ピアスちゃん
中学を卒業した娘が、「ピアスあけたい!ママ、どこであければいいの?」と。
「自分であけられるよ。ピアッサーとかであければいいじゃん。」
それが私の答え。
あけたければ、あければいいじゃん。シンプルなものだ。
「ただし、最初の頃はずっとつけていなくちゃいけないから、高校でなにかいわれるのがいやなら透明なものにするとか、目立たないのにしなくちゃいけないよ。」と付け加えた。
「まじで?え~どうしよ。怖い~。」
「じゃ、やめれば?」と私。
別に今どうしてもあけなくちゃいけないわけじゃない。
ただ、彼女の場合、父親がヒマラヤの山岳地帯出身で、父親本人も小さいころには耳に穴をあけられていたし、いとこたちも皆あいていた。去年山岳地帯にいったときには、祖母から耳飾りをプレゼントされたのだが、娘の耳に穴があいておらず、その機会を失ってしまっていた。周りの大人たちは「今からあけようか?」と太いはりを用意してくれたのだが、本人はびびってできなかったのだ。うんうん。私でもびびる。
「ママはどういうシチュエーションであけたの?どこであけたの?」
どうしてもピアスをあけたい彼女は、私の体験談を聞いて心の準備をするつもりらしい。
「え~?ママは、16歳のときオーストラリアの砂漠のど真ん中の街であけたよ。美容師さんがピアスをしてて、それがきれいだったからほめたの。そしたら、じゃああなたもあけたらいいじゃない!てなって、周りにいた大人もピアスをしたら素敵よ~っていうからその気になっちゃてね。すぐにピアッサーをもってきてくれたから、その場であけちゃったよ。」
「え?まじで? すぐ?その場で?」
「親に聞かなかったの?」とびっくりする娘。
「うん。だって、その時は私一人だったし、わ~じゃああけよ!って思ってあけちゃったよ。気持ちが決まっているときには、あれやこれや考えずにやっちゃうものじゃない?」と答える。
そうなのだ。人は心が決まっているときには浮かんでくる思いや考えはあまり障害にはならない。むしろ自分自身が決まっていることを無事遂行できるようにサポートする思いや考えが浮かんでくる。
もしやりたいことよりも先に恐怖やら戸惑いがあるならば、そちらをまずしっかり見ていくほうがよいのだ。それが今、優先させたいことなのだから。そして、それら恐怖やら戸惑いをしっかりと見ていくことで、優先順位が変わってくる。というか、先にでてきた思いは消滅していって、次のものが繰り上がっていくのだから。
娘は娘なりに理解して、一晩自分の思いを見つめたようで、次の朝
「やっぱりやるわ。だってワクワクするし、かわいいのつけてみたいって思うんだもん。」
と宣言する。その夜無事にピアッサーで両耳に穴があき、透明な抗菌プラスチックのピアスがおさまった。
やれやれ。
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