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忘れられない味
4回目のワクチンの副反応から抜け出して、清々しい朝を迎えた。
カメラと、ギターと、コーヒー道具一式を携えて家を出る。
朝のオガール。
パンを買って、ベンチでコーヒーを淹れよう。
いつもの「レーズン」と、今日は「パンオショコラ」。
フランスで過ごした中学時代、たしか2時間目と3時間目の間くらいに学校のエントランスへ売りに来るパン屋さんがあって。
ばんじゅうみたいな大きなトレーに、焼きたてのパンオショコラがぎっしり入っている。
その温かな湯気と、バターとチョコレートの香りが素晴らしく空腹を誘うから、パン屋さんが現れると一瞬で人だかりになって飛ぶように売れた。
実際、すぐに焼きたてで食べても、大事に家まで持ち帰って冷めてから食べても、ダントツに美味しかったから、私と弟もパン屋さんが来る日を楽しみにしていた。
まわりの学生たちに負けじと人混みをかきわけ、握りしめた1ユーロ50セントを突き上げて
s'il-vous plaît!!
と叫ぶ。
競争に負けて買えない日も度々あった。
そうやって手に入れるパンオショコラ。
あれは掛け値なしに人生最高のパンだったなと思う。
まさに忘れられない味だ。
さて、今日はすっかり秋晴れ。
岩手の短い秋をつかまえに行くとしよう。
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