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不妊治療vol.3-フルタイムとの両立の難しさ

「不妊治療」の前後に必ずや現れる形容詞に「壮絶な」や「過酷な」がある。不妊治療を2年半行っていて、未だにそれらの単語がピンときていないのが正直なところだ。

一体、どういう場面で「壮絶さ」や「過酷さ」を感じておられるのだろう。妊娠判明後の流産や死産のことを指しているんだろうか。それならば確かにわかる気がする。いや、想像を絶する。

私はまだ妊娠すら至っていないので、妊娠前までの不妊治療の段階で、「壮絶さ」や「過酷さ」を感じることは皆無だ。しいというならば、フルタイムとの両立の難しさが私にとっては大変だった。

仕事との調整が大変

なぜならば、静脈麻酔を伴う採卵や、受精卵を子宮に戻す胚移植は身体に負担がかかるため半日〜1日程度時間を要するのだが、その日程が決まるのがほんの3日前とかなのだ。仕事の調整をするのがめちゃ難しかった。

それ以外にも、採卵するまでに毎日の注射通いなどがあるので、この間は泊まりの出張や遅い時間までの業務ができない。そのせいで職場に迷惑をかけてしまった。ごめんね社長。

顕微授精の工程(参考)

具体的に仕事との両立を考える前に、顕微授精のステップや、両立を阻む二大巨頭「採卵」と「凍結融解胚移植」の工程についてまとめてみた。これらはあくまで私の場合なので、一般論とはずれる。さらに、私の記録が不正確であるし、知識も浅はかなので、正解ではない。そのため、以下の画像は全て転載厳禁とさせていただく。

アセット 96

上記の工程の赤枠部分が、仕事との両立を阻む二大巨頭である。

採卵までの道のり

では、採卵までにどのような工程があるのか、それらにどのくらいの所要時間がかかるのかをまとめてみた。これも私のケースなので、どうか鵜呑みにせず参考程度でとどめておいていただきたい。

アセット 99

こんな感じで、採卵までのロードは、生理が始まって3日目からスタートし、その後約12日間毎日病院へ行く。それはもうお盆だろうが正月だろうが関係ない。病院も注射のために開けてくれるのだ。ありがたや。

内診のある診察日は、病院に入って出てくるまで毎回1.5h〜2hくらいかかる。もう開き直るしかない。イラついて貧乏ゆすりしながら待つよりも、ステキに楽しく待ち時間ライフを過ごす方がハッピーだ。私はPCで仕事をしたり、普段できない読書に費やしていた。

内診のない日は、注射だけしに行くので、その分待ち時間は短縮される。ちなみに、注射は、肩への筋肉注射なので、ウッてくる痛みがあるが、それも2秒位なので、3分後には痛みは忘れる。

で、卵子をくるむ卵胞がいい感じに育ってきて、収穫時期が近いと判断されれば、最後の熟成を促すトリガー注射を打って、いざ、採卵を行う。

採卵は、麻酔なしで行うケースもあるらしいが、私の通う病院では静脈麻酔を行う。麻酔中は、意識がないのでどんな感じだか全くわからないが、15分くらいで採卵作業は終わる。

ただ、その後麻酔が切れるまで40分程度ベッドで横になり、その後開放される。開放された後もその日は運転などは厳禁だし、激しい運動などは控える。午後から仕事ができなくもないのだが、歳のせいかへとへとになるので私は仕事を休ませてもらっていた。

ちなみに、この日は、夫の精液採取がある。私の病院の場合は朝、自宅で採取したものを病院に持参する仕組みだった。

その後、採卵した卵子と、採取した精子から受精卵をいくつか作成してもらい、いい感じに細胞分裂した受精卵(胚盤胞)をさらにセレクトしてもらい、それらを凍結してもらう。

最短で、次の次の生理が来たタイミングからその受精卵を子宮に戻す儀式が執り行えるようになる。

参考までに、採卵から凍結融解胚移植に至るまでに何個採卵数が減少していくのか私のケースをご紹介する。私の場合、多嚢胞性卵巣症候群なので、卵子の収穫高は良いのだが、精子部隊が少数精鋭をモットーとしているため、受精卵が激減するようだ。個数の推移はケース・バイ・ケースである。

