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ミッション・マンガル 崖っぷちチームの火星打ち上げ計画

 既に上映終了の映画館も出てきているので、ご紹介には遅きに失した感があるのですが、これから上映する映画館もあるようなのでレヴューを書くことにしました。なにより、他の方にもこの映画を知ってほしいから、と言うのもあります。上映館等は以下の公式サイトを参考にしていただければ。

 一言で言えば、最高です。作品としての出来が非常に良い。ストーリー、キャラクター、俳優、音楽、映像、すべてがバランスよく素晴らしい。

 また、宇宙開発が題材と言う事で「理解が難しいのでは?」と言う危惧があるかもしれませんが、そのような心配も無用です。映像で非常にわかりやすく説明されており、科学技術知識や用語など知らなくても楽しめます。日本語に訳されてる強みとして、職業・肩書が用語を良く知らなくても漢字の字面で何となく想像できることでしょうか(英語字幕で見たときは辞書を引かないと分からない用語が、漢字なら用語自体を知らなくても想像がついた)。

 なにより、「主人公」と言う存在が無い。え?アクシャイ・クマ―ル(プロジェクト責任者/ラケーシュ・ダワン)じゃないの?と思われるでしょうし、ヴィディヤ・バラン(プロジェクトリーダー/タラ)では?と思う方もいると思います。もちろん、そのふたりが最もたる主要な役です。しかし、やはりこの作品の主人公(?)は「チーム」だと思うのです。そう思わせるだけの個性的なチームメンバーが揃っていて、それぞれがそれぞれの悩みや問題を抱えている。そんな生身の人間が「チーム」を作り、その「チーム」が知恵を出し合って火星を目指す。ロマンだなぁと私は思います。どことなく冷たそうに思われる科学技術が、実は人間臭いドラマの中から生み出されている。

 チームのほとんどが女性と言う事もあって、女性の問題がクローズアップされています。家事と仕事のバランス、出産育児によるキャリアの継続問題など。それもさりげなく取り上げられている。押しつけがましくなく、自然に。

 史実を基にしている、と言うことなので史実そのものではないのでしょうけれども、インドの女性科学者の多さに驚きます。日本では理系に進む女性の割合が少ないですし、それこそ理系文系に関わらず結婚出産でキャリアを諦める人も少なくないので、研究と言った継続して関わっていかなければならない仕事は厳しい面があります。ただ、日本以上にインドは家事を女性に求めている風土のはず。その解決方法のひとつが「メイドを雇う」ことにあるのだなぁ、と感じる場面があったりします。男がやらないんなら、そうなってしまう。でも、そんな男にチクリと刺す表現もあって、いいぞ~となりました。

 そして何よりこの作品の面白さは、低コストで火星に探査機を送り込むための節約術。そこからアイデアが出てくるのか!と言う意外性が面白いです。


 この映画の中には夢があります。

 果てしない宇宙への夢を追う人間の人間臭い足掻きや喜びや苦悩があります。

 すべての、過去・現在・未来の宇宙少年、少女たちへ。

 かつて、何かを夢見た大人たちへ。

 これから夢を叶える子供たちへ。

 ぜひ見てほしいと思います。

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