ピアスちゃん 2 先輩女子たちの体験談

娘がピアスをあけて数日後。

3週間は同じピアスをつけたまま消毒をしなさいといったにもかかわらず、娘の耳には届いていなかったようで、違うピアスがつけられていた。

「ねえ。ピアス替えちゃいけないっていわなかった?」と少し怒り気味にいうと

「でもちょっと変えたかったんだもん。前のは大きくて痛いし。」と娘。ちょうどその日は友人とお出かけしたのでかっこをつけたかったのだろう。

「ピアスの穴は傷なんだよ。だから、治癒の過程でそこに皮膚ができて穴が固定化されるんだから、変えちゃだめだよ。毎回傷がついちゃうでしょ?」と叱ると、しゅんとなる。

ちょうどその日は私の友人家族が遊びに来ており、私たちの会話をきいていた。彼女は

「私のときは、親に内緒で布団針であけたんだよね。」と一言。

「あのぶっとい針で、冷やしといてぶすーってあけたんだよ。」

追い打ちをかけるようにリアルな発言。私と娘は耳をおさえて、ヒーっとなる。

「痛くなかったの?」

「痛かったよ~。しかも同じ日に姉もあけていて、父に見つかってビンタされたのね。耳のとこ。それみてすでにもうジンジンしているところにあれやられたら、私死ぬってなって急いでとったよ~」と笑っている。

すごい。その瞬間の彼女のあわてぶりを想像して笑ってしまう。わかる!その思春期のあわてっぷり。瞬時の対応!!

だが、彼女はいつも思うのだが度胸がある。

私の周りには度胸と男気あふれた友人が多いのだが、彼女はその中でもトップランナーの一人だ。確実に。

「よく最初のピアスはこういうプラスチックみたいなのがいいってかいてあるんだけど、穴もすごい大きいし、痛いんだよね。だから、チタンのアレルギーフリーの細いのにかえてあげるよ。」

と彼女はいって、そのまますぐに家に帰ってもってきてくれた。

到着するやいなや、彼女はすっと前のピアスを娘からはずし、チタンの針の細いピアスに変えてくれた。

その間、数秒。

迷うこともなくすっと。

「ほんとだ。楽だ。痛くない!」

娘は楽になったのと、きらびやかな石が耳にきらっと光るのをみてニコニコ笑った。

この友人。

いつも自分を否定しているが、私は彼女の度胸に本当に感心している。自分の道をつかんでいく、というこの強さ。目標を決めたら達成していくという集中力。持続性。しかもなんていうか、飾り気はないが、ぶれない意志。まっすぐな行動力。これが彼女の土台となっていることにまだ本人が気づかない。このあり方こそ彼女の才能の一つだ。他の人にはないもの。

人助けとよべるような彼女の日常に起こるあれこれも、その彼女の集中力に基づいて行われる。パソコンの配線しかり、車のカギの閉じ込めで困っている人の対応しかり。

この混じりけない集中した意志そのものが、彼女への強い信頼につながるのだろう。なるほど、アパレルの分野で営業のトップになったのもこれがあるからだ。彼女は今やることのみに焦点をあてている。完全なる研ぎ澄まされた集中力で。

彼女が「できるよ」というと、息をのんでその瞬間が達成するのを見守ってしまう。

そして、今日娘のピアスは新しいものに変わった。より娘が満足するほうへと。



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