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独断と偏見インド映画紹介(3)

 独断と偏見インド映画紹介第3弾です。

 今回は、「史実を基にした作品」5本をご紹介いたします。

史実を基にした作品(5作品)

 1800年代から現代まで幅広く史実を基にした映画を紹介。史実を基にはしているが、ドキュメンタリーではないので夫々改変などはある。特に現代に近づくと題材にした人物や周辺の人間が存命なので、なかなかストレートに全くの真実を描くことは難しいだろう。また、時代がさかのぼればさかのぼるほど事実が伝わっていないこともあるだろう。そこを補い改変するのは、映画としてそれでいいのだと思う。

★マニカルニカ ジャーンシーの女王

 インド大反乱(昔、日本ではセポイの乱と言われた、イギリスの植民地支配に反対する民族的抵抗活動)の指導者のひとり、インドのジャンヌ・ダルクとも称される伝説的な英雄ラクシュミー・バーイーを描いた作品。バーフバリの脚本家K・V・ヴィジャエーンドラ・プラサードによる脚本。ヒンディー語映画。

 ヴァラナシで僧侶の娘として生まれ、宰相の養女として育てられたマニカルニカは武術や乗馬が得意な賢く美しい女性に成長した。そんな彼女はジャーンシー藩王国の藩王ガンガーダル・ラーオと結婚し、藩王から「ラクシュミー」の名前を授かる。一子をもうけるが夭折し、藩王逝去の間際に養子をとるがインドの支配者イギリスはその養子を認めず藩国を併合、ラクシュミーは城を追放される。そしてインド大反乱が勃発。イギリスの罠にはめられ追いつめられるラクシュミーとイギリスの非道な支配に疲弊する民衆の運命は…。

 見どころは、主人公ラクシュミー・バーイーを演じたカンガナー・ラーナーウトの迫力。強い、賢い、勇敢な最強の女傑を見事に演じ切っている。物語もわかりやすく、歴史もので心配な「(その国の歴史を学んでいないと)他国の人間にはわかりにくい」という面もあまりない。最近は日本のゲームにも登場するほどの有名な英雄だそうで、ゲームファンの方もご興味があればぜひ。

 DVDなどの発売が2020年4月8日なので、配信などもその後にあるかと期待。以下、Amazonの予約ページ。


★KESARI/ケサリ 21人の勇者たち

 場所的には現在のパキスタンとアフガニスタンの国境沿い(作品が描く1890年代はイギリス領インド)にあるサラガリ砦での実際にあったシク教徒兵士部隊が21名で1万人と戦った武勇伝。パッドマン主演のアクシャイ・クマ―ルが主人公を演じた。ヒンディー語映画。

 インド国境サラガリ砦をイシャル・シン軍曹以下20人のシク教徒と調理人からなる部隊が守っていた。アフガニスタンとの国境にあるその砦は、アフガニスタンとの攻防の最前線。そこへ配置された新任下士官イシャル・シンと先にいた兵士たちとの対立を経て繋がれる絆と勇猛果敢な21対1万の戦いの壮絶さを描く。

 見どころは、最後の戦いが必見と言ってもよいほど迫力があり、かつ、涙なしには見られない素晴らしいものになっている。

 キーワードの一つに「シク教徒」があるが、そのあたりは説明が上手く織り込まれているので、特に知らなくてもいい作りになっている。それでも、公式サイトの「豆知識」を読んでから見るとより理解が深まり、作品に入り込みやすくなるかと。

 史実系の戦争映画としておススメの1本。 


★ダンガル きっと、つよくなる

 インド女子アマチュアレスリング選手フォガト一姉妹の実話を元に脚色を加えて描くスポーツ映画。姉妹の父親を演じるアーミル・カーンの体重増減(70kg→97kg→70kg)が話題になった。ヒンディー語映画。

 アマチュアレスリングのインド国内チャンピオンにまでなったマハヴィルは生活の為にレスリングを引退、自分の子供に夢を託そうと思うが産まれたのはギータとバビータの女の子ふたり。意気消沈するマハヴィルだが、喧嘩が強い姉妹を女子レスラーにしようと思い立つ。古い因習が生きている田舎町で、女の子にレスリングをやらせようと言う行動は理解されず、娘たちはマハヴィルの厳しい練習が嫌で嫌でたまらない。はたしてギータとバビータはインド女子レスリング界でトップ選手となれるのか?

