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不妊治療vol.4-夫の存在について

不妊治療を5月末から再開している。本日、5度目の凍結融解胚移植を行ってきた。


さて、今回のテーマは、とてもデリケートで難しく、頭の中でまだ答えが見いだせないでいる。が、どんどん進めていく。

晩婚化が進んでいるので、自ずと自然妊娠では授からなず、不妊治療に向き合わざるを得ない夫婦が増えている。私の身近にもとても親しい間柄で2組不妊治療カップルの先輩がいた。

「いた」というのがミソだ。

今は、不妊治療をしていない。

一組は、不妊治療の入り口時点で頓挫した。夫が精液検査を拒絶したそうだ。

もう一組は、夫が「壮絶な」不妊治療に嫌気を感じて継続を拒否、それがきっかけとなり離婚したと聞いている。

やっぱり不妊治療って地獄の入り口なのかもしれない。


私は、この2組の話を聞いたとき、「なんで???」ってなった。

なぜなら、どちらも妻ではなく夫が挫折したからだ。不妊治療において心身ともに負担がかかるのは圧倒的に女性の方であり、男性の挫折ポイントがどこにあるのかわからなかった。

密かに夫も苦しんでいるのかもしれないと思い立ち、率直な意見を求めたところ、「全然やけど?」というあっさりした返答が来た。


不妊治療での男性の関与

以前にも示した通り、顕微授精による不妊治療において、男性が関与するのは精液採取の部分だ。他の体外受精、人工授精もだいたい同じ関与レベルだと思う。

アセット 100

妻が採卵をする当日の朝に、精液をプラスチック容器に採取する。採取の場所は自宅か、病院内にある専用の個室だ。

どこに夫の挫折があり得るのか正直なところピンとこなかったが、実際に2組の夫が不妊治療のリングを降りたことは事実だ。

夫が不妊治療を挫折するポイントを仮説を交えて検証してみた。

仮説1:男のアイデンティティー崩壊の恐れ

これは、一組目のカップルが陥ったケースだ。確かに私がもし「子宮に卵子がないです」って言われたら落ち込むだろうなぁ。例えばこんな理由から。

理由1:小6から毎月の生理に悩まされ続けた日々は一体何だったのかと虚無感に苛まれるから。

理由2:自分の子孫がこの世に残せないことへの悲しみ。

理由3:孤独死したくないから。

理由4:可能性が0%になることの絶望感。

正直2つ目は世間的な回答を狙って記載した。私自身は、夫はともかくも、自分のDNAが残せないことについて、何ら悲しみはない。私にラヴェルくらいの才能があったらひょっとして悲しんだのかもしれない。


理由3は、我が愛する友人A(妊娠機能は問題なし)が実際発した言葉だ。当時未婚だった感受性豊かな友人は、NHKの「無縁社会」という番組を観て半狂乱し、この言葉を泣きながら発した。NHK、いい迷惑だ。その後、猛烈な勢いで婚活に勤しみ、今では2児の母だ。


理由4が意外とジワるのではないかなと思う。子どもはさしてほしくなくてもいつかほしいと願った時に実子を持つ可能性が0であることの絶望感。「選択できる権利」というのは意外と幸福度に直結する。


ただ、特に40代オーバーの男性がたまに口にする「男のプライド」なるものは感覚がよくわからないのだが、男性にとってみれば理由5があるのかもしれない。

女性側は、そんな理由5があり得ることを肝に命じておかなければなって思う。

私の夫も、精液検査で自然妊娠が望めるほどの精子の数が極端に少ないことが判明した際は落ち込んでいたし、今でも実は気にしていることを知っている。


そんな世の夫たちにぜひ伝えたい。

もうこの世は武士の時代ではないということを。

世継ぎができるかどうかで、その人の価値が判断される時代は終わったのだ。

たとえ子どもが望めないとしても、夫の魅力はひとかけらも欠けることはない。こんなことをたまに言葉にするようにしている。


仮説2:金銭面による挫折

これは大いにあり得る。私たちもこれまでいくら払ったんだろうか。

採卵2回と4回の凍結胚融解移植で100万円は軽く払っている。これまで保険適用ではなく自費診療だったため余計にきつかった。

不妊治療を受ける前に、不妊治療に投入する金額の上限を決めておくことをおすすめする。


仮説3:妻の精神崩壊による夫のサンドバック化

これも大いにあり得るんじゃないかなぁと思う。現に病院の待合室にも不妊カウンセリングとか相談窓口の案内が貼り出されている。

マクドのバリューセットのように、結婚子どもを持つことがセットメニューになっている人が多いように思う。

実際に子どもがほしいのであれば良いのだが、「みんな子どもを持っているのになんで私だけ子どもができないのか。」という理由で子どもができないことに悩んでいる女性が多いように思える。

それは、日本の教育システム「金太郎飴大作戦」の功罪だと個人的には感じている。みんなと同じでないことに恐怖を感じる方は、金太郎の呪縛にかかっているのかもしれない。これは別の機会に話をしたいと思う。長なるので。


話を戻す。

自分が仕事の調整や採卵前の緊張とで機嫌が悪い時、横にいるはずの夫が飲み会で遅く帰ってこようものなら、サンドバックが帰ってきたのか夫なのか見分けがつかなくなるのも当然だろう。

ただ、妊娠・出産する可能性が0%である男性にとって、そのイベントを真に自分事として受け止めることは不可能であることは冷静に受け止めるべき事実なのだろうとも思う。

早く男性も妊娠・出産できる日が来れば良いのに。生理で悶え苦しんでみてほしい。生理一日目で席を立つ時に、「うぅっ」てなってほしい。陣痛で絶叫してみてほしい。とは思いつつも。

幸いなことに私は今のところ夫とサンドバックの見分けはついているので、口撃も攻撃もしたことがない。そんな私が言える立場にはないのだが、どうにもこうにも困った時、意外と助けになるのは親しい家族よりも他人だ。

家族はあなたが悲しいと悲しいのだ。

けど、他人だと違う。あなたが悲しくても割り切ってくれる。だから共倒れすることがない。

夫は不妊治療のパートナーだ。夫にそっぽ向かれては妊娠プロジェクトの遂行に差し障る。夫にそこそこ機嫌良くいてもらうことが妻としての重要ミッションの一つなのだ。

なので、心のもやもやが抑えられないときは大いに他人に頼ったらどうだろう。そんな時にお金って使うのだと思う。

私も今後、妊娠・出産・育児と自分の感情が良くも悪くもかき乱されるイベントが待ち構えている。

そんなときはカウンセリングに頼りまくろうと考えている。





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