と健康との戦いがはじまる。段々夢の実現に努力しなくなる。夢を追う構図に慣れてしまう。一生小説家になれないと思ったことはないのかと聞かれたが、自分は小説家になって何をしたいかを考えていた。何になりたいかではなく、何をしたいかというのが大事。
ダイヤモンド社でゴーストライターをしていたが、そこで小説家としてデビューするチャンスがきた。もともと2人で書くことを提案されたが、見ず知らずの他人と書くのはありえない。一巻しかやらない、もし当たったら1人でやる、という条件をつけた。これがダブルギアリングで、そこそこ売れた。その後書いたのがハゲタカ。生活の為に安定したお金を稼ぐのが大切。夢を実現してそこで燃え尽きてしまう人が多い。
やりたいものに対して人生、体力を犠牲にできるのか?ハゲタカのキャッチコピーは「金がある幸、不幸」となった。お金はないのも突然大量に得るのも不幸。やりたいことをやるときにお金はいる。お金はあればあるほど良い。20代は貧乏でも良いが、無我夢中でやりたいことをやってほしい。この間に人脈、我慢、お金の貯め方等を学べばよい。お金を稼げるようになると嫌な仕事が嫌な仕事じゃなくなる。幸せとは精神的充足度。現実は結局お金だが、人と比べるのではなく、自問自答する。お金を稼ぐと景色、人脈が変わる。何をして良いのか分からなければお金を稼ぐことは良い選択。

その後の質疑応答

(ゼミ生の質問)
幸せ、精神的充足度と社会貢献との関わりはどこにある?

(真山先生のコメント)
精神的充足度は自分だけでは測れない。人間は社会にある程度繋がって、認められたいという欲求が多かれ少なかれある。世の中を変えたいと思って小説家になる人間はなかなかいない。社会の充足度をあげようというのは重い。自己実現の手段として社会貢献、社会に認められるというのはある。

(ゼミ生の質問)
夢だと思っている人と現実だと思っている人の違いは?

(真山先生のコメント)
実現したいと思っている人は寝ても覚めてもどうやったら近づくかを考えているが、嫌なことがあったときにしか思い出さない人は夢を諦めるのも大切。去年よりも少し変わったかと考えられる人は実現できるのでは。小説家は自分で書いているので客観視が難しい。価値観を様々対立させないと小説はうまく回らない。

(ゼミ生の質問)
何になりたいかと何をしたいかの違いは?

(真山先生のコメント)
若い時は身を投じる経験があまりない。大抵はやってみたいと思ったことに飛び込んでみると意外と面白くない。面白いと思うものが見つからない若者が多いが、経験することが大切。

(ゼミ生の質問)
構造上の理不尽によって夢を実現できない場合があるが、それはどうか。

(真山先生のコメント)
世の中は不条理だが、これはあなたの視点からだから、と考えるしかない。理不尽だと思ってしまうとそこで思考が止まってしまう。なぜそのような結果になったのかを考えなければならない。結果ばかりを見てしまうが、その原因を考える。

(ゼミ生の質問)精神的充足度が幸せに必要なのは同意。友人で口癖が「分を知る」の人間がいる。精神的充足度というwordはずるい。求める生活水準を下げれば達成されてしまうのでは?

(真山先生のコメント)
若い時に九死に一生を得る様な経験をすれば、生きているだけでも幸せになる、このような原因があるなら「分を知る」のもわかるが……。自分よりすごい人が失敗をしているのを見ると、無理しなくなる。現状維持はうまく行かない。今日より良くしようとしなければイーブンにはならない。
結局幸せはきれいごと。縛られるほどお金が入ってくる。


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