 見どころは、最後の手に汗握るギータの試合。本当に映画館で前のめり気味に見て声を出して応援したくなるほど迫真のシーンだった。

 アーミル・カーン(姉妹の父役)が主役の様ではあるが、真の主役はギータとバビータではないだろうか。4人のギータとバビータを演じた俳優が素晴らしかった。ちなみに、ギータの幼少期を演じたザイラー・ワシームはこの作品の後に製作されたアーミル・カーン製作・出演の「シークレット・スーパースター」の主役に抜擢されている。

 Google play、YouTube、Netflix、Amazonプライムビデオなどで配信中(2020年3月28日現在)


★SANJU サンジュ

 ヒンディー語映画のスター俳優サンジャイ・ダットの半生を描いた伝記映画。本人や周囲は思いっきり存命の為、数人の友人をひとりの友人に集約したりと色々脚色はなされている。ヒンディー語映画。

 名俳優で名監督の父、大女優の母との間に生まれたサンジャイ・ダット、愛称サンジュは金持ちのボンボンにありがちなドラ息子。それでも父の監督作品でデビューし順調にスター俳優として成功していったが、薬物に溺れていた。やがて立ち直ったものの、ある時テロリストの容疑をかけられてしまう。息子を思い時として厳しく当たる父の愛、彼を思う友人の友情などに支えられるサンジュの破天荒な人生の感動物語。

 見どころは、名優たち。主演ランビール・カプールの作り込んだ役作りの凄さ、薬の売人ズビンのジム・サルブはどうしようもないクズを見事に演じて見せるし、得難い友人カムレーシュのヴィッキー・コーシャルも素晴らしい。

 そして、私見で言わせてもらえれば、これは愛の物語である。母の愛、父の愛、友達の愛、妻の愛…なるほど愛に支えられたからこそ、今があるかと。(現在も俳優として活躍している)

 胸に来る良作。

 ちなみに、このジャケットの人物は全部ランビール・カプール。


★パッドマン 5億人の女性を救った男

 現在の日本に住む女性からは恐らく予想することのできないインド女性の劣悪な生理事情。それを大きく変えるのが生理用ナプキン(インドではパッドと呼ぶ)である。これが普及していないがために被る弊害も多い。そんな状況を救おうと奮闘したアルナーチャラム・ムルガナンダム氏の史実をベースにした映画。ヒンディー語映画。

 小さな村で結婚して愛しい妻と生活を始めたラクシュミ。妻の生理の時に女性の過酷な生理事情を知る。穢れを家に持ち込んではいけないと、家の室内に入ることが出来ず廊下の一部に作られた部屋で寝起きし、不衛生な布で処理しているのだ。そんな辛い状況から妻を救おうと生理用パッドを買うが、それは非常に高く妻に拒否されてしまう。それならば安く製造できる方法を考えようと思い立ち、行動に移すが、生理に対する穢れ意識の強いインドで、しかも男性が生理用品を作るということ自体が理解されず、様々な困難に行き当たる。彼は最愛の妻をインドの女性を救うことは出来るのか。

 見どころは、時代設定が2001年なのだが現代におけるインドの(田舎の方ではあるが)衛生上劣悪な生理事情を知った男性が、それを助けようと苦闘したことが感動的なところ。まず、ほとんどの男性諸氏は女性の生理に対して興味などもたないし気にもかけない。

 生理用品の話と言う事で女性向けなのかと思われそうだが、この作品は男性にこそ見てもらいたい。

 主役はケサリの主人公を演じたアクシャイ・クマ―ル。妻ガヤトリ役のラーディカー・アープテーの透明感のある美しく、少し儚げなたたずまいが印象的で、彼女とは真逆な主人公の協力者パリ―役ソーナム・カプールとの対比が面白くもある。

 Netflixなどで配信中(2020年3月28日現在)



 以上5作品ご紹介させていただきました。

 どれもこれも、本当にお勧めです。配信のあるものが少ないので、なかなか手が出ないと思いますが、DVDの価格が下がったりレンタルDVDで見かけるなど何かの機会に見ていただけたらな、と思います。

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