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凍結融解胚移植までの道のり

続いて、凍結融解胚移植の工程をご紹介する。

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採卵を乗り越えたら凍結融解胚移植はそこまでしんどくない。一番しんどいのは、移植後に妊娠判定を行う時だろうか。「今回は妊娠しなかった」という医師の声を聞く瞬間が一番堪える。妊娠前の不妊治療で一番の落ち込みポイントかもしれない。特に、凍結している胚盤胞を使い切ってしまって、次また採卵からということが決まった時は、あぁまたこの長いロードか。とつい愚痴りたくなる・・・そう。落ち込むって言ってもこの程度だ。

つまり、めんどくせぇ。。っていうタイプの落ち込みなのだ。流産したとか死産した場合の落ち込みとは次元が違う。美味いものでも食べて、お風呂に浸かってゆっくり寝たら治るレベルの落ち込みだ。

仕事との両立の難しさ(まとめ)

さて、本題である仕事との両立の難しさについてまとめていこうと思う。

上記に示したように、病院通いが続き、卵子様の成長具合で唐突に手術日が決まるので、職場に頭を下げ、社長には迷惑をかけまくった。

私の場合は超零細企業だったことと、そこそこ融通の効くポジションにいたことから理解してもらう必要のある関係者が少なく、正社員を辞めずに両立できた。いや、途中で時給制に変更してもらったんだった。そうそう思い出した。

ただ、不妊治療中であることは秘密にしておいた。言ったところで理解が得られにくいのではないかと思ったからだ。

不妊治療当事者からしてみれば、この治療は仕事を休んでもなおやるべき重要なイベントなのだ。けれど、会社からしてみれば、不妊治療は病気じゃないやんか。という認識があるだろうなと考えた。不妊治療をしなくても、死ぬわけでも、どこか心身に不自由を強いられるわけでもない。子どもがもてないだけだ。なら、仕事を突然休まれても困るし、出張に行けないと言われても困る。こんな風に考える人がいても不思議ではないなと思った。

なので、そこは思いっきり嘘をついた。死にはしないが結構重篤な病気であると伝え、起こりうる事象(数ヶ月に一度出張の行けない週が発生する。その週が発生すると手術のため1日休ませてもらう日が来る等)を伝えた。

不妊治療をしていることを公にし、しっかりその意義を説明するという正攻法でいく手も考えたが、そうなると、日程調整のために、「妊娠した」とか「しなかった」とかまで報告しないといけなくなる気もしたし、総合的に考えると嘘をついた方が自分にとっても都合が良いし、周りも理解に苦しまなくて済むなと判断したのだ。

そこは会社の体制や組織の大きさ、置かれているポジション等によって、大きく変わるところだろうと思う。

ただ、大切にしてほしいなと思うのは、会社の言いなりになる必要などないということだ。そもそも、会社の価値観 = 個人の価値観 であるはずがない。そんなん怖い。したがって、会社からすると価値の低いものであっても、個人にしてみれば価値の高いことなどざらにあるのだ。

自分の人生にとって、妊娠するということが価値あるものならば、その価値をどうか大切にしてほしい。

社長や部下に迷惑をかけたことについて、ごめんねとは思っているし、何度もそのことで頭を下げたが、それで自分の大事な妊娠活動を進められるのならば、そんなもの朝飯前だ。いくらでも謝ってやる。そんな気概で臨んでいた。会社からすると厄介なやつだろうが、そんなことはどうでも良い。私個人の人生にとっては。

結果的に、現在はこの会社を退職している。主に不妊治療とは異なる理由からだが、一つ理由としてあったのは、どえらいストレスとそれからくる疲労を抱えていたので、正直、妊娠はそりゃせんわなぁと考えていたからだ。

今は、諸事情により不妊治療を休憩しているが、今月から再開する予定だ。




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