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生まれたての小鹿のように

●switchインタビュー 達人達(2018年6月2日放送)
https://www.nhk.jp/p/switch-int/ts/LX2PXXL3KL/episode/te/3P17R8LLRY/
のアンコール放送を見ました。

元宝塚歌劇団雪組トップスターで、現在は俳優の早霧せいなさんと、ユニークなマラソン解説で人気のスポーツ・ジャーナリストの増田明美さんの回でした。

宝塚のトップスターであり続けるために、すべてを舞台に注ぎ込む禁欲的な生活を自分に課していた早霧さん。

「ほかのエネルギーを使うんだったら、たとえば散歩に行くくらいなら、そのエネルギーをとっておいて舞台に使うほうが全然いいやと思っていた、そういう思考だった」
「だから無駄なエネルギーを使わない。むしろ温存して舞台で全部使いたい」

宝塚歌劇団を退団して、俳優として新しい活動を始めるうちに、心境に変化があったそうです。美しい花を眺めたり、(カロリーは昼間頭を使ったり舞台稽古に励んだりすることで消費されると信じて)美味しいものを食べたり、心地いいと感じる時間を大切にすることで見えてきたものがあるとおっしゃっていたのが印象的でした。

「いろんなものを見ている風景がものすごく新鮮」
「むしろそうやって五感を使っていろんなものを感じる方が、むしろ表現の世界に生きてくるんだなってことが分かってからは、なんでも興味があるものは見たいし、おいしいものは食べたいし、それ自体が本当に人生を豊かにする、そして表現につながるって信じて、そこも180度変わったかもしれないですね」

宝塚歌劇団のトップスターから俳優へ転身してからの心境の変化をそう語る早霧さんに、増田明美さんは「余生じゃない、生まれたて」と語りかけ、さらなる本音を引き出していきます。舞台関係者が早霧さんの「悪女」役を見てみたいとおっしゃってたわよ、と伝え、ぐっと早霧さんご本人のお人柄が伝わる対談にしていくコーディネート力はさすが。

「自分自身も未知数、やってみたらどうなるんだろう」
「こわい臆病もうこれ以上活動はしないって思って、もしかしてやらなかった自分とはまったく違う人生を歩めるだろうなって今は思う」

まっすぐな言葉がストンとテレビを見る私にも響きます。結婚に関しても、素敵なことをおっしゃっていました。

「人生一度きりだから、いろんな経験をした方が豊かになる。結婚する幸せも感じてみたいって、すごく思う」

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私たちはつい「これを我慢するから、~がうまくいきますように」と変な願掛けをしたり、「今は楽しんでいる場合じゃない、そんなことに時間を使っていたらダメだ」と禁欲的になりがちです。学校教育の影響でしょうか?

All or nothing
全てか無か

これは欲望を混同していることにあると思います。
欲は、自分を本質的に満たし楽しませるもの
欲望は、本当に自分に必要かどうかを選別することなく貪るもの

欲は生きる意欲につながり、探し求める過程そのもので人生を豊かにする。欲望はひとまず空白を埋めることはできるが、本当に欲しいものに向き合っていくことから離れてしまう。

環境がガラッと変わるときには、大きく揺さぶられます。何が本質的に自分の欲しいものなのか、ひとつひとつ味わい選びとっていく時期でもあります。

・(うまくいってもいかなくても)以前の自分とは違う人生を歩める

また、親の離婚など身近な暗いひな形を反芻してやめておこう、と安易に自分を押さえつけるのではなく、

早霧さんのようにシンプルに「誰かと親密になりたい」欲を肯定して、自分で育ててあげることも大切なことじゃないかと思います。

自分のニーズをくんで、育てる。
ひとつひとつは小さくても、自分に「心地いい」欲を許していくことで、自分にとっての「幸せ」を見つけることができたらいいですね。





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